March 22 AM09;21
それは幻想ではなく現実だ、憎悪では無く間違いなく現実だった。
第二章《空ノ魔女ト審判者》
其処には魔女が居た。
魔女、と言えば悪い印象が出るかもしれないがそれは偏見だった。
彼女、魔女は人々の願いを叶えていた。
病気のものが居れば薬を与えてやり。
金の無き貧しき者には金をやり仕事も与えた。
まるで聖職のようだった。
が、その魔女は姿を消した。
一瞬にして行方を晦ました魔女に人々は悲しみを隠す事が出来なかった。
ある者は泣いた。
ある者は怒った。
ある者は死んだ。
ある者は消えた。
ある者は探した。
誰を――?
野暮な事を聞くものではない。
決まってるじゃないか。
彼女を探すために、さ。
◆◇◆◇
「お前……こんな時間から昼飯買いに行く理由は此処の為だったのか……早く気づくべきだった」
刹那が呆れた様に呟きこめかみを押さえる。
此処は廃ビルの二階だった、勿論人が住める場所じゃない。
別にそこまで大袈裟なリアクションをされる様な事をした覚えは無いが、まぁ一応罪悪感を心の奥にしまっておこう。
「だって情報を求めるには苦楽に頼るのが一番だろ? その方がよほど効率的だしね」
俺はそう吐き捨てるとチャイムを鳴らす。
ピンポーン、そう何処か間抜けな音が聞こえる。
返事は無い。
もう一度チャイムを鳴らす。
返事は無い。
刹那が愉快そうに顔を歪ませる。
「諦めろ、苦楽は居ない様だ……それよりオムライスを買いに行こうっ!!」
刹那が顔を輝かせて叫ぶのを無視したい所だが刹那の言うとおり出直したほうがいいかもしれない、後回しにしてもいいかもな。
と、俺が諦めて扉から遠ざかろうとした時。
ガチャ、と金属質の扉が開いた。
「朝っぱらから誰だ……何だ、お前達か」
そこには例えるなら完全に魔女の様な女性が居た。
黒い上質の喪服のような物を着た女性は此方をジロリと一瞥するとそんな言葉を吐き出した、オレンジ色の髪が揺れる。
この年増……いやいや女性の名は苦楽。
今回物凄くお世話になるだろう人で、悪魔だ。
「まぁ……面倒だが入れ、珈琲位は淹れてやる」
その言葉に甘えて入る事にした、背後で刹那の憎悪を込めた舌打ちが聞こえた気がしたが今は無視。
玄関で革靴を脱いで部屋に上がる、部屋? いや、そこは魔窟だった。
まず踏める床が無い、服の他にも何だろう、ウィジャ盤って言うんだろうか、そんな古代神器見たいなのがゴロゴロ置いてある。
壁際には分厚い本が散乱していて本人のだらしなさが伺える。
何と言うかその心の中で俺の理性が「KEEP OUT!!」とか何とか連呼してる、大丈夫だもう一人の俺、俺も同じ気持ちだから。
苦楽は部屋の中央にある火燵に入ると「お前らも座れ」と促してくる、素直に頷くしかない火燵に入る、電気はついてない。
(いや、それ以前に何で火燵しまってないんだ)
と刹那にアイコンタクトを飛ばす、返答は(知るか)だった、俺も同意権で返したい。
「それでー……今回は何の用事だ? 報酬さえあればなんでも調べてあげないことも無い」
「どっちだよ」
と俺はぼやき財布の中身を確認する。
「あー……金は冗談だよ、この前の件もあるから無料で良い、その代わり貸し借りはチャラだ」
ニヤリと妖艶に微笑み苦楽が言った。
俺達は去年の冬、彼女を助ける為に誘拐犯と激突した、死闘の末に苦楽を取り戻した俺はその事をすっかり忘れていた。
「で、何が欲しい?」
もう一度妖艶に微笑んだ苦楽を見て俺は頭痛を抑える事が出来なかった。
何と言うかこの人は苦手だ。
最近執筆が好調だったりするw
ぁー…課題が終わってない(爆死
皆は俺みたいになるなよっミ☆(ぁ