試験結果発表
魔力診断の次は魔法の攻撃能力テストだ。
魔力の低かった者から呼ばれ、ミスリル製と思われる人形に攻撃魔法を放ち時間内に破壊を試みると言う試験だ。
要するに自分の持つ最高の魔法を放てと言う事だ。
殆どの受験者は傷を付けることも出来きない。
数名、中級の魔法を使う者は傷を付ける事に成功した。
ルミナスは光魔法の中級攻撃魔法の六聖槍を二重詠唱し12本の光の槍がミスリル人形を穿つ。
「「おぉー」」
歓声が上がる。
ミスリルに小さいながらも12の穴を開けたのだ。
問題の殿下は水属性と火属性の派生、雷属性魔法を詠唱する。
主となる属性は火、風、土、水と光と闇の6属性である。
主の2属性から派生した属性も数は少ないが操れる者がいる。
例えば、火と風で炎、土と水で木等がある。
殿下は雷属性の中級魔法、雷電霣を放つ。
ミスリル人形は溶けてルミナスと同等の穴が空いた。
「「凄い」」
全員が息を呑んだ。
最後は俺だ。
「教官、ミスリル人形を錬金術で溶かすのはありだろうか?」
「なしだ。攻撃魔法だけだ」
さて、俺は基本的に全ての魔法を使える。
だが、剣術に錬金術ばかりで特に攻撃魔法は盗賊を倒した時以来使ってない。
使えるが使ってこなかったので覚えている魔法は全て初級だ。
仕方ない。
無詠唱でデュラントの周りに幾重もの魔法陣が紡がれていく。
「あいつ無詠唱かよ」、「どれだけの魔法を放つのよ」等と言う声は届かなかった。
30くらいの火球を用意した。
これでもミスリルが多少溶けるくらいだろう。
「それじゃいきますか。火球ー!ってあっヤバっまた魔力込めすぎたー」
魔法陣から特大の火球が飛び出して一つに纏まった。
それは超特大の火球になりミスリル人形を飲み込んだ。
火球の勢いは全く衰えずミスリル人形を焼き続けた。
ようやく火の手が収まると、ミスリル人形とおもわれるドロドロに溶けたミスリルが広がっていた。
「はぁー爆発しなくてよかったわ」
後ろを振り返ると、全員が口を開けたままで此方を見ていた。
感じの悪い教官も至近距離で行われた魔法に震えていた。
「き、君、今のは火属性の最上級魔法の大爆発かい?」
いえ違いますよ。
魔力を込め過ぎた火球30発です。
とは言えず。
「そんな感じです」と言うのが精一杯だった。
攻撃魔法もう少し頑張ろ。
次は最後の試験、剣術試験だ。
各種素材の板を素早く斬って枚数と時間を競う。
素材は羊皮紙、木の板、数種類の魔物の皮、銅板、鉄板、ミスリルの板。
半分は魔物の皮で苦戦する。
もう半分は銅板どまり。
ルミナスは銅板で終わってしまった。
鉄板を斬ったのは傾国姫と3人だけだった。
ミスリル板は流石に傷を付ける事も出来なかった。
そしてその4人は聖剣や魔剣の類で魔力を込めてていた。
魔力伝導率は+10〜+150といったところだ。
そして最後はデュラントだ。
聖剣エスポワールを抜くと光が溢れ出す。
「鑑定出来ない」そんな声が聞こえて振り返ると傾国姫だった。
鑑定の事をすっかり忘れていた。
もし鑑定出来てしまっていたら聖剣エスポワールが勇者の聖剣を凌駕する魔力伝導率だとバレてしまうところだった。
そんな事を考えていたら「始め」と聞こえて慌てて試験に臨んだ。
魔力込めずに次々に斬っていく。
鉄板は悩んだがそのまま魔力を込めずに斬ってみると、なんの抵抗もなくスパッと斬れてしまった。
ミスリル板は流石に魔力を込め斬り落とした。
そしてこの試験の初の完走者となった。
「「「わー」」」
今日一番の歓声が上がった。
ルミナスの元へ戻ろうとすると殿下に呼び止められた。
「ねぇその剣は聖剣?」
「はい」
「そう、銘は?」
「エスポワールと言います」
「聞いたことの無い聖剣。どこで手に入れたの?」
