第四話 孝攵革便!?
紹介の多い回になってしまいやした。会話をここまで続けたのは
初かも……。どうぞ。
暖かな春の日差しが差し――過ぎ、軽やかな風が吹き抜け――過ぎ、新たな生命の芽吹きを感じ――ることの無い今日この頃。この荒廃し切った元王宮、現廃墟もどきで奇しくも俺は教鞭を執ることとなっている。
施設として、とてもじゃないけど安心できるとは言えない。が、それは施設面でのみ考えた場合のことだ。陣営の面々は心配無用。
では、我等勇者アスカ陣営の面々を御紹介しよう。
まずは、勇者陣営参謀兼総合教育係はこの俺、鈴木良正。主にずっとアスカの隣に付いて共に行動をとり、支援・援護をする。戦闘においてもその他日常生活においても。
いや、この言い方だと誤解が生じ、それが即刻解かれなかったなら……俺は社会的に終わってしまう。オワコン状態になってしまうので、訂正を含めつつ説明をすると、ずっとというのは全ての行動において常にということではない。当然、風呂や御手洗、着替えや睡眠のときは別である。
では、それ以外は一緒か。
いや、そんなことはない。断じてない。個別で自由時間を持っているので、そのときは互いが集団から個になり、健やかな時を過ごす。と、俺の訂正と説明はこの辺で終いにして次の紹介といこう。
俺とアスカを召喚した召喚士たちの長、召喚師長ミスリル・ゴルベール。いつもローブを羽織ってフードをしており、よく容貌も見れない。みんなによると、ぼさぼさの灰を集めたような髪に少年のような顔つきだそうだ。
ある程度の魔法なら言霊で模倣して使え、陣無しや詠唱破棄もおちゃのこさいさい。専門は霊術で、降霊術や除霊術、精霊術を使えるらしい。
その次、ヨーゼフの側近、宰相シェイルベル・ヘムズ。高身長イケメンという印象。墨で塗ったような黒髪を腰元まで伸ばしている。こいつは元々、宮廷執事をやっていたらしく、その縁で宰相に任命されたのだとか。
宰相としての手腕はもちろん、執事としての腕も宮廷トップクラス、つまりダイアストップクラスで家事や教育、護衛まで言の波・言霊無しでこなす完璧人間だそうだ。更に言うと、戦闘でも言の波を使うのはとても珍しく、基本は自らの身体能力のみで戦っているとか。ほへー。凄いや。
最後に、王宮騎士団長フェルナンド・セルバドス。その猛々しく燃える心のような真紅の短髪に双眸を持っている。こいつは言の波を使った剣術、言霊と剣術の融合技、言霊剣を編み出した張本人にしてその頂点に君臨する者。
剣術の名家であるセルバドス家に生まれながら、その才に驕らず、剣術の鍛錬と言の波の学習を並行して行い、高みを目指し続け、頂へと辿り着いたのだ。
と、ここまでの説明を受ければ分かると思うが、全員常人離れしている。世に言う「超人」という人種なのだ。「人知を超えた」者たちなのだ。俺に入る隙間など無いと思うだろう。
でも、心配無用だ。何故なら俺は、「超人」ではないからだ。「こいつは危険だ、逃げよ」とか思っただろう。超人でないならどうしようもないと思っただろう。どうしようもあるのだ。
だって、俺は「超神」だから!
