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その体に出会いと別れの挨拶を ~あの日、憑依した少女にもう一度出会うために~  作者: 炭本 良供
三章「名状しがたい感情」

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七話『お互いの立場』

「――――話してもらおうか。君が一体何者なのかを」


 目の前の男が放つ言葉に俺は言葉をつまらせた。


「……………………」


 今は、敵に聴取されている状況だ。

 味方の情報を話すつもりはない。


「話すつもりはないと言いたげな顔だね。良いだろう。僕か話そう」

「!? いいのか?」

「君が答えた花がリモニウムだったからだ。大方、合言葉がわからないから花言葉で運試しといったんだろう?」

「う」


 俺の考えは完全に筒抜けだったようだ。


「そして、君の目は何か決心した目だ。そういうものは僕の敵にはならない」

「?」


 厳しい雰囲気を醸し出していた彼の目は穏やかになり、言葉遣いも優しくなっていた。

 状況は理解できていないが、敵ではないのかもしれない。


「話がずれてしまったね。僕のことはユズリハとでも呼んでくれ」

「ユズリハ……」

「君の名前は?」

「し…………わからない」


 俺は示杞と言おうとしたけど、それを躊躇った。

 俺は示杞ではない。

 俺が事件を解決するのを、この体の内側で信じて待っているアイツこそが示杞なんだ。

 示杞と名乗るのに抵抗がある。


「……わけありみたいだね……でもそれだと君を何と呼べばいい?」

「……示杞とでも」


 俺は結局、そう答えた。

 他の名前だと会話に支障が出るかもしれないからだ。

 まあ、ゴビって呼んでくる奴いるけど。


「了解した。では、示杞君。本題といこう」

「!」

「先に話すと言ったからね。まずはこちらの事情から」

「頼む」

「うん。今官邸内の人間は二つの派閥に分かれている」

「え? そんなことどこにも……」

「完全に内部と外部を遮断しているからね。そんなこと誰一人知らないだろう。それにこの派閥というのは、内部ですら表立っていないんだ」

「そうなのか」

「君には外部の人間として行動してもらいたいんだ。僕が外に出るわけにはいかないからね」

「なるほど。そういうことか。でもちょっといいか?」


 ふと疑問が湧く。

 ユズリハたちが外に出られないのはわかった。

 でも、それに即していない人物がいた。


「さっきのところにいた少女は外に出ていたよな。なんでだ?」


 赤髪の男を打ったあの少女だ。


「ああ。彼女は僕たちとは違うんだ。僕らは立場上、下手な動きはできないが、彼女にはそういうしがらみがない。可哀想なことに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「?」

「ああ、悪いね。混乱してしまうから忘れてもらって構わない」

「……わかった」


 どうやら、あの少女はユズリハとは別の立場にいるらしい。

 詳しくはわからないが少女を外部に出しても問題ないから、出入りを自由にさせているのだろう。


「あとは目的だね。それはアイツを止めること」

「アイツ?」


 次にユズリハが話すのは、彼の目的。

 彼が誰と敵対しているのか。

 それによって、味方になれるのかが変わってくる。

 悪者であれば協力できる。

 一方、ユズリハが市民に危害を加えるようなやつであれば論外だ。


「今の()()()()だ」

「え?」


 だけど、ユズリハが口に出した名前は俺の予想を優に超えていた。


――――今なんて言ったこの人? え。国のトップが相手?


「当然そういう反応するよね……」

「そりゃびっくりするだろ!」

「静かに……声大きいと聞こえてしまう」

「ごめんなさい……」


――――ごめん、名織。俺も人のこと言えなかった。

 

「そ、それで何でその人と対立することになったんだ」

「アイツがやってはいけない一線を越えたからさ。目的が何であれ。結果がどうであれ。やってはいけないことがある。アイツはそれを越え、それをさらに突き進もうとしている。僕はそれを止める」

「な、なるほど」

「君も見ただろう。あの靄を。あれは僕たちが片付けないといけない問題なんだ」

「……………………」


 目的の少女が眺めていた靄。

 詳しくは知らないけれど、放置してはいけないものだということは見ただけでもわかる。

 それを取り除く。


 そんな覚悟がユズリハにある。

 なら、俺が聞くべきことは一つだ。


「ユズリハ」

「どうしたんだい?」

「ユズリハに協力すれば、誰かを救うことはできるのか?」

「誰かを救うことができるかは不明だ。けれど、このままでは、多くの人が犠牲になる」

「…………」


 俺をだまして協力させるならこの質問に頷くだけでいい。

 それに彼の目は嘘をつく人のものではない。

 こちらを見て離さない、揺らぐことのない目。


「わかった。協力しよう」


 こんな目で見られたら頷く他ない。


「わかってもらえてうれしいよ。では今度はこっちが聞いてもいいかい?」

「ああ」

「まず、どうやってここに侵入したんだ?」

「それは――――」


 俺は憑依でこの体に侵入したことを説明した。


「ふむ。憑依か」


 総理大臣が敵という事実と同じくらい混乱することだと思ったのだけれど、思いのほかすんなり受け入れられた。


「これは僥倖。行動の幅が広がる。質問はこれだけでいい」

「これだけでいいのか?」

「もちろん。では、早速これからの行動のことを話そう。頼みたいことが3つある」


 ユズリハに伝えられた3つの頼み事。

 これが俺たちの問題にどうつながるかわからない。

 けれど、糸のようなわずかな手がかりを今はつかみ取るしかない。

 あのホワイトブロンドの髪をした少女から得た手がかり。

 このチャンスは絶対に逃さない。

 

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