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錬金術とお取り寄せ

 錬金術を始めて2年が経った。

 毎日毎日、錬金術でポーションを作って教会や領民に配っている。

 薬師のいないこの町ではポーションを買うにも1ヶ月に1、2回来る商人が数本売るくらいの物で足元を見て高値なのだ。

 

 1年程で錬金術は中級になった。

 中級のポーションと初級MPポーションを作れる様になった。

 安定剤や固定剤も必要無くなり、中級は薬草3種と魔法で出した魔力水で作れる。

 薬草はお取り寄せスキルで目の前に出す。

 採取に行かなくて済むのは本当に楽だった。


 それから一年毎日ポーション作りをしていると上級を扱える様になった。

 「やっと鉄を操れる」

 それと上級ポーションと中級MPポーションも作れ、各種薬も作成可能になった。


 来年には王都の学園に入学する。

 今のうちに必要な物を作成したかった。

 空間魔法が上級になって、テレポートが使える様になったのと、本には載っていなかった空間拡張付与と言うものが使える様になっていた。

 試しに作業場を空間拡張付与をしてみたところ、部屋が広くなり続ける。

 魔力を止めると拡張が止まった。

 数日経っても元に戻る気配もない、本で調べると、空間魔法スキル錬金術スキルを持つ事でで稀に覚えられるそうだ。

 元に戻すには空間拡張魔法をもう一度掛ければいい。

 これを覚えた事で、父が学園用にと買ってくれた馬車を改造しようと思った。

 学園用と言うが学園を卒業すると成人迄の2年間見習いとして仕事に就く。

 この馬車はこれから何年何十年とこの馬車にお世話になるのだ。


 先ずは足回りから。

 車輪は車軸に固定されていて、車軸は前後一本だけだった。

 先ずは車と同じ様に車軸を分割に単独で上下に動く様に取り付け、前輪は馬が左右に曲がる時に一緒に旋回する様に作った。

 前輪を曲げるだけでも旋回性能はあがり、馬の負担も少なくなった。

 それからスプリングとショクアブソーバーを取り付けた。

 「クククこれだけで抜群の乗り心地だ」

 車輪にはタイヤ代わりに厚めのゴムを固定する。

 最後に車輪の回転性能を上げる為にボールベアリングも取り付けた。

 「うん、これで馬の負担も最小限になるだろう」

 

 外側には金属パーツを使って強度を上げつつ装飾的な役割も果たす。

 中は空間拡張付与で40畳位まで広げた。

 内装は御者とメイドの個室(寝るだけの部屋)と俺の寝室、キッチン、リビングを設置する。

 「これはなかなかの出来だ」

 

 すると父が紅茶を持って来てくれた。

 「ほら。どうだ?自分仕様の馬車は出来上がったか?」

 「ありがとうございます。はい、これで王都までの道のりは苦にならないと思います」

 「どれ、見せてくれ」

 「はい」

 中に入ると父は目を開けたまま気絶していた。


 目を覚ました父は、母と妹、メイドと御者を呼んで、急遽隣の伯爵領へと向かった。


 全員が中の様子に驚いたが直ぐに寛ぎ出す。

 メイド達もお茶や軽食を作り始めた。

 