「またまた。いよいよやばいよこれは」とか思っただろう。この「超神」は「神をも超えた」者という意味で、俺にとっての最適解だ。
是非、この俺を崇め奉るときには「超神。それは鈴木良正。」とでも書いておいてくれ。
元筋に戻ろう。何を言いたくてこの三人を紹介したか。そう、この陣営ならあのバカ勇者をまともに教育していくことができると言いたかったのだ。まあ、「充実の講師陣」的なことを宣う○○塾やら○○ゼミナール、○○予備校と思ってくれていい。
話をまとめると、各専門を突き詰めてきたその頂に鎮座する者たちが集まったのだから、まともに教育ができると予想される。となれば、俺は教鞭をとりやすいというわけだ。
では、早速授業を始めよう。
「魔法で陣無しでできるものは、言霊でもできるってことで良かったですよね?」
俺は自らの情報に誤りがあるか確認する。
「えぇ。大体は合っています。理論上はできるはずですよねぇ。言の波は魔力を返還したもの。言わば、言霊は魔法と同等ですからねぇ。ふふっ。でもですよぉ、その魔法を良く理解していて、なおかつ言霊を使いこなせなければ無理なんですねぇ。これが」
俺の質問に、彼――ミスリル・ゴルベールは細かく説明する。
「ん? なんだ? お前、授業始めるって言ったよな?」と思っているだろうから説明すると、アスカが教師を依頼したのはあくまで俺である。ミスリル、シェイルベル、フェルナンドの最強三人衆ではない。
したがって、俺が全授業を担当して総合的に教育してやらねばならないのだ。だとしたら、やれることはただ一つ。俺が最強三人衆から学びに学んだ成果をアスカに学ばせることだ。
流石にまだ分からないことも多くあるが、俺がしっかり理解したものであれば、もっと噛み砕いて学ばせてやることができるという自信はある。
それと、俺らの元いた世界が世界線が一緒なら、時間軸だけがずれているのだとすれば、同言語使いとして語彙力を上昇させられる。実戦形式は遠く及ばないだろうが。
そういうことで、まずは授業を受けるところから。
最初はミスリルの「魔法学と霊術」、次はフェルナンドの「言霊学と剣術」、最後にシェイルベルの「家庭科と体術」というコマのローテーションである。そして、三人衆からの課題にそれぞれ合格したら、晴れてアスカの教師生活の始まりとなる。ざっと説明し終えたので、続きを。
「そのためのこの授業ってことですよね?」
「えぇ。まぁ、そうなりますねぇ。ところで、どうしてそんなに堅苦しく話してくるんです?会話しづらくて仕様がないです」
「それはお互い様だ。じゃあ、ここからは対等にな。俺のことは、よしまさって呼び捨てにしてもらって構わない。俺もあんたのことをミスリルって呼び捨てにするし、敬語だって止めだ」
「……わかりましたよ、よしまさ。でもですねぇ、完全に敬語を無しにするなど、私はできませんねぇ、きっと。口癖も相まってやはりできませんねぇ」
「あ、ああ。それならそれで別にいいんだ。無理にああしろこうしろなんて言うつもりはないよ。ただ、楽にしてくれれば、リラックスしてくれれば、俺はそれでいいんだ」
「そう言って貰えるとありがたいですねぇ。ではよしまさ、授業の続きといきましょうかねぇ」
「ああ、そうだな。授業再開して、ちゃっちゃと進めよう。そして、課題合格して教師になってアスカに教えて。その後はダイアスのために闇に蝕まれた人々を救って、そして、そしてっと……でゅふふ、でゅふふふふ、でゅふふふふふふ…………」
「ま、まさよし……何だか気味が悪いですねぇ。気色悪いの方が良いでしょうかねぇ……ほら、ほら。こちらへ戻ってきなさい。ほーら、ほーら。こっちですよぉ」
「でゅふふふふふふ、でゅふふふふふふ、でゅふふふふふふ………
ああしてぇこうしてぇ後はこうしてぇ……でゅふふふふふふ…………」
「仕方ないですねぇ。では、」
――冷静沈着
「これで治ってくれてますよねぇ。流石に霊術は使いたくはないのですがねぇ。お、起きましたねぇ」
「――んあ、あ、す、すみませんでした。授業中にも関わらず、ずっと妄想を膨らませて、続けて……」
「よしまさ、け・い・ご」
「あ、ああ、すみません。約束まで破ってしまって……」
「よしまさ、またですよぉ」
「すまん。授業中なんだと思っているとふとした時に出るもんだな」
「そうかもしれないですねぇ。ふふふっ」
「「ふふふっ。ふはははっ。ふはははははっ……」」
俺はこの時、初めて大笑いする彼を見たのだった。
すみませんでした。ろくに話が進まなかった。許してください。