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その体に出会いと別れの挨拶を ~あの日、憑依した少女にもう一度出会うために~  作者: 炭本 良供
一章「サーフェイス」

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十九話『数多の同志』

「――――()()()()()()()()()()()()

「っ! 何を!?」


 俺と同じでつぐもを救いたいのだと、桃李は確かにそう言った。

 

 でも、俺がつぐもに憑依した時に体験したカプセルのようなものが気にかかる。

 助けたいのであれば、何でつぐもはあの激痛を味わう必要があるのか。

 それが疑問だった。


「…………本当らしいな。でも」


 だけど、目の前の桃李が嘘をついているようには見えない。

 これでも、中学生の時仲良くしていた親友だ。

 桃李が本当につぐもを助けたいと思っていることは確かだ。

 それでも、疑問は残ったまま。


「混乱するのも無理はない。実際私も驚いている。示杞もつぐもを助けようとしていたとはな」


 全くもって普段通りの表情だが、桃李も混乱しているらしい。

 桃李も俺が敵だと思っていたわけだから、混乱もするか。 


「正確には、救いたかったのはつぐも()()だが」

「たち?」

「示杞、『天の癇癪』は知っているだろう?」

「ん、ああ」


 『天の癇癪』。

 十数年も前に突如起こった、原因不明の悲劇。

 数十万にも上る人々があらゆる場所で息絶えた。

 

「私達はその被害者の一部を保護している」

「っ、無事だったのか!?」

「…………生憎と、無事ではないな」


 その人々の一部が、桃李たちの下にいるらしい。

 ただし、万全の状態ではない様子。


「彼らは()()()()()()()()()

「どういうことだ?」

「彼らを生き返らせられるかもしれない方法がある。私達はそれが為されるまで、その()を保護している」

「…………」


 保護している『天の癇癪』の被害者を生き返らせたいのはわかった。

 だけど、俺が気になるのは生きているつぐものことだ。


「……じゃあ、つぐもはどうなんだよ!? 今も生きているじゃないか!」

「つぐもはこれとは別件なんだ。だが、その話はまた今度に」

「……わかった」


 事情があって話せないのか、話が長くなってしまうのか。

 桃李はつぐもについての話を切り上げた。


「示杞、ともかくここから出よう」

「良いのか?」

「彼女には既に伝達している。問題ない」

「? わかった、なら今すぐ出よう」


 鉄格子から解放され、俺は集会所のような場所へと戻る。


「――――すまぬな。我の早とちりだったようだ」


 戻った俺と名織の前に立つのは彼女。

 俺たちが為す術もなかった能力を司る者。


「い、いえ。こちらも勘違いをしていたみたいです」


 先ほどまでは敵だったものの、最早、戦意などない。

 ひとまず、俺と名織、彼女との間で情報共有をした。

 彼女――――森ノ千花(もりのちはな)さんは、ある経緯で、俺たちに見せた恐るべき能力を得ることになったらしい。

 けれど、詳しくは話してくれない。


「話を変えるが、我らは今ある奴らと敵対している――――『天の癇癪』を引き起こした張本人とな」

「!?」


 『天の癇癪』。

 先日、街を焼き付くした男が口にした、かつての大事件。

 そして、その被害者を桃李たちが保護していると先ほど桃李から聞いた。


――――こっちにも関係していたのか。まあ、桃李たちが『天の癇癪』の被害者を復活させたいなら、それも当然か。


 何となく、話の流れはわかってきた。

 敵対するものについて話したってことは――――


「示杞、誤解しておいて悪いんだが、ここを知った以上、仲間になれ」

「ならないと?」

「さっきの牢屋行きだ」

「それ酷くない!?」


――――協力しろってことなんだろうけど。


 俺たちに拒否権はなかった。 


「…………仕方ないか。なるよ、仲間に」

「ありがとう、示杞。まず、詳しい話は明日だ。もう暗くなってきたからな。部屋を貸すから今夜はそこで暮らせ」

「あ、ああ」


 

 ※ ※ ※ 



「心地いい……」


 桃李に言われた部屋のベッドで俺は仰向けになっている。

 名織は隣のベッドで既に寝ている。


――――今日は色々大変だったから、しょうがないか。


 つぐもを助けるために研究所に乗り込んだはずが、俺と彼らの目的は同じで仲間にまでなってしまった。


――――にしても、つぐもを助けようとしている人たちがこんなにもいたなんて。

 

 共に戦う人がいなかったときの不安や恐怖。

 つぐもを助けるという信念があったとしても拭いきれるものではなかった。

 だが、こうして仲間ができるとどこか安心できる。


――――よし。明日からも俺に出来ることをしていこう。


 その安心が俺の気力へと繋がる。

 こうして、俺も疲れを癒すために目を閉じ、意識をどこかに飛ばした――――。


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