「盗賊の頭が待っていました」
「聖剣使いの盗賊を倒して奪ったのね」
「そうです。アジトの奥にあった遺体が抱いていたそうです」
「ありがとう。とてもいい剣ね、大切にしなさい」
「はい。ありがとうございます」
ちょっと意外だった。
貸せとかくれとか言って奪われるかと思ったよ。
ルミナスの元へ戻る。
「デュラント君、凄かったよ」
「ありがとう。この剣のお陰だよ。普通の剣ならミスリルは斬れなかったと思う」
「そんな事ない。デュラント君ならどんな剣だって大丈夫」
「ありがと」
翌日、学園に入試の結果が張り出される。
ルミナスと合流して学園に向かう。
試験突破は30人、俺とルミナスの入学は間違いないだろう。
それでも少し緊張する。
少しずつ近づくとAクラス首席に俺、次席にルミナス、三番目は殿下となっていた。
「やったね」
「うん。デュラント君が勉強教えてくれたお陰よ。ありがとう」
「どういたしまして。学園が始まったらよろしく」
「うん。よろしくね」
入学は2ヶ月後。
帰る前に制服を受け取って、帰りもルミナスと共に2日掛けて戻った。
屋敷に帰った翌日、鉄製の鍬、鎌を錬金術で作成して農家に配って使い方を教えた。
農民は気に入ってくれたようだ。
この世界の農具は木製で作りも雑で畑を耕すのにも時間が掛かる。
王都に行った時に商店や鍛冶屋に行き探してみたが木製の粗悪な農具ばかりで田舎で使われる農具と然程変わらなかった。
前世の自分の事は全く思い出せないが、他のことは鮮明に思い出せる。
農具なんて殆ど扱った事はなくても何故か構造を理解していたりするのだ。
この知識を使い領民の収入の向上、生活の向上を行いたい。
収入の向上はそのままワルキューレ家の税金が増える事に繋がる。
生活の向上は人の流入も繋がる。
悪い事はないのだ。
それから狩人には複合弓を、木こりには鉄の斧、大工には鋸を、料理人、主婦には包丁と鍋、フライパンをそれぞれ配った。
この街にこれ以外の職業はない。
だから子供達の大半は成人すると伯爵領や王都へと出てしまうのだ。
今の状態が続いていけばそう遠くない将来、過疎や限界集落と言った状況に陥ってしまうだろう。
そうならない為の対策を出来る事から初めていこう。
道具作りがひと段落した頃、ルミナスとの正式な婚約が決まったというか決まってしまった。
両家家族がそれを望んでいた。
しかしこんなに早く婚約とは・・・。
前世の記憶のせいで正直戸惑っている。
勿論、ルミナスとは幼少の頃からの付き合いだし兎に角可愛いし、2人の時間はとても自然体でいられる唯一の人だ。
だから、結婚する事が嫌なのではない。
9歳で婚約と言うのが何というか変だと思ってしまうのだ。
入学式迄に正式な婚約の場を設けると言う。
この世界の多くは重婚を認めているが、この国は貴族、王族であっても多くの場合一夫一妻が主流となっている。
そういう背景から婚約の場はとても大事な行事であり、当日両家主催の婚約パーティーが執り行われるのだ。
数日が過ぎた頃、父が国王から呼ばれ婚約に待ったが掛かった。
ことの発端は傾国姫だ。
父である国王陛下に俺のことを話し結婚したいと願ったそうだ。
それを聞いた陛下は、父を呼んでの謁見は娘を娘をと懇願する陛下にそれは困りますと言っていた父だったが陛下の嘆願にこれ以上断る事は出来ないとついに折れてしまったと言う。
しかし、息子とルミナスは幼少の頃から婚約させたいと両家で話していた事、当の本人達も結婚に前向きな事から全員で話し合いを持つと約束して急いで自領にトンボ帰りしてきたそうだ。
ただ、うちは子爵である、罷り成りにも王女を降嫁させるには伯爵より上の上位貴族でないとならない事等、陛下にとっても不安な要素はあるのだ。
