イケメン三人衆
第二話です。
「兄貴! 今度サッカー観戦行かないっすか? 野球でももちろんオッケーっすよ。兄貴が行きたいとこがあれば俺、どこまでもお供するっす」
そう言うのはイケメンその一・池上壮士。
長身に鍛え上げられたスポーツマンらしいその引き締まった身体を持つ彼は、爽やかな笑顔を振りまく正統派イケメンである。
笑うと白い歯がキラリと輝くところは、どこぞのCMかと突っ込みたくもなる。
語尾に一々~っすとつけるのが運動部員のようでちょいうざ……特徴的である。
その顔面が美形でなければ三枚目キャラまっしぐらであったろう。
「壮士、兄貴はスポーツ観戦になんか興味ないですよ。まったく脳筋はこれだから。それより私と美術館か映画でもいかがですか? 最近評判の新作も出たんですよ」
そう切り返すのはイケメンその二・篠倉永生。
一人称を私と称するインテリ眼鏡。常に冷静沈着なその物腰で、クールビューティと呼ばれている。
ちなみに私もクールと言われることはあるが、その後にビューティはつかない。決してつかない。
それが何か?
嫌味毒舌満載のその言動は、その顔面が美形でなければ嫌み眼鏡、もしくは根暗眼鏡の称号に変わっていたに間違いない。
「駄目だよ、永生ったら。兄貴はそんな眠くなりそーなことも興味ないもん。ね、あーにき、僕とスイーツ食べに行こーよ。新しい店開拓したんだあ」
甘えた口調でそう話かけてくるのはイケメンその三・小原千鳥。
可愛いアイドル系イケメン。その顔にあわせた可愛い言動はハマり過ぎてあざとさも感じられるレベルだ。
料理や菓子作りが得意で、食べ歩きが趣味だと公言している。
食べても太らないその体質がなければデブまっしぐらのコースである。
何だその女子の悲願のような体質。
……いっそ太ればいいのに。
と、それはそれとして。
「どれも行かない」
対して私の返答はすべてにノー。
「ええー! そんな兄貴ぃ」
「あの、新作とかいいので、兄貴の趣味にあわせますので」
「兄貴っ、スイーツが駄目ならガッツリ系でもいいからあ」
イケメン三人衆が追いすがるようにそう言ってくるが、気を変えるつもりは毛頭ない。
スポーツ観戦も美術館も映画も外食も嫌いではないが、お前らと行動すると注目を浴びて集中できないんだよ。
つかお前ら。
ここをどこだと思っているんだ。
高校に向かうまでの通学路。
立派な公道だっつーの。
先を歩く私の真後ろで三人が囲むようにしてついてくるだけでもただでさえ目立つっていうのに。
さっきからすれ違う人達が、「兄貴兄貴」とお前らが私に連呼するもんだから首傾げてるだろがよ。
さっき、「……カマ?」っつー声が聞こえたぞおい。
女装してるにしては可愛くねーって面と向かって暴言吐かれたこともある。
どれもこれもすべて人目憚らず人のことを兄貴呼ばわりするこいつらのせいだ。
私は男でもニューハーフでも女装男子でも兄貴でもないっつーの!
次回へ続く。