最終列車少女。
「でもね、お兄さん。貴方はこの電車を選んだのでしょう? この便を選んだのでしょう? この時間を選んだのでしょう? 黄色の線の内側で、律儀に待っていたのでしょう? 電子掲示板が、遅延を知らせて居たでしょう? 誰かが隣に居て、誰かが前に居て、誰かが後ろに居たでしょう? アナウンスは次の停車駅を告げていたでしょう? 次の電車の無い事を告げていたでしょう?」
周期的な照明の点滅と、真っ暗な車両。
並んで座る二人の面影。
純白の少女と。
一人の男。
違うんだ、と男の顔色が嘯く。
だって、それは選んだんじゃない。選ばされたんだ。
選択肢など無かった。最初から。
「それは嘘。―――貴方はこの電車を選んだのでしょう? この便を選んだのでしょう? この時間を選んだのでしょう? 黄色の線の内側で、律儀に待っていたのでしょう? 電子掲示板が、遅延を知らせて居たでしょう? 誰かが隣に居て、誰かが前に居て、誰かが後ろに居たでしょう? アナウンスは次の停車駅を告げていたでしょう? 次の電車の無い事を告げていたでしょう?」
「違う……」
「嘘。―――貴方はこの電車を選んだのでしょう? この便を選んだのでしょう? この時間を選んだのでしょう? 黄色の線の内側で、律儀に待っていたのでしょう? 電子掲示板が、遅延を知らせて居たでしょう? 誰かが隣に居て、誰かが前に居て、誰かが後ろに居たでしょう? アナウンスは次の停車駅を告げていたでしょう? 次の電車の無い事を告げていたでしょう?」
「違う!」
周期的な点滅。
フラッシュバック。
気が付くと血塗れで停滞した少女。
通路に立つ一人の男。
嘘を吐いているのは、誰だ?
周期的な点滅。
やがて、トンネルを抜ける。
辺りは暗闇に包まれた。
男は何時の間にか居なくなっていた。
きっと、何処かの駅で、降りたのだろう。
むくり、と起き上がる少女。
血赤色の少女。
急ブレーキがかかり、けたたましい摩擦音。
鈍い音。
倒れ傾いた車両の扉から出ていく少女。
―――最終列車少女。