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その体に出会いと別れの挨拶を ~あの日、憑依した少女にもう一度出会うために~  作者: 炭本 良供
三章「名状しがたい感情」

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二話『森ノさんの能力とつぐも』

――――あの瞬間で、これほどの数を打ちのめすなんて…………。


 5、60人もの人を遠隔で倒してしまうほどの森ノさんの能力。

 それに俺は圧倒されていた。


「…………何だこれ?」


 少し落ち着くと、ふと倒れた人々の周りに何かが落ちていることに気づいた。

 それは、奇妙な機械だった。


「それも回収するぞ、示杞」

「ああ、わかった」


 俺は機械に詳しいわけではないから、桃李に任せることにした。

 とにかく、今回の出来事で2回も味わった森ノさんの能力がやはり尋常ではないことを再確認した。

 そんな彼女が味方であることは心強い。


――――でも。

 

 森ノさんの能力が強力だからこそ、逆に、気にかかったことがある。


 以前、桃李は『奪回者(リキャプチャラー)』が、つぐもの世話をしていたと言った。

 なら、俺が初めてつぐもに憑依した時の研究所らしき場所はここにある。

 それは良いんだ。

 聞く限り、それはつぐもを救うためだったのだから。


――――でも、だったら、()()()()()()()()()()()()()()

 

 俺はてっきり、感情が再び芽生え始め、処置が必要なくなった上に、この場所が危険だったからだと解釈していた。

 けれど、森ノさんのここまで圧倒的な実力があれば、ここにいたほうが安全だ。

 その上、もしもつぐもに異常があればすぐ面倒を見られる。


――――一体、何故?


「示杞、そろそろ戻るぞ」

「ん、ああ」


 後ろから肩を叩かれ、考えに耽っていたことに気づいた。


――――今度聞けるときに聞いてみることにして、今は戻るか。



※ ※ ※



「ん? 桃李、森ノさんは?」


 俺たちは元の部屋に戻った。

 けれど、そこには森ノさんの姿はなかった。


「ああ、()()は体力消費が激しいらしいからな。休んでるんだろう」

「そうなのか、じゃあ後にするか――――名織――――いない!?」


 森ノさんがいない理由は分かった。

 けれど、何故か名織までいなかった。

 

――――何か嫌な予感が。



 ※ ※ ※



「……………………後にしてくれぬか?」

「いやあ、カッコよかったよ~、ネーミングは俺のセンスの方向性とは違うけれどさ――――」

「名織、行くぞ」

「ちょっ」


 嫌な予感が的中した。

 名織は森ノさんのところにいた。

 

――――ネーミングとかの話してたんだろうな。一方的に。


 弁解を聞く必要もない。

 連れていこう。



 ※ ※ ※ 



「森ノさんは疲れてるらしいから、休ませてあげてくれ」

「…………ああ、わかった。教えてくれてありがとうな。つい、夢中になってた」


 俺たちは名織が彼の部屋に入るのを見送った。

 森ノさんが疲れているのを聞いて彼も反省しているようだ。


 そして、俺は桃李と二人っきりとなった。

 俺は桃李に声をかけて、空いている食堂の席についた。


「なあ、桃李。つぐもの話なんだけどさ」

「なんだ?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()


 疲れている森ノさんの代わりに桃李に疑問を打ち明けてみる。


「……………………ああ。そのことか」


 桃李は真面目な表情に変え、話し出す。


「森ノの能力を見て思ったのだろう? ここのいたほうが安全だと」

「ああ」

「でも、つぐもにとっては違った」

「どういうことだ?」

「森ノがあの能力を使いだした時、()()()()()()()()()()()()()

「!?」

「声をかけても返事はなかった」

「そんなことが…………」

「得体の知れないエネルギーによるものなのかは理解できないが、つぐもの容体を見つつ、マンションに住まわせることにしたんだ」

「なるほど」


 納得はいった。

 でも、つぐもが頭を抑えだした理由が気になる。

 それは桃李にもわからないらしいけど。


「でも、危なくないか? つぐも一人で」

「それについては問題ない。つぐもの周囲を監視するチームがある」

「へえ…………それなら安心か」

「お前がつぐもに接触したときも見てたんじゃないか」

「え、それって」

「お前が少しでも不審な動きをしていたら、……………………かもな」

「ちょっと待って! そのゴニョゴニョしたところ何て言った!? 俺のほうは全然安心できないんだけど!?」


 ひとまず、つぐもに対する疑問は晴れた。

 それでも何故か次につぐものマンションを訪問する時、立ち振る舞いには気をつけないといけない気がした。

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