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その体に出会いと別れの挨拶を ~あの日、憑依した少女にもう一度出会うために~  作者: 炭本 良供
三章「名状しがたい感情」

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一話『不朽たる我が箱庭』

 示杞との出来事があってから数日後。

 『奪回者(リキャプチャラー)』のリーダーである森ノ千花さんに、拠点のとある部屋に呼び出された。


「それで? 用事ってのはなんだ? ん~、(フラワー)(フォレスト)でフラスト!」

「……………………」


 俺の他に名織と桃李も来ていたが、ご覧の有り様。


…………ほんと、お前のその度胸は尊敬するよ…………。


 通常運転の名織に、桃李も森ノさんも沈黙してしまっている。

 桃李はやれやれなどと思ってそうな表情をして。

 森ノさんは、変なものに出くわしたような表情をしていた。


「…………それはそうとして」


 けれど、自らのすべきことを思い出したかのように彼女は話し出す。


「『略奪者(プランダラー)』を打倒する準備は整った」

「!」

「今から計画の詳細を伝える」


 その内容は、『天の癇癪』の原因となった者たち――――『略奪者』打倒の計画。

 ようやく始められるんだ。

 俺の体、示杞、そして、つぐものための戦いを。


「む。外が騒がしいな」


 だが、その話をしようとした時だった。

 拠点の外から聞こえる騒音。


「森ノ。どうやら、()()()()が来たようだ」

「敵襲か!?」

「ああ、そうだ。示杞」

「はあ。またか」


―――――また?


 森ノさんの言葉が少し気にかかる。

 俺は敵襲に焦っていたのだけれど、どうやら前例があるらしい。


「良いだろう。()()()()がどこまで使えるか試してやろう、桃李」

「そうだな、それがいい」


 俺の頭の中には疑問符しかない。

 それでも、話はどんどん進んでいく。


 森ノさんは少し歩いて、よくわからない台に立つ。

 そして、これまた、よくわからない装置を身につける。

 その瞬間、モニターのようなものが浮かび上がり、周囲の雰囲気が一変する。


 彼女の手には稲妻が如く光が走り。

 辺りが地震が如く揺れ出す。


「っ。一体何が!?」


 俺は何が起きているのか理解できなかった。


「示杞、大丈夫だ」


 桃李はそう言うけれど、この異常の中で混乱しないわけがない。

 だが、俺が落ち着く暇もなく、彼女は唱え出す。


「此処は我が箱庭。管理するは我が勤め。故にお前たちも我が手中にあり」


 さらに揺れも手から出る光も激しくなる。

 光も揺れも極限まで強くなった瞬間。

 何もかもが止まり、辺りが静寂に包まれる、


「『不朽(My)たる我が(Immortal)箱庭(Garden)』!」


 そして、蓄えられたエネルギーが放出される。

 鼓膜を震わす雷鳴

 全身で感じる振動。


 何をしているのかは全くわからない。

 けれど、雷鳴が止むと、外の騒音も消え失せていた。


「何が起こったんだ…………敵は?」


 未だ理解が追いつかない。 


「桃李。無事終えた。後は任せた」

「ああ、わかった」

 

 そんな俺をよそに桃李と森ノさんは話を進めていく。

 桃李は拠点の入り口の方へと向かっていった。


「……………………え?」


――――どういうことだ? 無事終えた? 敵は? 


「気になるなら、見に行ってくるが良い。桃李についていけ」

「………………………」


 森ノさんの言う通り、敵がいるはずのところにいけば何かわかるかもしれない。

 そう思って、俺は桃李を追いかけていった。



 ※ ※ ※



「――――どうなってんだ」


 拠点の入り口の平野。

 そこには5、60人もの人がまとめて倒れていた。

 戦闘が行われていた痕跡は、まったくなく。

 敵の体には怪我もない。

 ただ意識が失われている。


――――これを、さっき森ノさんが?


 やはり、先ほど行われていたことはただ事じゃなかった。


「あ、あはは。もうわけわかんないなこれ」


 理解し得ぬ状況に、俺はもう笑うしかない。

 唯一理解できたことは、俺がとんでもない人の仲間になってしまったということだけだ。

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