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∞と呼ばれた魔法使い  作者: 赤き狐
エピソード 1【∞と呼ばれた少年】
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こんな日常 2

「へ?」

 何やら説教が始まってしまったので、つい他の事を考えてしまい、聞いていなかった。

「……聞いてませんでしたね……?」

(う、また……)

 お説教モードに入っていたミニーオの表情がみるみる曇っていく。

(歳の割に感情の起伏が激しいっつーか……子供っぽいっつーか……)

「……子供だ……とか思いませんでしたか……!?」

「うお! 読まれた!?」

 ミニーオの顔が今度は赤くなっていく。

(このままでは、マジ泣きモードに入っちまう…!)

 それだけは何とか避けたい。クラスメート達の視線も冷たい。おめーら少しは助けろよ。

「あー…そうだ! 授業!! 時間無いし! ね?」

 いつもサボっていた実技ではあるが、ミニーオ先生に泣かれるよりはマシ…かなあ?

 少し首を傾げたスクイだったが、まあ、言っちまったからにはしょうがない。

「うぅ~……」

 まだ何処か納得がいかない様子のミニーオだったが、限られた授業時間を無駄にするわけにもいかない。

「では……授業に戻ります」

(ふぅ……)

 危機は去った。安堵したスクイだったが

「カーディナル君は今までサボっていたので、先生と復習ですよ~。他の皆はさっき説明した通りにやってくださ~い! 最後にテストしますからね~」

「は!? 先生と復習って……あいつら見てなくて良いのかよ!?」

「大丈夫ですよ~。やる事は説明しましたし、このクラスはクレインさんがまとめてくれてますから」

「先生が生徒にまとめさせるなよ!」

 至極まともなツッコミの筈だが、おっとりモードに入ったミニーオ先生には届かない。

「はいはい、カーディナル君はこっちですよ~」

 一人、修練場の端っこに連れて行かれた。

「はぁ……」

 溜息をつきつつ、スクイは思う。

(そもそも、何でサボるようになったのか……解ってるのかね……)

「溜息をつきたいのは先生の方です! 始めますよ!」

 そう言って、少し離れた場所に透明な立方対を生み出した。

「はい、コレを壊してくださ~い!」

 ミニーオが造り出したのは、魔法障壁…魔法を防ぐ為の魔法だ。

 強力な物なら相手が放った魔法をそのまま跳ね返す事も可能だが、今回の課題はコレを壊させるのが目的だからさほど強力には造っていない。


「良いですよ~…って、カーディナル君!?」

 準備OKの合図を出そうとしていたミニーオはスクイの恰好を見て思い止まった。

「何で魔装を着てないんですか!?」

「いや……いらんっしょ?」


 魔装とは、魔力を凝縮し実体化させた衣で、社会的には魔法を使う際の正装とされているが、学校においては『体操着』の様な扱いである。

 一応、装着すれば耐魔法力が若干アップする等の恩恵を得られるのだが……

「障壁を壊すだけならいらないですよ」

「そんな事言ってますけど、防御の授業でも着てませんよね?」

「防御力がアップするったって、微々たるもんだし」

「結局、着ないんじゃないですか!!」

 何を言ってもかわされそうな気がして、ミニーオはそれ以上の追求はしなかった。

「もう良いです! とっとと始めちゃってください!」

 半ば投げやりに開始の合図を送った。


(……って言われてもなぁ)


 こちらも投げやりに自分の掌に魔力を集中させる。



コォォォォ……



 まばゆい光が掌に集まる。

 やがてソレは姿を変え、火となり、徐々に球状にまとまっていった。


 魔法


 それは自然の現象を自在に生み出し操る異能の力。

 とはいえ、スクイ達にとって生まれた時から在った当たり前の能力であり、この世界においては日常的にも欠かせない力となっている。


「いきますよ~!」

 気の抜けた声で先生に呼び掛けた。

 ミニーオは手を振って応える。

「おーらよっ!!」

 ボールを投げる様に振りかぶってから、掌の火球を投げつけた。


ゴォ!!


 火の粉を散らしながら、火球はまっすぐ飛び……



パアァンッ!



 障壁に当たって四散した。


「……」


「…………」


 二人の間を痛々しい静寂が包み、ミニーオの前には無傷の障壁が健在している。


「カーディナル君?」


「ハイ、ナンデショウ?」


「先生、コレを壊してって言いましたよね?」

「言いましたね」

「壊れてませんよね?」

「壊れてませんね」

「結構、低位の障壁だったんですけど……」

「あ~そうなんですか」

「……」

「……」

 オウム返しの様な問答が続いた後

「なんでコレが壊れないんですか!? もっと本気でやってください!!」

 怒った……と言うより、困った様に叫んだ。

「バリバリ本気ですよ!」

 こちらは怒鳴り返した。

「先生だって知ってるでしょ!?」

 うっ……と、ミニーオは言葉に詰まった。

 スクイが殆ど実技に出なかったから、ミニーオには実感が無く、他の先生から聞くぐらいだったが、それでも良くない話というのは耳に入ってしまう。


 落ちこぼれ


 ソレが教員達の間でのスクイの評価だ。

 ミニーオ自信はソレを否定し、他の先生達ともめる事も度々有るのだが……


「で……でもですね! あなたは魔法名も持っているんですから、ちゃんと授業に出て学べば……!」

「魔法名ねぇ……」

 スクイは皮肉めいた笑みを浮かべた。

 しまった……と、ミニーオは気付く。

 その魔法名こそが、スクイの問題の根源でも有ったのだから。

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