「はぁ傾国姫は諦めてなかったのか・・・」
国王の対応も早かった。
娘を呼び、王女の結婚相手の最低ラインはやはり伯爵だと伝える。
「子爵ではダメだ。前例がない婚約は波紋を呼ぶ。残念だが諦めてくれ」
「嫌ですわ。お父様、私より強い同年代の男がやっと現れたのです。学園の入試結果はご覧になりましたよね?勉学、魔法、剣術と全て満点です。そんな男を子爵止まりにしている方こそ勿体ないとは思いませんか?」
「まだ父の代だ。彼が子爵に就いたら考える。だが、それまでには結婚しているだろう。いくら重婚が認められているからと言っても、相手は伯爵嬢、お前と結婚したらその日から側室と呼ばれるのだぞ。そんな事があって鷲は伯爵に合わす顔がないぞ」
「はぁ、であれば私を男爵家へ養子に出して下さい。私は地位で彼女からあの人を取り上げたくありません。第二夫人であろうが第三夫人であろうが一向に構いません」
「そ、そんな事が出来ると思うか?」
「無理とおっしゃるなら公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵と一つ一つ下に養子に出すよう命じて下さい」
「我が儘を言うな。これ以上の話しはもうない。私の方から謝っておくからこの話は無かったことにしなさい」
「私は諦められません」
目に涙を浮かべながら諦めならないと言う娘を見て何も出来ない事に不甲斐ないと思う父だった。
その後、国王陛下直筆の手紙が両家に届いた。
今回の事、大変申し訳なかった。
娘には諦めさせる。
両家の大事な場を汚してしまった事の詫びとして、パーティーと2人の式に夫婦で参加させて頂きたく思う。
これは大変なことになった。
入学式直前、両家揃っての挨拶が始まる。
その後、結納金、嫁入り道具の詳細、式の会場と時期等、細かく詰めていった。
此方の世界も神前式の後披露宴が執り行われる。
その後のパーティーも盛況であり、若い2人の門出に相応しい日となった。
勿論、国王も参加して頂き、締めの挨拶もして頂いた。
夜、まだ大人たちがワイワイと騒いでる。
テラスに出るとルミナスが月を眺めていた。
「ルミナス、風邪ひくよ」
そう言って上着を掛ける。
「ありがと」
「こんなところでどうしたの?」
「うん。ちょっとね」
「そっか」
「・・・」
「・・・」
沈黙が続く。
意を決して言葉を紡いでいく。
「ルミナス、あ、あのさ」
「な、なに?」
「ちゃんと俺の意思と言うか、俺の言葉が足りなかったなと思って」
「そうかな?」
「そうだったんだ。だからさ。ちゃんと俺の気持ちを伝えなきゃと思った」
「うん」
「ルミナス、俺と結婚して欲しい。君を絶対に幸せにする」
「はい。幸せにしてください」
大粒の涙を流して答えるルミナス。
とてもいいムードだが、まだ9歳の俺達は進展がある訳でもなく。
ただ夜空を見上げでルミナスの涙が引くのを待っていた。
次の日、両家揃って総勢6台の馬車で王都へ向かっている。
いよいよ入学式まであと3日。
何事もなく王都入りし、王都の屋敷に今日は泊まる。
王都屋敷も伯爵家と隣同士なのだ。
入学式当日、受付を済ます。
「デュラント・フォン・ワルキューレです」
「はい。Aクラスですね。あっ首席ね?今日の新入生代表挨拶をよろしくね」
「え?新入生代表挨拶?次席に殿下もいらっしゃいますしお断りさせて頂くことは?」
「勿論出来ません。本学園の伝統ですからよろしくお願いしますね」
「はい」
新入生代表挨拶なんて・・・どうしよう。
ご覧頂きありがとうございました。
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