焦り
side美園
「じゃあ僕教室あっちだから。」
「あ、うん。」
考えながら登校してたらあっという間についてしまった学校。
しかも教室は朝から選択授業なので、ジローとは途中でお別れだ。
残念だなぁなんて思いながら歩いていると、後ろからみっそのー!!!と声がした。
振り返ると、そこには親友の三口陽翔がいた。
「はーるーひー!」
「おっはよん!」
「おはよ!」
陽翔は部活着のままで(ちなみにバスケ部のエースだ)汗を拭いながら持っていた制汗剤をバッグにいれた(器用だ)。
「そう言えば保健室の幽霊、マジだった?」
「それがさぁ、」
昨日の事を陽翔に事細かに話すと、陽翔は美園それ定番の逃げ方、と突っ込みを入れられた。
教室に入り、クーラーの涼しい風を浴びながら陽翔と席につく。
「で、結局お化けいたんだ。」
「いや、残ってたジローによると人間らしい。」
そう言えば、陽翔は普段強気な目をぱちくりさせて、持っていた教科書を机の上に落とした。
「ジローといったの?」
「え、なんで?」
「え、だって暗い学校で二人きりって……流石のジローも意識するんじゃない?」
「それがしないのよ。」
そしてまた陽翔はえ、と目をぱちくりさせた。
「それ、男としてどうなの?」
だよねぇ、と私が言えば、陽翔は眉を寄せて、私にずいと顔を寄せてきた。
「好きなら思いきりいかないと!」
取られちゃうよ。
「わかってるよ。」
私はそう言って、教科書を机においた。
若干の焦りを感じながら。