表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その体に出会いと別れの挨拶を ~あの日、憑依した少女にもう一度出会うために~  作者: 炭本 良供
一章「サーフェイス」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/244

二十六話『無意識の狭間』

 彼を蹴りで吹き飛ばした女は、彼が飛んでいった先へと向かう。


「?」


 彼が衝突した跡があるところまで辿り着いた時。

 上空に何か上がっていく物体を見つけた。


「何を?」


 彼が投げたものだということは察せた。

 それでも疑問が残る。


「何故?」


 意図が全くわからない。

 白旗を揚げたつもりなのか。

 もしくは罠なのか。

 けれど、彼女は進む。

 だって、戦力差は明白。

 しかも、彼は致命傷を負っているはずだから。


「――――」


 進んだ先で彼女が見つけたのは、散らばるコンテナに囲まれて、うつ伏せになって血を流している彼の体。

 その姿を見ても、彼女は油断しない。

 ゆっくりと近づき、慎重に彼の体を観察する。


「気絶して、いる」


 意識はない。

 明らかに彼女が有利な状態。

 確かにそうなのだけれども、彼女はどこか安心しきれなかった。


「!? …………蝶?」


 背後に感じ取った気配。

 敵だと思って振り向いた先にいたのは、一頭の蝶だった。



 ※ ※ ※



 コンテナヤードから少し離れた場所。


「なあ、ピチリ~。ゴビは大丈夫かな?」


 彼を見送った南陽と桃李は少しして彼の心配をする。


「信じるしかないだろう。私は戦闘向きではないし、君は満身創痍だ」

「…………そうだな」


 だが、今、戦える者は彼しかいない。 


「何、心配するな。アイツはやるときはやる男だ」


 だから、二人は彼を信じて、彼の帰りをここで待つだけだ。


 

 ※ ※ ※



 少し閑散としたコンテナヤード。

 女の前に一頭の蝶。

 別に不思議な光景ではない。


「この、違和感」 


 けれど、女はその蝶に不自然さを感じていた。

 蝶とはいえど、油断はできない。

 蝶を警戒しながら、距離を取る。


「?」


 だが、突如、感じていた違和感が消えた。


「ッ!」


 その刹那、女の背後に新たな気配が現れる。

 即座に振り返り、接近していた拳を受け止める。

 攻撃を繰り出してきたのは、コンテナヤードの警備員と思しき人間。

 何故か、女に襲い掛かる。


「――――」


 そして、襲いかかってきたと思えば、警備員は脱力して意識を失う。


「これは……」 


 次は蜂の大群に襲われる。

 時間が経つ、また動かなくなる。


 異なる人間に襲われる。

 そして、その人間の意識は途絶える。


「一体、何が起こっ、て――――」


――――女が数多の生物に気を取られている最中。

 女の敵である()()()がピクリと動く。


(上手くいっている…………っ、少しキツいが、あともう少し耐えれば)


 彼は激痛が走る傷口を抑えて、少し()()()()()また眠りにつく。

 


 ※ ※ ※



 数分前。

 拳銃をある方向に投げ捨てた俺は、ある装置を自らに身につけた。


 ししおどし。 

 日本には竹に水を流し、その重さで竹を上下させる物がある。

 それを応用した装置。

 そこらに散らばっている材料をかき集め、竹の代用として、コンテナの水によりそれを上下させる。

 それが向かうは俺の傷痕。


 俺の能力には、一度憑依するといつ戻るかわからないという弱点がある。

ならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 傷口を刺激し、無意識の状態を解除させる。

 そして、元の体に戻る。

 これは、捨て身の攻撃であり、最後の手段であった。



 ※ ※ ※



 俺は十回、二十回と憑依し続け、ある場所に女を追い詰めていく。


――――コイツは一般人を攻撃するのも、不必要な殺生をするのも躊躇っている。


 女が一般人や虫に憑依した俺に対してとる態度は、敵対よりも困惑が強かった。

 俺たちに先ほどまで披露していた、俊敏性、攻撃力がなかったのだ。

 思っているより悪者というわけではないように見える。


――――けど。


 止めることはできない。

 今、女を自由にすれば名織や桃李に被害が及ぶ。


――――悪いが今はここを切り抜けるときだ!


 再びししおどし装置が作動するまでの時間を数える。 

 次が最後の憑依。


――――3、2、1――――0!


「今だ!」


 元の体に戻った俺がいるのは、捨てた拳銃が落ちている場所。

 拳銃を這いつくばりながら手に持ち、追い詰められた女に構える。

 女は俺が最初にいた方向の警戒はしていても、移動した俺の攻撃を防ぐことはできまい。

 引き金をかけた手は迷うことはない。

 今は仲間たちを守るために。

 決意を込めて。

 その引き金を、引く。

 

 繰り出された弾丸は、女の前で拡散し、網を放つ。


 その名も電撃拘束弾。

 放たれた網は対象を捕獲し、一時動きを止める。

 そして――――


「う、あァ!」


 その網には千花の能力のような作用――――全身に走る激痛、吐き気、目眩が女を襲う。

 女は静止し、隙が生まれる。


 そう。


「今だ!」


 俺が()()()()()()()()()が。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