Ⅴ
朝御飯を食べおえて,ギルドへ向かっていると,
『ニュース速報です。今朝,ヒロイsupa周辺で大量の死体が見付かりました。みなさん,これからヒロイsupaへ行くさいは厳重な注意を払って行くようにしてください』
俺は心のなかでやっちゃったなぁと思いながらデバイスで俺が昨日したことがどれほど大きなことだったのかを聞こうとすると,
《これは凄い事になりましたねぇ。ニュース速報で取り上げられるなんて》
「えっ,そんなにやばいの?」
《ニュース速報で取り上げられるって事は,結構な大事件として扱われていくということです。そもそも法律すらないこの世界でニュースに取り上げられるということは残酷な殺された方が多いか,高レベルの人が殺された場合のみです。しかも両方大量の人が殺される事が条件です。今回の場合は前者の方でしょうが,いわばテロリストのような存在がいるという風に捉えられるという事ですね》
「そもそも法律すらないのになんでこんな大画面ディスプレイで報道されるんだ? 」
《法律がなかったとしても人々の殺されるということに対しての恐怖心が無くなる訳ではありません。そして,殺される事を恐怖に感じた人が立ち上げたのが報道機関media centerです。このおかげで報道を見た人が注意を促し,通り魔による死亡率が激減しました。めでたしめでたし》
「おぉ,それはめでたいな。つまり今通り魔をしているやつはそこそこ強く多少報道され目をつけられても殺し返す事のできるやつか,相当追い込まれたやつってことか」
《残念ながらその通りです。今通り魔をしているのは先程主人がおっしゃった通りの人達です。なのでこれ以上通り魔が減る事に期待はできないでしょうね》
「はは。まぁ完全に個人の責任だな。通り魔に殺されるなんてそいつが雑魚だっただけだろ」
《そうですか。でもそういった事をあまり大きな声で言わない方がいいですよ。通り魔に殺された方の怨みをかってしまうので》
「おう。気ぃ付けるわ。早くギルドに行くか」
自分のデバイスとくだらない話をしながらギルドへ向かった。
『ようこそギルドへ』
と書かれてあった看板を通過した所で,
「ようこそギルドへ。今回はどんな用件ですか?」
「えっ…」
看板を通過したただけなのにどうしてギルドの中にいるの?って聞きたいけどなんか聞くの恥ずかしいな。ここは自然に…。
「あの,stateの更新とホステルの討伐に参加したいのですが…」
「あぁ,わかりました。ではこちらに手を乗せてください。あと,ギルドは看板を通ると転移魔法でギルドのロビーまでつきますよ」
あ,バレてた。できるだけ自然に振るまっていたつもりだったのに。
ギルド員が提示してきた魔方陣に手を乗せて待っていると,
《stateが更新されました》
「はい。これでstateの更新は終了となります。ホステルの討伐はstudiumかsuppuressionの所をタップしてもらえれば参加出来る場所まで飛べると思います」
「ありがとうございます」
考えていたことがバレていたのは恥ずかしかったが基本的に優しい人だったな,と思いながら一旦ギルドを後にした。
「なぁ,デバイス。ホステル討伐の前に注意しておくべき事と買っておいた方がいいものを教えてくれ」
《注意しておくべき事は前回に伝えたように広範囲魔法を使うさいは周りに声を掛ける事と,自分よりも少し強いひとのパーティーに入る事ですかね。買っておいた方がいいものは,回復薬とリフッレシュポーションだと思います》
「なんで少し強い人のパーティーに入る方がいいんだ?」
《自分が勝てなかったホステルからも守ってくれますし,何より広範囲魔法の被害が最小限に抑えられます》
「何で広範囲魔法の被害を最小限に抑えられるんだ?」
《広範囲魔法を経験しているかしていないかでは,避ける精度が格段に違いますから》
「経験の差ねぇ…」
《まぁ,あなたの魔法の範囲なら避けると言うより耐えられるかの方が重要に感じますが…》
「あはは…。そうだね」
《どうにかして範囲を制御できないのですか?》
「まぁ,できるんだけど凄く面倒臭いんだよ」
《どうしてですか?》
「他の魔法と違って魔力の制限で範囲が変わるじゃないんだ。自分の中で自身を中心とした一定距離をイメージしなきゃならない。だから,戦闘時にはできないんだよ」
《それなら仕方がありませんね。ソロでホステルとなると難しいとは思われますが,私がサポートしますので安心してください》
「パーティーはもう少し強くなってからにするよ。あと,君の事何て呼べばいいかな?」
《今まで通りデバイスで構いませんが》
「いや,なんか変じゃん。いい名前ないかな…」
《そこまで悩まれるならデバイスで構いませんよ?》
「また,考えておくよ。そういえば,ギルドの中って男女のカップル多かったなぁ。なんであんなに多いの?」
《男か女のどっちかはデバイスだからですよ。あなただってデバイスといるじゃないですか》
「いや,俺のデバイス女の子じゃないよ?」
《女の子の方がいいのですか?》
「もちろん!」
当り前じゃないか機械よりは愛想があるし。
《では移行します。》
眩い光と共に目の前に14才ぐらいの銀髪金眼の女性が立っていた。
《これでよろしいでしょうか?》
「うん,いい!とってもいいよ!」
文句無しの美少女だ。妹って感じで可愛い。
「そうだ,これからはシスタって呼ぶよ。」
《了解しました。私はどのように呼べばいいでしょうか?》
「んー,何でもいいよ。シスタが決めてよ」
《そうですね…,では無難にマスターで》
「これから宜しくね,シスタ」
《こちらこそ宜しくお願いします,マスター》
最後までお読みいただきありがとうございました。