三人との出会い・その一
見切り発車の為、早くも迷走しております。
今でこそ三つ子のようにそろって「兄貴兄貴」と言いながらつきまとってくる三人だが、出会いはそれぞれ別となる。
一番最初に会ったのは、小原千鳥である。
今でもあざといくらいに可愛らしい男であるが、初めて出会った小学校三年生の時の奴はそれはもうどこの子役か子供モデルかと思うほどに愛くるしかった。
本当に当時はぱっと見美少女にしか見えんかった。
その実は男だと知って本気で驚いたくらいだ。
奴とは同じ小学校ではあったが、クラスは別だった。
なので、その目立つ外見から私は小原のことは知っていたが、小原は私のことは知らなかったであろう。
知らないままでよかったのに。
私と奴のきっかけは、私が楽しみにしている『志良以唯人』シリーズの再放送を見る為帰宅を急いでいた時のことだった。
その帰り道に奴がいたのだ。変なのに絡まれて。
小原は知らないおっさんに腕を掴まれていた。
そして明らかに嫌がっているようで抵抗している。
今にもそのまま引きずられてどこかに連れていかれそうな勢いである。
これが見知らぬおっさんではなく相手が同級生の男子なら放っておいた。
喧嘩は立派な子供のコミュニケーションである。
しかしこれは明らかに違う。
これを見て見ぬ振りをして後日ニュースで流れるような事態にでもなったら寝覚めが悪いどころの騒ぎではない。
私はとっさに判断した。
今から人を呼びにいっては間に合わない。
大声出してもちょうど周囲に民家がなく場所になっていて声が届くか微妙なラインだ。
武道を習っているとは言っても小学生女児と成年男子の体格差ではまともにやりあうには無理がある。
私は深く息を吸い込むと、足元の砂利を掴んで二人に走り寄りながら大声をあげた。
虚を突かれたように振り向いたそのおっさんの目に向けて、掴んだ砂利を思いっきり投げつけた。
人間目を攻撃されれば咄嗟に庇おうとし隙ができる。それでも動じないのはよほどの訓練を受けた者だけであろうが、このおっさんにはそれはないと判断できる。
ついでに砂が目に入ればなお都合良し、だ。
案の定「うわっ」と悲鳴を上げ乍ら目を抑えたおっさん。
そのタイミングで、自分の持てる力すべてを込め、一点攻撃した。
つまりは、男の急所を、である。
その作戦は成功した。
声にならない悲鳴を上げて蹲ったおっさんから、呆然と突っ立っていた小原に振り返りその手を掴んだ。
「あ、あの」
「いいから後で取りあえず逃げるよ」
何かを言おうとした小原遮り、その手を掴んだまま私は走り出した。
そのまま近所の民家に助けを求め、やはりおっさんは小原の知り合いなんかではなく変質者であったことが判明しそのまま警察に通報した。
その場から逃げたおっさんではあったが、私と小原の証言をもとに、すぐに捕まった。
近隣ではいつかやらかすんではないかと評判のおっさんであったらしい。
よかったよかった。
私はというと、その行動は危ないと叱られつつも小原を助けたことはよくやったと褒められた。
それはよかったが、結局見たかった番組は見ることが出来なかったのであった。
まあ録画はしてあったけどさ。リアルタイムで見たかったのだよ……。
その後親御さんと一緒にお礼にきた小原に、私は気にするなと言った。
「私はその場に居合わせただけだ。その時に最善と思うことをしただけだよ(by志良以唯人)」
なんてことも言ってみた。
私の発言のレパートリーには『志良以唯人シリーズ』から抜粋した志良以唯人語録がこれでもかというほどある。
小原も私と同様志良以唯人フリークだったようで私のその発言にピンときたらしい。
「宮村さんは志良以唯人のようにカッコいい! だから僕、宮村さんのこと兄貴って呼ぶ!」
ちなみに、この『志良以唯人シリーズ』の中に志良以唯人を憧れ慕う兄ちゃんが登場する。志良以唯人の金魚のフンのような舎弟のようなその兄ちゃんが志良以唯人のことを慕って「兄貴」と呼んでいた。
小原のそのセリフもそこからきたと思われる。
憧れの人に似ていると言われて嬉しくないはずがない。
女だから兄貴はねーだろと思いつつも、その時の私は少し照れながらもそれを諾とした。
だって考えてもみてください。
まさかその呼び名が十年近く経っても続くなんて思うはずもない。
思うはずもなかったのだよ(泣)。
これが、私と小原のファーストコンタクトなのであった。
注意:皆さんは明らかにおかしな人を見た時は、無謀なことはせず適切に対処して下さい。