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その体に出会いと別れの挨拶を ~あの日、憑依した少女にもう一度出会うために~  作者: 炭本 良供
一章「サーフェイス」

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二十話『PICMの情報を求めて』

「早速だが、そなたたちに頼みたいことがある」


 俺、桃李、名織の三人は森ノさんに呼び出され、集会所へと集まった。

 何やら俺たちにしてほしいことがあるらしい。


「奴ら、『略奪者(プランダラー)』を打倒するために必要なことだ」


 『天の癇癪』によって多くのものが奪われた。

 それが、今、敵対する組織の呼び名、『奪回者』の由来だという。

 そして、自らが取り戻す者、『奪回者(リキャプチャラー)』だと。

 その組織を倒すためにすることだと聞いて、俺は唾を飲む。


「それで、私たちは何をすれば良いんだ?」


 この中で森ノさんと最も繋がりのある桃李がその手段の詳細を尋ねる。


「今から指定するところに行ってもらう」



 ※ ※ ※



「たっっか…………」


 森ノさんに指示されて辿り着いたのは、見上げるほどの高層ビル。


「こりゃ、上るのも大変そうだな!」


 名織はそう笑い飛ばすが、笑い事ではない。

 俺たちが目指すのは、ここの最上階。

 それまで、監視カメラに映らないようにしないといけないだろう。


「……監視カメラもあるだろうし、骨が折れるな」

「いや、示杞。どうやら監視カメラはないらしい」

「そうなのか?」

「だが、気をつけろ。私たちがこれから得ようとしているものは重要なものだ。何かしらの方法で厳重に守られてはいるはずだ」

「ああ、わかってる」


 監視カメラがないとは言えども、油断はできない。

 優秀な警備員がいるか。それとも何か仕掛けがあるのか。

 少なくとも何もないということはないだろう。

 だって、俺たちの目的は、国民の生活必需品。


「じゃあ、早速。『PICM』の情報を奪いに行こう!」


――――『PICM』の情報を得ることなのだから。



 ※ ※ ※ 



「あの~、ちょっといいですか~?」

「――――? どうかしましたか?」


――――今だっ!


 名織が入り口の前に立つ警備員の隙をつくり、俺と桃李はビルの中には案外容易に侵入できた。


(よし、ここからエレベーターに)

(示杞、情報によるとあちらだそうだ)


 俺たちは身を潜めつつ、最小限のやり取りでエレベーターに乗り込む。


「50階って……」

「エレベーターでも長そうだな」


 このビルに入る前からわかってはいたが、高すぎる。

 エレベーターが最上階に辿り着くまで結構時間がある。


「…………」

「…………」

「なあ、桃李」


 丁度いいから、今ここであの事を聞いてみる。


「何だ?」

「つぐものことなんだが」

「…………」


 それは、ずっと気になっていたつぐものこと。

 俺がそれを口にした瞬間、桃李の表情が真剣なものに変わる。


「お前はつぐもは『別件』って言ったよな」

「ああ、そうだ」

「どういうことなんだ?」

「彼女は『天の癇癪』の被害者じゃない」

「!? じゃあ何で!?」

「彼女は家族から危害を加えられ、その過程で記憶を失った」

「っ!」

「そのため、こちらで預かっていた」

「じゃあ、今のつぐもは!?」

「私にもわからない。彼女に()()()()()()()()()


 『天の癇癪』の被害者とは異なり、家族によって記憶をなくしたつぐも。

 そんな彼女が今の状態となった理由は桃李にもわからないらしい。


「彼女は感情を取り戻しつつある。けれど何かが欠けている。それを掴むためにも、何としてでも『略奪者』を問い詰めるんだ」

 

 桃李が珍しく感情的。

 桃李のつぐもたちを助けたいという気持ちが伝わってくる。


「すまん、冷静さを欠いた」

「大丈夫だ。必ずつぐもたちを救おう」


 桃李のそんな気持ちが、俺の気持ちをも高めさせてくれる。 

 つい、森ノさんに渡された拳銃を握り締める。


『示杞といったか。これを渡しておく。いざとなったら使え。使い方は――――』


 俺の能力は戦闘向きではない。

 そんな俺に森ノさんが渡してくれたもの。

 けれど、使い捨てだからチャンスは一度きり。

 しっかりタイミングを見極めないといけない。


 

――――少しして、エレベーターが止まる。

 扉がゆっくりと開き、その階の様子があらわになる。

 俺たちは注意深く周りを確認しながら、エレベーターから出る。


――――誰も…………いない?


 周囲には人一人もいなかった。

 『PICM』を運用するために、国民の位置情報を含めたプライバシーに関する情報がここに集められているはず。

 そんな重要な情報を管理する場所に誰もいないはずがない。


「なあ、桃李」

「ああ、油断するな。何かある」


 桃李に言われた通り、注意して、先に進む。

 エレベーターから降りたところを左折すると、鍵のかかった頑丈な扉があった。


「示杞、ここは見張っている。中から開けられるか?」

「? あ、ああ! わかった。試してみる」


 一瞬戸惑ったが、桃李の言ったことを理解した。

 これは、俺にしかできないこと。

 鍵がかかっているのであれば、その鍵を開けられる内側の者となればいい。

 扉の向こう側に生物がいることが前提だが、やってみる価値はある。

 

 位置は前方5メートル以内。

 方向、距離を合わせ、タイミングを見計らう。

 3、2、1―――― 


「桃李頼んだ!」

「任せろ!」

「ゴフッ」


――――0。


 気絶方法は親友の腹パン。

 俺の意識は途絶え、能力の発動条件を満たしたのであった。


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