表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こうしてボクは今に至る  作者: 朱本来未
【4a】『浮遊する鏡像』
24/41

◆類似の名前

翌11日、今日は特にこれといって予定はなかった。何もせず過ごしても良かったのだが、少し気になることがあり私は公立図書館へと赴いていた。天野が晴桜で調べようとしていた事の発端となった出来事が気になったのだ。例の集団自殺に関する案件。ニュースで報道されていたので、おぼろげにだが概要は知っている。しかし、天野が調べようとしていたのはそれに関わる何か別のことのようだった。


晴桜に行ってからというもの天野からは何の連絡もない。こちらから連絡すればいいだけなのだけれど、躊躇わせるなにかがあった。明後日には晴桜へ行く約束を結城と取り付けている。だから、天野がなにか調べてほしいことがあればついでにと思っていた。と言うのは建前で、結城との話題作りの一環だった。彼女と共通の話題と行ったら、今のところ天野についてくらいしかないのだ。新たな選択肢としての話題にしては好ましくない内容だけど他に何も思いつかなかった。


図書館内は空調が効いていて心地よく過ごしやすい。自宅の部屋で蒸されているより、よほど快適だった。私は早速過去の新聞記事を探すことに着手した。あの事件のニュースが報道されていたのは、確か2月下旬頃だったと思う。少なくとも3月でないのだけは間違いなかった。正確な日付がわからなかったので、2月末日から遡っていった。そして程なくして記事は見つかった。


概要としては、4名の女子生徒が通う学校のOGが所有する自動車で練炭を使った集団自殺をしていたということらしい。学校名こそ伏せられていたが、4名が通っていた学校というのは晴桜でほぼ間違いないだろう。発見された車両は、晴桜の直ぐ側の雑木林の中で見つかったようだった。


記事では、学校名は伏せられていたが、命を絶った4名の生徒の名前ははっきりと記載されていた。その4名の中に見知った人物と類似した名前を見つけた。『結城桜子』という名の人物。その子は私たちと同学年だった。


あまりにも似た名前だけに、結城の親戚か双子の姉妹だったりするのだろうか。そう考えた時、晴桜の図書館で天野が見つけたメッセージカードが脳裏によぎった。『らっこ』なる人物はもしかしたら、この桜子なんじゃないかと思ったのだ。あの宛名を目にした結城は、顔を曇らせていた。彼女の愛称が『ねこ』ということもあってか、関連性が全くないとは到底思えなかった。


天野はこのことを知っていて、結城を訪ねたのだろうか。だとしたら、相当に悪趣味だと言えた。まだ確定したわけではないので、私の早合点だという可能性も否定できない。しかし、何の関係もないとは思えなかった。


私は他に関連性の高い記事はないかと探したが、それひとつきりで他には見当たらなかった。とりあえず、最初に見つけたその記事をコピーし、図書館を後にした。


帰宅すると、母から「スマホ結構長く鳴ってたよ、なにか用事あったんじゃないの?」と聞いた。スマホを忘れて出かけている間に電話があったらしい。かけてきたのは天野だったようで、完全にすれ違ってしまっていた。かけ直したかったところだけど、言い知れない躊躇いに苛まれる。仕方がないと私は待ちに徹することにした。その日、天野からの連絡はなかった。


夜は明け、藤岬へ行く当日を迎えた。母から今回は行きたくないのなら行かなくてもいいんじゃないかと提案されたが、結城との約束を反故にしようとは思えなかった。藤岬にある祖父母の家にいるのが辛くなれば、ひとり電車で帰ることも出来るのであまり気に病む必要もない。それに新聞記事の内容も気になっていたということもあったし、例のメッセージカードのこともある。どちらにせよ、そのうち天野と連れ立って晴桜に行く事にはなるのだ。


ただ天野の立ち回りの不自然さが浮き彫りにされた現状では単独で結城と会うのは私にとっても都合が良かった。私は、宿泊の準備を進めながら昨日受け取れなかった天野の連絡を待ったが、一向にスマホが鳴る気配はなかった。今日から15日まではこの家を空けるのだ。今日連絡を受け取れなければ、更に色々と先延ばしになってしまう予感がした。


連絡を待っているうちに日は暮れ、仕事から母が帰宅した。結局、天野からの連絡はなかった。軽自動車へと着替えの詰め込まれたバッグを後部座席へと載せ、私は助手席へと乗り込んだ。夕食はどこかのファミレスで済ませることになり、母の運転する軽自動車は藤岬へと向けてゆっくりと走りだした。


天野は私の電話番号しか知らないので意味はないと知りつつもスマホを確かめる。今日は誰からのメッセージも受信していなかった。スマホをしまい、頬杖をついて窓の外を流れる夜の景色へと目を向けた。外灯の側を通る度に、口をぽかんと開けた私のなんとも言えない表情が幾度となく窓に映しだされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