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おにいちゃん誕生①

笹川海斗(ささがわかいと)は死んだ。


なぜ死んだかは、この世にはダンプトラックに跳ねられたり人に刺されたりいろんな死因が満ち溢れているから、好きな他人の死因を選んで想像してほしい。


とにかく主人公である海斗は死んで、気付いたら真っ白な空間にいた。





≪笹川海斗。貴方は寿命を全うしたので今ここにいるのです≫




麗しい鈴のなる様な優しい声がどこからともなく聞こえてくる。


「はあ…」



海斗は仰向けに倒れたまま返事をした。

やっぱり俺は死んだんだな。



≪安心してください。ゆっくり目を閉じて……今までの人生を振り返るのです≫



言われるがままに目を閉じる。

全ての心配ごとから解放された、穏やかな気分だ。



人生か……じゃあ今までの人生をふりかえってみ

≪悪くない人生だったでしょ?さあ、これから新しい人生が始まります≫



「早くね?」


海斗は起き上がった。

勝手な声だ。

悪いか悪くないかも考えられなかった。



≪再び目を閉じるのです………希望に満ちた、新たな夜明けが貴方をまっています…≫



海斗が言われたままに再び目を閉じる。



転生ってこんな感じで結構早いんだな。

まあそうか。

日々いろんな命が生まれたり死んだりしているんだもんな…

おれもこのまま次の人生へ…




≪笹川海斗。貴方は寿命を全うしたので今ここにいるのです≫



「えっ俺また死んだの!?」


海斗が今度こそ起き上がって立ち上がった。


「てか転生してねえだろこれ!」


周囲は変わらず先程までいた空間で、転生した形跡すらない。

麗しい鈴のなる様な声がまたも聞こえてくる。



≪安心してください。ゆっくり目を閉じて……今までの人生を振り返るのです≫



ループしてる……?


先程からの不自然な間、繰り返す声…



海斗は嫌な予感がして声を頼りに白い空間を走って行くと、地面にスピーカーに繋げられた音楽プレイヤーが放ってあった。


「やっぱり…」


声はここから流れている様だった。


「なんだこの変な空間!何かのドッキリかよ…訴えるぞ…」


辺りを見回すと、壁らしき場所にうっすらと扉が見える。

その奥から僅かだが誰かがいる音が聞こえてくる。


「くそ!お前か俺をこんな場所に連れてき…」


海斗は扉を蹴り開けたが、その先の光景に言葉を失った。



四畳一間の畳部屋に、古めかしいコタツが一つ。

そこには明らかに女神と言った格好をしているピンクの髪の美少女が入っている。

その脇には大量の桃の箱。

仙界産と書いてある。

美少女は鬼の形相でそこから桃を取り出し剥いて食べ散らかしてまた取り出して剥いて食べ散らかして…をもの凄い勢いで繰り返している。

そして時折作業の合間に卓の上に並べてある

「ストロングミリオン」

と書かれた長い缶の酒をぐびっと飲む。

職人さながらの手捌き口裁きだ。



何この人怖い…!

よく分からない執着が怖い…!



海斗の身体にワナワナと震えが起き始める。

その震える手で扉に手を掛けると、予想以上に扉が軋む音を立てた。


美少女が手を止め海斗を振り返った。

目があってしまい、暫くその緊張状態が続く。


「あの…すみません、俺…

「来週まとめてお支払いするっつったろ!?!?!?!?」



海斗の声を遮って美少女が音楽プレイヤーからの声よりも遥かにドスの効いた声で怒鳴った。




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