 「デュラントちゃん、全く揺れないけどどうして?」

 「はい。バネと言う物を取り付けて揺れや振動を吸収しています」

 「今はそんな便利な物があるのね?」

 「いえ、なかったので作りました」

 「それは凄いわね」

 「この技術は特許を取って王都の大商店に売り込めば売れるな」

 「そうですかね?」

 「その前にうちの馬車にも頼むぞ。それから王都に行ったら陛下にも見せようと思う。陛下の馬車にも頼むぞ」

 「へ、陛下のですか・・・」

 「お兄様凄い」

 「ありがとう」

 大事になってしまった。


 大体6時間の道のりを揺れなくなり馬の負担も減った事で4時間程で辿り着いた。

 伯爵は父とは同級生で、今でも仲がよく家族絡みでよく会食をする仲だ。

 今回もアポ無しの来訪にも嫌な顔せずに喜ぶ伯爵、娘のルミナスは俺と同級生になる予定だ。


 「久しぶりだな。今日はどうした?」

 「何も言わず、この馬車に乗ってみろ」

 「なんだ?わっ!中どうなっているんだ?」

 「驚くのはまだ早い。出してくれ」


 父達が馬車で出掛けるとルミナスが話し掛けてきた。

 「デュラント君、アリシアちゃん、こんにちは」

 「ルミナスちゃん、こんにちは」

 「こんにちは、ルミナス」

 父と伯爵はどうもルミナスと俺をくっ付けたいらしい。

 勿論、ルミナスは可愛いし嫌じゃないけど・・・父と伯爵の露骨過ぎる反応には辟易する。


 伯爵夫人に招かれて屋敷の中に入る。

 お茶を飲んでいるとルミナスが「勉強を教えてください」と頼んできたのでルミナスの部屋へと通され家庭教師をする事になった。


 「何がわからないの?」

 「数学が全くわからないの。他は自身があるのだけど」

 「それじゃぁこの問題集を一緒にやろう」

 夕方まで勉強を教えながら、参考書代わりのテキストや解き方などを書いたノートを作成した。


 夕飯時、父達が帰ってた。

 「デュラント、私の馬車も改造してくれんか?」

 伯爵も大層気に入った様子だった。

 「わかりました。ルミナスの王都用の馬車にも手を加えましょうか?」

 「いいのか?よろしく頼む」

 その日は伯爵家へ泊まって朝食を頂いて帰路に着いた。


 翌日から父の馬車を改造し始める。

 父は俺の馬車の倍の広さで頼むとお願いされた。

 家族で出掛ける時に全員がベッドで寝られて、寛げるリビングスペースも確保したいと言う。

 まるでキャンピングカーだ。

 家族で出掛ける時にはメイドが3人同行する。

 なのでメイドの個室も3人部屋に改良した。


 それが終わると伯爵家へと1人で出向き、2台の馬車を作成した。

 伯爵家の馬車も父の馬車と同じ広さで作成する。

 メイド部屋も3人部屋だ。

 

