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女子サッカー部員達の決意

宮部は教育論を語ります


4話です

 生徒会を終えた後、宮本雫とチャットをする。


『今日はお疲れさま~』

『お疲れ~』

『どう部活の調子は?』

『うん、今日も疲れたよー』

『なるほど、お疲れ様だ』

『ほんとそれw』


 僕達は他愛もない話をする。


『どうだった生徒会室のあたしの小芝居は?』

『流石だったよ』

『でしょー。そういうの得意なの』


 そうだよ。僕はそういうのに騙されたんだから。

 僕はあの時のことを思い出し、スマホを少し強く握りしめる。


『女子サッカー部の連携とかはどうなの?』

『うーん、悪くはないよ』

『やっぱりスポーツとはいえ人と人との連携だから相手の良し悪しとかある?』

『うーん、それはやっぱりあるね』


 なるほど、やはりそうなのか。


『どういう相手が苦手なの?』

『それはしゃしゃり出てくる相手ね。例えば補助じゃなくゴールポストに入れたがるタイプとか。チャンスなら良いけど、そうじゃない時が多いから、ほんとムカつく』


 なるほど、なんか宮本らしい気がする。


『それで……』


 僕の周りの生徒会長としての評判を訊くと、そこそこ高評価だった。


『やっぱりおしゃれの自由は大きかったわね~』


 確かに学校におしゃれしてくる生徒が徐々に増えている。髪を軽く染める者、ピアスをする者、スカートを詰める者。

 しかしそれでも進学校である確固たる実績を残さないといけない。そう進学率だ。自由にして進学実績を堕とせば元も子もない。

 そこは僕が生徒会を発足して、最大の仕事だ。確かに宮本雫に復讐をする為に生徒会長にはなったが、そもそも会長として結果を残さないと生徒や教師に信用されない。

 教えるのは教師の仕事だが、生徒の味方になり、助けるのは僕の仕事だ。

 そこでとりあえず赤点生徒を減らすための特別教室や生徒の意見を訊く為の目安箱を作ったりした。


「会長」


 声をかけたのは副会長の青山だ。相変わらず黒い綺麗な髪をなびかせながら、僕に資料を持ってくる。


「何だ?」

「この前の全校生徒の中間テストの成績優秀者と集計結果です」

「そうか」


 その資料を見ると成績優秀者は悪くないが、平均点はあまり芳しくなかった。


「成績点の分布をとるとどうなる?」

「こうなります」


 校内の偏差値60辺りで山になり、総合の平均点付近が少し谷になり、そして偏差値40辺りでまた山になる、典型的な成績格差が生じていた。


「あー、勉強出来るグループと勉強出来ないグループに別れているのか」

「はい、そのようです」

「科目別ならどうなる?」

「学年ごとに変わりますが」

「とりあえず進学結果になる3年生とこれからの2年生だ」

「はい。……こうなりますね」

「うーん、文系は数学で理系は国語が少し悪いな」

「はい、そうなります」

「国語と数学は勉強の基礎だし、配点が高い科目だから少々まずいな」

「そうですね」

「校内での国語と数学の強化を図るか」

「どうします?」

「とりあえず教師にその由を伝え、国数の教員に教育の改善の進言をする」

「なるほど」

「しかしうちの学校は公立で民間企業じゃないから、教員の給料は増減できないから、そこがネックだんだよな~っ」

「まぁ、確かにそうですね……」

「仕方ない。……まずはこうするか」

「一体何を?」

「そりゃあ、“木は本から”作戦だ」

「え?」

「明日マイクとスピーカーの機器を用意をしてくれ」

「……あ、はい。分かりましたっ」


 そして翌日の早朝。僕と青山は校内にいち早く学校に行き、ぞろぞろと生徒が登校してから僕はマイクを持って演説を行った。


「皆さんおはようございます。おしゃれ解禁をして早一週間が過ぎましたが、その自由を校内で続けるために、生徒の皆さんが努力してほしいことを話したいと思います」


 何人かの生徒が登校しながらこっちを見てくる。


「実はこの前の我が校の中間テストの集計結果が出たのですが、成績は二つに分かれ、平均点はあまりよくありません。校内自由を解禁してからまだ日は浅いので、成績の影響には出ていないのですが、それから期末テスト、実力テストと続き、成績結果がどんどん出て行きます。そして成績が悪くなれば、自由禁止になる恐れが出てくるのです」


 少しずつであるが、聞く生徒達が増えてきた。


「自由にすることにより子供を心配して、抗議を行うのは保護者です。流石の生徒会も保護者には敵いません。そしてやはり保護者が心配なさるのは進学実績です。おしゃれ解禁したお陰で成績が下がってしまえば、保護者はおろか、教員の格好の餌食になり、おしゃれ自由禁止もあり得るでしょう」


 僕の演説を聞く為か、登校中なのに止まる生徒も出てき始める。


「校内の自由を維持するためには、まず校内テストの成績を上げることが肝要です。結果を残さずして自由は維持出来ません。うちは進学校なのですから、成績、進学実績を上げることが必要不可欠なのです」


 僕は心を込めて力一杯呼びかけた。


「京大もそうではありませんか。自由と進学悪化は関係ありません。是非自由を守りましょう」


 僕は聞いてくれている生徒達の顔を見ながら訴える。


「そうなればこれからの後輩のためにもなります。県下で評判になることにより、進学実績を上げ、校内の自由を確立するのです」


 そして締めくくりの言葉を言う。 


「皆さんの新たな自由を作る、守る為にはどうかまず校内テストからの成績を伸ばしましょう!」


 とりあえずの一回目の演説を終えた時、聞いてくれた幾人かの生徒達は拍手をしてくれた。

 朝の予鈴が鳴るまで繰り返し演説を行った。

 頑張った割にはこんなものか……と思って振り返ったら、学校のほとんどのクラスの窓が開いていた。


『なかなか周りの返事が良くないの』


 演説をしてから数日後にチャットでいつものように他愛ない話から一転して、そう切り出して来たのは宮本雫からだった。


『どういうこと?』

『やっぱり備品購入の為に優勝はリスクが高いって』


 あぁ、まぁそれはそうだよな。サッカーはメンバーで行うスポーツだ。周りの意見は大事だ。宮本雫での進言だけでは無理だったか。さてどうするか。


『例の約束は守ってくれるよね?』

『それは勿論だ』

『けど一体どうしたら……』

『それならこうすれば良い』


 それから数日が経った。各々のサッカー部のキャプテンが生徒会室に来た。


「結果をお聞かせ願いたい」


 ぽりぽりと頭を掻きながら、男子サッカー部のキャプテン小谷は渋りながら言う。


「男子サッカー部の備品の前借り購入は控えます」

「そうですか、では女子はどうしますか?」

「うーん、うちも控えようと思ったのですが、部員達の熱意におされ、備品拡充をお願いすることにしました」

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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