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三人との出会い・その四

三人との出会い編終了です。

「ちなみに君がその映画を選んだのはやっぱり好きだからだよね?」


 女性関係だらしない所や約束破るようないい加減さで評価はどん底だが、志良以唯人シリーズを好きな所だけはちょいプラス加点だな。


 ……いいなあ前売り券二枚。


 彼女……、元彼女が断ったってことは二回は見れるもんなあ。


 いやいや、私も来月までの我慢だ我慢。


「好き? いや、別に。前売り買った時ロクなのなくてさあ。スポコンものやアクションとかあればそれ一択だったんだけど、なくて。恋愛ものは俺寝る自信あるし、アニメはつまんねーし。ファンタジー系は意味わかんねーし。コメディもあったけど、あの監督作品以前見てすっげつまんなかったからもーいーやって。消去方でこれ? みたいな」


「……消去法?」


「まあ対して面白くもなさそーだけど、これなら終わりまで一応見てられっかな、的な?」


 評価修正。


 どん底突き破り地下邁進中。


 それにそれお詫びの為のものじゃなかったんかい。


 そしたら普通は相手の好みそうなもの用意するか、せめて自分おススメの一押しを提案するの普通じゃね

? 


 駄目だこいつ。


 男としても人間としても最低だ。


 そして何より気になるその手元の……。


「……ところでその券は? 一人で行くの?」


「んー? どーすっかなあ。せっかく買ってもっったいねーけど、友達もこれ好きそうなのいなそーだし、捨てっかなあ。ケチついたしさあ」


 スクッ。


 突然立ち上がった私に、驚いたようにその男子は私を見上げてきた。


「行きましょう」


「へ? ど、どこへ?」


 そんなことは決まっている。


「私が君に真の漢がどのようなものかを見せてあげましょう」


 そう言って私は彼に手を差し出した。


 志良以唯人こそ真の漢。


 漢の中の漢である。


 この世の男性諸君すべてに見習って欲しいくらいである。


 この最低最悪クズ男子もその良さを知れば少しは改善されるかもしれない。


 良さがわからないのであればわからせてあげるまで。


 まずは映画の前知識として必要最低限なことを頭に叩き込んであげよう。


 その後映画を見れば、きっとその良さがわかるはず。


 わからないのであればもう手遅れだから知らんわ。


 私への報酬はその映画の前売り券一枚でよし。


 捨てようと思っていたくらいなのだから、安いものだろう。


 そんな私の思っていることを知ってか知らずか(わかるはずもないが。わかってたら逆に怖い)、彼はおずおずと手をとった。




 映画館に向かうまで、私はその男子に志良以唯人の基礎知識を伝授した。


 最低限押さえておくべきポイントも。



 その途中、


 道端に落ちていたゴミを拾ってゴミ箱へ捨てた。


 木に登ったまま下りられなくて鳴いていた子猫を下ろしてあげた。


 手にもっていたジュースをこぼしてスカートを濡らしベソをかいていた女の子にハンカチを差し出した。


 大人しそうな女子高生に痴漢をしていた中年のおっさんを見かけたので手を捻りあげて警察に突き出してみた。


 兄の信者(後輩ともいう)らに出くわして斜め四十五度の礼を伴う挨拶されたので軽くいなしてみせた。 


 などというなんてないこともあったが、無事映画館に着き彼の持っていた前売り券で『志良以唯人シリーズ』新作の映画を堪能した。


 私は映画を見る前は語るに語ったが、映画中は私語厳禁派です。っていうか常識のマナーだよね。



 映画館で出た後、私は彼に問いかけた。


「どう? 漢というものがどういうものかわかった?」


 スクリーンの中の志良以唯人は今日もとっても漢らしかった。


 私は確信をもってそう尋ねた。


 これで感化されなければ男ではない、と。


「はい!」


 その男子は真剣な顔で頷いた。


 よし、無事志良以唯人の洗礼は受けられたもようだ。


「ではこれからは彼を見習って」


「ほんと、カッコ良かったっす。さらりとゴミ捨てたり猫助けてみたり、泣いてる子供に自然な動作でハンカチ差し出してみたり、大の大人の変態捕まえてみたり、それで感謝したお姉さんさらりと流してみたり、上級生の男らに挨拶されてたり! どれもこれも当たり前のようにこなしていて超カッコいい! 俺感動したっす! これこそ漢の中の漢っすよね!」


 …………ん?


 映画ではなくてこれは……。


 あ。


 何か嫌な予感。


「俺これからもついていくっす。あの、お名前と連絡先……」


「じゃあ私はこれで忙しいのでではさらば」


 私はそう言い切るとそこから猛ダッシュで走り出した。


 後からついてくる気配があったが根性で巻いて逃げた。


 




 逃げ切れたと思ったのもつかの間、その時の彼とは高校の入学式で再開することとなる。


 目に見えないしっぽをブンブンと振りながら近寄ってきたその男子は、池上壮士と名乗った。


 そして相変わらず私に張りついていた篠倉と小原と案の定意気投合し、三人揃っての「兄貴」呼ばわりがはじまるのである。


 何か中学に上がった時の再現そのままのようなんですが。


 




 これが、私の残念イケメン三人組との出会いなのであった。


次回は兄編か学校でボッチ? 編のどちらかの予定。


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