 ルミナスの馬車はルミナスの希望通り俺と同じ広さに内装も同じように作った。

 馬車の外側は白メインのラインや窓枠は濃いピンクにした、中は壁紙を白に、ソファーやベッドは薄いピンクで仕上げた。

 女の子らしい可愛い馬車の完成だ。

 伯爵には白馬を用意して欲しいとこっそり頼んでおいた。

 学園でも目立つだろう。


 因みに俺のは馬車は黒メインでラインと窓枠に赤を採用した。

 外側もルミナス希望で金属の使い方や装飾、色が違うだけで全く同じ作りになっている。

 「デュラント君とお揃いなのね。嬉しい」

 「ルミナス、王都の学園楽しみだね」

 「はい」

 ルミナスは笑顔で返事をする。

 帰り際、伯爵から大量のお金を渡された。

 「手間賃だ。持っていきなさい」

 「こ、こんなに困ります」

 「気にするな。ガゼフは了承済みだ」

 「わかりました。ありがとうございます」

 「こちらが礼をする方だ。本当にありがとう。娘も安心して王都に行ける」

 「そうです。デュラント君、本当にありがとうございます」

 「試験と入学の時はご一緒に王都に向かいましょう」

 「そりゃいいな。ガハハハ」

 「お父様ったら」

 「それでは帰ります。お世話になりました」

 「うん、こちらこそだ。気をつけて帰りなさい」

 「はい」


 帰路の途中、男性が女性、女の子を庇いながら盗賊と対峙していた。

 直ぐに駆けつけるも間に合わず、男性は胸の辺りを数カ所刺されて倒れてしまった。

 「きゃーお父さん、起きて起きてよ」

 「キャハハ、もう死んでるよ。さあ2人共大人しく付いてこい」

 「待て」

 「なんだ坊主」

 「助太刀だ」

 「なんだと?坊主、こんな奴らを助けて死ぬか?」

 「死ぬのはあんたらだ」

 「吐かせ、やっちまえ」

 「おぉー」

 「火球、あっ魔力込めすぎた」

 火属性の初級魔法。

 初級魔法の筈だが魔力を込め過ぎて大きさが違う。

 雑魚盗賊を全員巻き込んで爆ぜた。

 「お、お頭・・・助けてくれ」

 「てめーやってくれたな!」

 剣を抜くと膨大な魔力が剣に宿っている。

 鑑定する暇もなくその剣はデュラントの目の前に迫る。

 デュラントは身体強化を使い、剣を避け盗賊にカウンターを当てる。

 まぁ8歳児が真っ直ぐ拳を突き出せば大男の股間に命中する訳で、身悶えながら這いずり回る盗賊にはもう戦う力は残っていなかった。

 投げ捨てられても魔力を放つ剣を鑑定すると・・・。

 無銘の聖剣と書かれている。

 剣自体の能力は凄まじく、魔力伝導率+300もある。

 こんな盗賊が持つには相応しくない代物だ。

 「この剣はどこで拾った?」

 「クッ、今のアジトの奥に死体があってそいつに抱かれていたものだ」

 「そうか」

 大切にされていたのだろう・・・浄化をすると綺麗な状態となった。

 「()をやろう。希望、エスポワールだ」

 すると聖剣は眩いばかりの光を放ちデュラントの身体に合うやうに短くなった。

 「鑑定」

 聖剣エスポワール

 銘を与えてくれた新たな主人の希望になる様に主人の身体に合わせて成長する聖剣。

 ランクSSS

 魔力伝導率+1200

 

 魔力伝導率とは聖剣や魔剣に通せる魔力の総容量の事だ。

 −の聖剣、魔剣もある。

 歴代最高は勇者の聖剣が魔力伝導率+450と言われている事を考えれば聖剣エスポワールは伝説的な業物と言う事になる。


 「お前、何をした?」

 「無銘の聖剣に名をやっただけだ」

 「聖剣だと?」

 「ああ、こいつは伝説的な聖剣となる」

 「俺のだよこせ」

 ここで捕まる奴に返す意味ないだろ、それにこの聖剣は俺を主人と認めた様だ」

 「くそっ」

 こっそりロープをお取り寄せして盗賊の頭を拘束した。

 「怪我はありませんか」

 「はい・・・」

 「お父さん」

 「ごめんね、もう少し早く着いていれば」

 「助けてくださってありがとうございます」

 「お、お父さん。わぁーあああ」

 「ごめんね」

 女の子は泣き止むと此方を睨み付ける。

 「ね、ねぇ、なんでもっと早く来てくれなかったの?」

 「アイラ!なんて事を言うの。この子が居なかったら私達も今頃・・・」

 「でも、お父さんがいなくちゃこれからどうしたら・・・」

 「大丈夫、お母さんその分たくさん働くわ」

 「お母さんは病気を治さないと働けないでしょ?お母さんまで居なくなったら私は・・・」

 「ごめんね」

 「あのー?」

 「ごめんなさいね」

 「いえ、うちで住み込みで働きませんか?」

 「これ以上、ご迷惑をお掛け出来ないわ。それに貴方の一存では決められないでしょう」

 「いえ、俺付きのメイドは自分で選んでいいと父上から許可を貰っています。娘さんを俺付きのメイドとして、月2名分の賄い付きで金貨8枚と住み込みの部屋にお母さんも一緒に暮らせるようにします。そして此方で薬も出すので飲んで元気になれば家のメイドとして働いて貰って構いませんよ。勿論、賃金はお出し致します」

