一話『不朽たる我が箱庭』
示杞との出来事があってから数日後。
『奪回者』のリーダーである森ノ千花さんに、拠点のとある部屋に呼び出された。
「それで? 用事ってのはなんだ? ん~、花と森でフラスト!」
「……………………」
俺の他に名織と桃李も来ていたが、ご覧の有り様。
…………ほんと、お前のその度胸は尊敬するよ…………。
通常運転の名織に、桃李も森ノさんも沈黙してしまっている。
桃李はやれやれなどと思ってそうな表情をして。
森ノさんは、変なものに出くわしたような表情をしていた。
「…………それはそうとして」
けれど、自らのすべきことを思い出したかのように彼女は話し出す。
「『略奪者』を打倒する準備は整った」
「!」
「今から計画の詳細を伝える」
その内容は、『天の癇癪』の原因となった者たち――――『略奪者』打倒の計画。
ようやく始められるんだ。
俺の体、示杞、そして、つぐものための戦いを。
「む。外が騒がしいな」
だが、その話をしようとした時だった。
拠点の外から聞こえる騒音。
「森ノ。どうやら、アイツらが来たようだ」
「敵襲か!?」
「ああ、そうだ。示杞」
「はあ。またか」
―――――また?
森ノさんの言葉が少し気にかかる。
俺は敵襲に焦っていたのだけれど、どうやら前例があるらしい。
「良いだろう。あの装置がどこまで使えるか試してやろう、桃李」
「そうだな、それがいい」
俺の頭の中には疑問符しかない。
それでも、話はどんどん進んでいく。
森ノさんは少し歩いて、よくわからない台に立つ。
そして、これまた、よくわからない装置を身につける。
その瞬間、モニターのようなものが浮かび上がり、周囲の雰囲気が一変する。
彼女の手には稲妻が如く光が走り。
辺りが地震が如く揺れ出す。
「っ。一体何が!?」
俺は何が起きているのか理解できなかった。
「示杞、大丈夫だ」
桃李はそう言うけれど、この異常の中で混乱しないわけがない。
だが、俺が落ち着く暇もなく、彼女は唱え出す。
「此処は我が箱庭。管理するは我が勤め。故にお前たちも我が手中にあり」
さらに揺れも手から出る光も激しくなる。
光も揺れも極限まで強くなった瞬間。
何もかもが止まり、辺りが静寂に包まれる、
「『不朽たる我が箱庭』!」
そして、蓄えられたエネルギーが放出される。
鼓膜を震わす雷鳴
全身で感じる振動。
何をしているのかは全くわからない。
けれど、雷鳴が止むと、外の騒音も消え失せていた。
「何が起こったんだ…………敵は?」
未だ理解が追いつかない。
「桃李。無事終えた。後は任せた」
「ああ、わかった」
そんな俺をよそに桃李と森ノさんは話を進めていく。
桃李は拠点の入り口の方へと向かっていった。
「……………………え?」
――――どういうことだ? 無事終えた? 敵は?
「気になるなら、見に行ってくるが良い。桃李についていけ」
「………………………」
森ノさんの言う通り、敵がいるはずのところにいけば何かわかるかもしれない。
そう思って、俺は桃李を追いかけていった。
※ ※ ※
「――――どうなってんだ」
拠点の入り口の平野。
そこには5、60人もの人がまとめて倒れていた。
戦闘が行われていた痕跡は、まったくなく。
敵の体には怪我もない。
ただ意識が失われている。
――――これを、さっき森ノさんが?
やはり、先ほど行われていたことはただ事じゃなかった。
「あ、あはは。もうわけわかんないなこれ」
理解し得ぬ状況に、俺はもう笑うしかない。
唯一理解できたことは、俺がとんでもない人の仲間になってしまったということだけだ。




