自己主張ははっきりと
主人公、体育評価は普通ですが、全部が平均ではなく、球技や長距離は苦手。短距離や水泳は得意。平均して普通というタイプ。そして学校で評価されない武道武術はかなりの高レベル、というオチ。一応補足まで。
新鮮な空気を吸い込んで、一息ついた所でじっくりと春兄の部屋を見回してみた。
一、二、三、四、五、六。
春兄の部屋は六畳である。よくもまあ男子高校生六人も床に転がっていられたものだ。
窓への最短距離で踏みつけたのは四人だが、そいつらの呻き声で他二人も目が覚めたようだ。
因みにこの部屋の主である春兄は私が腰かけているベッドで幸せそうに眠り込んだままである。
まったく、呑気なものだ。
「ひ、ひでーっすよ、秋さん。内臓飛び出るかと思ったッス。……うげ」
「そうですよ、秋さん。起こすならもっと優しく起こして欲しいですよ」
「その通り! 踏むならもっと優しく愛情込めて踏んで下さい」
ブーブー文句垂れてくるこいつら、確か私より年上だったはずなんだけど何故敬語……、いや一部言葉崩れてたりキモイのも混じってるけど。
まあいいや。
それより。
「仕様がないじゃないですか私の通り道で寝ているあなたたちが悪いんですよ。ていうか何でこんなこ汚い部屋の汚い床に直でこんな大人数で雑魚寝できるんです? ばっちいとか思わないんですかああ思わないんですね思わないんだから平然と寝てられるんですよね。じゃあ汚い床と同じってことでいいんですよねじゃあ私が踏んでも仕方ないですよねだって床なんですしそうでしょう? 床は踏みつけるもんですもんねじゃあ問題ないよすよね」
一応自己弁護の主張はしておかないと。
踏みつけるのは私の趣味ではないんですよって。
それに別に私潔癖症ってわけじゃないけど、汚いの嫌いなのよね。
春兄の部屋なんかマジでまとめてゴミの日に出したいくらい。
「あ、秋さんこええ……」
「やっぱ秋さん、昨晩話した通り……」
「おまっ、ここでそれ言うなよ!」
「素敵だ! さすが女王様……ぶほっ!」
人を変態みたいに言う変態に思いっきりその辺にあった雑誌を投げつけて黙らした後、何やら気になる発言が耳に入ってきたので言及してみることにした。
まだ母は帰ってきてないみたいだし、春兄はまあ、なんならエルボーかませばいいし。
「はいそこの子分一」
「子分一って」
「その昨晩の話詳しく教えて下さい」
「いやその」
私に指名された子分一は、ぐるぐると目が泳いだ。
「ええと十数えるまでに話出してくれないと気の短い私はきっとこの間覚えたばかりのプロレスの新技を決めたくなってしまうと思うんですよ。常々お試ししてみたいと思っててそのうち春兄にでもやってみようかと思ってたんですけど春兄これでもかってくらい丈夫ですしでもそんなに体験して頂きたいのであれば」
「言います言いますだからやめて下さいお願いです!」
あ、そう?
ちょっと残念。
別に技決めてから話してくれてもよかったんだけど。
「昨晩、俺達、ホトトギスの話をしてたんですよ……!」
は? ホトトギス…………?
次回、ホトトギス談義です。




