一話『能力を失った傀儡』
「――――えっと、確か森ノさんはいつもこの場所にいたよな?」
「そうだな、でもフラストはいないな」
黒荻が起こした事件から数日。
ある程度動けるようになった俺と南陽は、聞きたいことがあって森ノさんを訪ねた。
しかし、彼女はどうやらいないらしい。
聞きたいことというのは、南陽が聞いた、黒荻の死に際に発したという言葉について。
『…………ペルフェの、能力は…………ある奴の力を…………参考にしたものでの…………』
『そやつの名は――――森ノ千花じゃ』
どうやら黒荻が言うには、ペルフェの能力に森ノさんが関わっているらしい。
それが本当なのか、俺も確かめたかった。
でも、森ノさんがいないのであれば、また今度にするしかない。
「――――示杞、名織!」
「!? どうしたんだ、桃李?」
そう思っていた時。
桃李が焦った様子でやってきた。
「森ノが消えた」
「!? 何で!?」
森ノさんは『奪回者』において最大の戦力。
彼女がいなくなることは、『奪回者』にとっての一大事だ。
すぐに原因を考える。
最初に思い浮かんだのは、ユズリハの言葉だった。
『僕たちの周りで起きた失踪事件について君たちも注意すること』
官邸内で人の行方が分からなくなる現象。
でも、いなくなったのは森ノさんだ。
彼女ほどの実力者がそんな簡単に巻き込まれるとは思えない。
だから、別の理由があるはずだ。
「ピチリ、どっか心当たりのある場所とかないか?」
「…………悪いが、森ノがここを離れることは滅多にない。ひとまず拠点内は全て探したが、見つからなかった」
桃李が一番森ノさんについて知っているはずだ。
彼が心当たりのある場所を探したなら、もう片っ端から探していくしかない。
「それじゃあ手分けして外を探すか――――っ!?」
俺がその提案をした時だった。
外から聞こえるただならぬ爆音。
「襲撃か!? 森ノがいないこんな時に!」
「ゴビっ、俺たちが行くぞ!」
「ッ、ああ!」
森ノさんがいない今。
どれほどこの拠点の戦力が落ちているのかわからない。
だから、俺たちも全力で事に当たろう。
※ ※ ※
拠点の外へ向かう最中。
俺は疑問を抱えていた。
ペルフェの行方が分からなくなってから、ここを襲撃してきた奴らの統率はできていない。
能力も使えなくなったという。
――――それなら、どうやって攻撃してくるのか?
考えられる可能性は、単に別部隊か、能力を失った状態でも襲撃をしてくるかだ。
どちらにせよ、細心の注意を払っておくべき。
いつでも憑依をできるようにしておこう。
「――――着いたッ!」
出口の扉を開け、草原へと抜け出した。
「敵!」
そこで、俺が目にしたのは、刃物を持った敵。
それは、俺の想定内。
能力が使えないのであれば、武器に頼るしかない。
「……………………え?」
でも、何かがおかしかった。
「…………ゴビ。これって…………」
「あ、ああ。アレと同じだ」
俺が見た人達の目に光はなく。意志もなさそうで、言葉も発さない。
それはまるで――――
――――この山の動物たちのようであった。