 「本当にいいのですか?子供に金貨8枚なんて大金、妾になれとかですか?」

 「いえ、来年には学園に行かなくてはならないので4年間は学園に帯同してもらいます。その間、離れ離れになってしまいますが大丈夫ですか?」

 「はい。大丈夫です。その代わりお母さんを治してください」

 「娘がそう言うならよろしくお願いします。私はユウラ、娘はアイラと申します」

 「そういえば、自己紹介がまだでした。私はデュラント・フォン・ワルキューレ、ワルキューレ子爵の長男です」

 「し、子爵様・・・そうとは知らず失礼いたしました。子爵様のメイドなど私達には務まりません」

 「気にしないで下さい。旦那さんを助けられなかった罪滅ぼしと思って下さい。それに子爵とは言え、ド田舎の貧乏領主の息子ですから気にする事はありませんよ」

 「そんな」

 「さぁ行きましょう。荷物をここに運んでください。私は旦那さんを運ぶ準備をしてしまいます」

 「主人まで。いいのですか。あ、ありがとうございます」

 そう言ってユウラは初めて涙を見せた。


 ユウラ達の乗ってきた馬車は半壊していた。

 馬は無事だったので、盗賊の馬も合わせて6頭全てを馬車の後ろに繋げて帰る事に、盗賊の頭は身体を半分土に埋め、木に巻き付けてきた。

 領地に帰ったら兵に引き取ってもらおう。


 アイラとユウラが馬車の中に入ると突然現れた広いスペースに驚きを隠せなかった。

 「こ、これはどうなってるの?」

 「流石、子爵様。見た事もない魔法の様な馬車をお持ちなんですね」

 「これは俺が魔法で広げたんだ」

 「こんな魔法があるんですね」

 「凄い」

 「今、お茶を持ってくるからソファーに掛けて待っていて」

 「そんな、私がやります」

 「大丈夫ですよ。座って下さい」

 「ありがとうございます」

 お茶とストレージにしまってあった軽食を出す。

 「ありがとうございます」

 「遠慮せずに食べて」

 「はい」


 2時間程で屋敷に到着し、兵に盗賊の件を伝えると直ぐに父の執務室へと入った。

 「父上、帰りに盗賊に襲われていた3人を助けましたが1人は間に合わず、残された娘を俺の専属メイドにしたいと思い連れてきました。母の方は身体が悪いそうでここで一緒に住み込みながら治療して完治した後、屋敷のメイドとして雇って頂きただけませんか?」

 「そうか。それで盗賊は?」

 「はい、頭以外は魔法で・・・。頭の方は木に縛り付けて先程、兵に引き取ってくれるよう頼みました」

 「そうか。わかった。メイドの件は承知した。お前が責任を持って治療する事、そして娘の方はメイド長に預けて直ぐに教育してもらいなさい」

 「はい。ありがとうございます」

 「お前が決めた事だ。責任さえ持てれば何も言わない」

 「はい」

 「ところでその物凄い魔力を放っている布でぐるぐる巻きの剣はどうした?」

 「はい。盗賊の頭がアジトの奥にいた遺体に抱かれていたと。鑑定した所、かなりの性能の聖剣でしたが無銘だったので浄化して銘を与えました。今は勇者の聖剣の倍以上の魔力伝導率を誇る聖剣です」

 父は口を開けたまま止まってしまった。

 

 「そ、そうか・・・勇者の聖剣の倍以上か・・・。そうか・・・」

 「では失礼します」

 「・・・」


 2人に父の了承をもらった事を話し、メイド長のララに引き合わせる。


 「デュラント様、おかえりなさいませ」

 「ララ、アイラを来年の学園に連れて行くそれまでに専属メイドに仕上げてくれ」

 「わかりました。それで其方の方は如何致しますか?」

 「完治してからになるが屋敷のメイドとなるユウラだ。アイラとユウラは同じ部屋にしてくれ」

 「わかりました。ではお二人とも、先ずは屋敷のご案内をしてからお部屋にご案内致します」

 「「よろしくお願い致します」」

 「では、頼んだ」

 「はい」


 2人と別れると作業場へ移動する。

 先ずは聖剣エスポワールの鞘を作成したい。

 だが、聖剣の鞘は聖剣と同じミスリルやアダマンタイトで作成しないと鞘が聖剣で切れてしまう。

 「今は錬金術を最上級にあげる事を目標にしよう」

 

 それから毎日、上級ポーション、中級MPポーション、ユウラの薬、兵士用の剣や槍を作った。

 用事が無ければ一日中錬金術で何かを作成している。


 そして10ヶ月後、入学試験の前々日になってようやく錬金術が最上級となったのだった。

 ブックマーク登録よろしくお願い致します。

 次回は入試編です。

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