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おにいちゃん誕生②

「はわわっ!わたくしったら、奴らの差し金かと思ってしまいましたわっ」


美少女が戸惑う海斗に気付いて真っ赤になって慌てふためく。


「私は転生の女神、カナエル。貴方…転生したのではありませんの?」


美少女がコタツから出ないまま胸に手を添え礼儀正しくお辞儀し、伺うように上目遣いで見つめてきた。

色々ともう遅い。

そんな気持ちが海斗には芽生えていた。


「いや…しませんでしたが…?」


「まあ、どうしましょうエラーかしら?」


カナエルがオロオロとしながらノートPCを取り出し起動する。

画面にWindows97のロゴが映し出された。


古代の機械だ…これは時間かかるぞ…


海斗は心の中で覚悟したが、やはりそのまま暫しの時が過ぎ去った。

扉の外から聞こえる優しいが同じ言葉を繰り返す女神ボイスを聴きながら、ボロ部屋の棚に置かれたダルマや壁の渋いペナントの数々をぼんやりと眺めながら時間を忘れ始めた頃、やっとのことでお目当てのデータに辿り着いた様だった。


「…分かりましたわ!貴方、徳々ボーナスの対象者でしたのね!」


謎の文字列を追っていたカナエルの顔が晴れる。


「安い焼肉みたいすね…なんなんですかそれ…」


「徳々ボーナスとは、生前にある一定の徳を積んだ方が対象のチート転生ボーナスなのです」


俺そんなに徳積んだのか?


海斗はもはやこのカナエルやこの世界全てに疑心暗鬼だった。

自称女神が続ける。


「貴方は前々々回でかなりの徳を積んだ様ですわ。そのボーナス対象ジャンルは…」


急にタイプ音がガチャガチャと響き、海斗は思わず画面を覗き込んだ。


「これは…」


ピンボールの画面だ。

ボールがワームホールに突入した。よし、チャンスだ。ボールが勢いよく噴射される。

だが、カナエルの完全に下手な者のキー捌きはこのチャンスをものにできなかった。連打虚しくボールは凄い速さでアウトホールに消え、ゲームオーバーとなった。


「俺のボーナスどうした!?」


海斗は思わずカナエルの頭にチョップを加えた。


「はわっ!私ったら、お許しくださいませ…ええと…貴方のボーナスジャンルは『おにいちゃん』、特典は『おにいちゃんLv.99』ですわ」


「おにいちゃん…?」


「はい。おにいちゃんです」


海斗は気が遠くなり始めた。

おにいちゃん、それは一人っ子の海斗には全くと言っていいほど馴染みが無かった。


どこでどう徳が貯まったんだ?


それすらも心当たりがない。


「おにいちゃんとは、この宇宙の大天使に選ばれし、世界に平和をもたらす勇者…貴方にしか救えないものがある!」


カナエルが説明になっていない胡散臭いキャッチコピーと共にガッツポーズをする。


「あの、辞退とかってできるんですか?」


海斗が恐る恐る聞く。

そりゃそうだ。

なんなんだ、急におにいちゃんとか勇者とか。


「はい、出来ますが…」


カナエルが積んである桃の箱を指す。


「辞退したものは転生放棄とみなし、桃になる定めとなります」


「えっあれ人だったの!?!?」


海斗の覚悟は決まった。

ストロングミリオンを仰ぐカナエルの傍に膝をつく。


「おにいちゃんLv99、やらせてください!」



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