二十三話『解き放たれた体』
「名織、大丈夫か?」
「――――ん、あ、ああ」
南陽は桃李の声で目を覚ました。
「凄い有り様だなこれは」
目的を果たし、扉の奥から帰ってきた桃李は、目にした光景に驚愕する。
周囲の壁は人一人分ぐらいの穴が開き、床も壁もボロボロになっていたのだ。
「悪いな、手加減出来ないんだ」
建物を破壊した張本人である南陽も、ただで済んでいない。
いくら南陽といえど、立つのもやっとの様子。
桃李はすかさず、手を差し伸べる。
「いや、大丈夫だ」
「そ、そうか?」
「ああ、行こう」
それでも、南陽の頑丈さ故か彼は一人で歩み始める。
そして、少しふらつきつつも、憑依で抜け殻となった仲間の体を背負った桃李とともに建物の外へと脱出した。
※ ※ ※
「――――ん、ここは」
ふと、俺は目を覚ました。
体が少し揺れている。
「ゴビ起きたか!」
周りには名織と桃李。
どうやら車の中のようだ。
「あれ、確か憑依していたはずじゃ……?」
高層ビルで憑依をして桃李と話していたはずだったのに、急に車の中に移動している。
そんな状況に混乱せざるを得ない。
「あ、ああ。そうだったな!」
※ ※ ※
「――――そんなことが……ごめんな、何も出来なくて」
何が起きていたのか、名織たちから聞いた。
俺が憑依した後、そんなことが起きていたとは。
「いや、ゴビは活躍してたぞ! ゴビが憑依してくれていたから相手が弱体化してたんだ」
「そ、そうなのか」
名織の言う通り、少しでも役に立てていたのであればよかった。
「おう、ゴビの憑依がなかったらとんでもない相手だったはず――――」
「!?」
突如、俺たちの鼓膜を震わす爆発音と滑空音。
車体が傾き、倒れかける。
「桃李! 何が起きた!?」
俺は真っ先に桃李に問いただす。
「これは――――」
「誰かいるのか!?」
車窓から桃李が見ている方向を俺も覗く。
車をも超える音のような速さ。
背中の翼のようなものによる、空中の異常な機動性。
俺は、考えた。
――――もし、名織の言う通り、彼女を俺の憑依が押さえつけていたとしたら、憑依が終わった今は――――
「怪物だ」
――――彼女の本領発揮なのだと。




