十三話『戦力の当て』
「…………」
俺は目を開けて、静かに体を起こす。
元のホテルに戻ってきたようだ。
「――――?」
南陽にはまた何も言えなかったけど、進歩がなかったわけじゃない。
それに、今の南陽はつぐもの居場所を探していたときの俺とそっくりだ。
自分で言うのもなんだが、止められてもやめないだろう。
アイツは知らないんだ。
あの時、俺のそばに楓やつぐもがいてくれたこと。
そして、南陽がついてくれたことがどれだけ俺の心を救ったかを。
正直、あのとき俺の心は楽になった。
一人でやる必要なんてないと。
皆で助け合えばいいと。
そう思えるようになったから。
どうやら、南陽はそれを知らずに教えたらしいけど。
なら、今度は俺が教えてやる。
「――――!」
お前がしてくれたようにな。
「癒川くん!」
「?」
綿さんが少し呼吸を乱した様子で俺の名前を呼んでいるのに気づいた。
「どうしたんですか?」
「どうかしたかって、ずっと話しかけてたんですけど!」
「え? ごめんなさい?」
――――あ、確かに途中で何か聞こえてたような? 必死に考え事してたから気づかなかった…………。
「まあいいでしょう。それで何か成果はありましたか?」
「は、はい。実は――」
俺は憑依先で、南陽を発見したことを綿さんに話した。
「――そうですか。彼と会ったんですね」
「でも、南陽はそう簡単に戻る気はないそうです」
「では、どうします?」
「もちろん、行きます。場所も突き止めた。問題は――」
「――戦力差ですよね?」
「……そうです。あの炎を扱う男のような奴が何人もいるなら、正攻法では無理です。森ノさんの能力も、些か制限があるようですし」
「?」
そうだ。森ノさんも無敵じゃない。
俺が『奪回者』の拠点に潜入したときに感じたように、彼女の能力に制限がなければ、この戦いは終わってるんだ。
だから、何か制限がある。
無意識下でしか発動できない俺の能力のような何か。
例えば、装置。
襲撃から拠点を守るときに、能力とともに使っていたあの装置。
あれが何か鍵を握っているのかもしれない。
それは後々聞くとして、何か方法を考えないと。
戦力を探すのが手っ取り早い。
だけど、当てが…………あ。
ふと、ある者のことを思い出した。
「…………期待薄だけど」
「?」
それは、僅かな希望。
俺はさっき憑依先でとある名簿帳を見た。
それが、本当だとしたら可能性はある。
けれど、それは今にも千切れてしまいそうな糸のようで。
もしも、間違えていたら取り返しのつかない賭け。
でも、今はこれに賭けるしかない。
「…………行かないと」
俺は、ベッドから立ち上がり、ある場所に向かう準備をする。
「ど、どこに行くんですか?」
「南陽を助けるための人探しです。俺に対してはわからないけど、アイツはきっと心優しいやつです。そうでなければ、俺は勝てていなかったから」
「? よくわからないですけど、私も行きます!」
「わかりました。じゃあ行きましょうか」
正直、彼女が俺たちの頼みを聞いてくれるのかわからない。
もしかしたら、敵意を向けてくるかもしれない。
でも、これしか方法がない。
俺たちが、南陽を助けられるかは彼女にかかっているんだ。




