十六話『現れた女』
「っ、お前は…………!」
目の前に立つのは、示杞を追跡して古びた店に向かった仲間の一人。
カーブのかかった黒髪ロングが特徴の大人びた女。
彼女は黒いコートに身を纏い、不気味な雰囲気を醸し出している。
広い部屋だったのをいいことに、俺が靄たちから逃げ回ってるのに対し、コイツは呑気に端で傍観してやがる。
俺が少し口調が荒くなっているのも仕方ない。
俺たちが4人であの店を訪れ、二手に分かれた時。
俺たちが行った部屋とは別の部屋で、二人で行動していたはずの仲間の男は一人で縛られていた。
つまり、コイツは裏切り者だ。
それに、ここは人気のない廃校。
目的もなしに人が来るところじゃないんだ。
そんなやつがあの靄の正体を教えるだと?
何か企んでいるに決まってる。
「あら? 良い提案だと思うけれど?」
「……………………何が望みだ?」
「望みも何も。効能も確かめられたし、終わりにしたいだけ」
「効能? じゃあ、あの液体はお前が!?」
「そうよ。でも、まだ時期尚早。だからアレには退場願いたいわけ」
「お前…………!」
「どうするの?」
「っ」
女は薄気味悪く笑う。
俺が困惑する様子を楽しんでいるのか、弄んでいるのかわからない、怪しさ満載の誘い。
それでも可能性はそれしかない。
「……ああ、わかった」
「じゃあ――――」
「けれど!」
でも、俺は条件を加える。
女の言動。それは示杞の安否を何とも思ってないようだ。
「――――示杞は無事に生還させるぞ!!」
「!」
けど、それは俺が決して譲れないこと。
俺の目的は示杞を助けることなんだ。
「……………………ええ、できるならね」
俺の言葉を聞いて、女は徐に口角を上げる。
それは、やはり得体のしれない不気味な笑み。
女の目的はわからない。
けれど、俺のやるべきことは変わらない。
示杞を靄から助け出すだけだ。
「楽しみにしてるわ。貴方があの靄を打ち倒す姿をね?」




