一目惚れ
sideジロー
僕らが家を出たのは深夜。
相変わらず横にずれている僕の名字、赤井の表札をきちんと直して、門前で待っている美園に駆け寄る。
「おっそい!寝てたのー?」
「あのね、僕にはいろいろやることがあるの。君と違って。」
そう言って学校に向かって歩き出す。
そもそもなんで深夜なんだ、と聞かれれば美園曰く、お化けが出るのは深夜でしょ!とのこと。
美園は待ってと言いながら後から走ってきて、僕の制服の裾を掴んだ。
「なに、怖いの。」
「当たり前じゃない、乙女だもの。」
「乙女はゴキブリを……。」
「その話は無かったことにして。」
じゃあなんで深夜にしたのと聞けば、だからお化けが出るのは深夜じゃない!と言われた。
「でも僕らはお化けがいないことを証明しにいくんだろ?」
「うっ……それは~。」
「あ、着いた。」
案外僕らの通っている学校から家は近いので、学校にはすぐ着くのだ。
「あー。やっぱり怖い。それになんか二人きりってドキドキしない?」
「しない。ほらいくよ。」
ふざけたことを言う幼馴染みを引っ張って、学校へと入っていく。
そしてお化けが出るらしい保健室に直行。
途中美園の待ったが聞こえた気がしたが、知らんぷり。だって早く帰りたい。
保健室をガラリ、扉を思いきり開く。美園のひっ、と言う声と共に、その子は表れた。
「……きゃああああああ。」
「美園……。」
お約束、という風に逃げていった美園。
彼女に目を向けると、心臓が鷲掴みにされた感覚がした。
白い肌に、白い髪。
赤い目。
これが一目惚れというやつだろうか。
「僕と、付き合っていただけませんか?」
「……え?」
思わず口走ったことばに、彼女はポカンと口を開けた。