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TS転生奴隷の異世界暗殺者生活  作者: 黒姫双葉
第一章 Who are kill……?
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爆罠設置




***




「色々と道具があるな。さて、どうするか」


部屋の中に転がる拷問器具の数々。

幾つかは薬剤などもある。その中にはこの世界固有の植物も見て取れるな。あれは確か催淫剤だったか。しばらく前に使われた覚えがある。

どうやらこの部屋にはそんな催淫剤の香を漂わせていたらしい。これはある程度の限度はあるが、多少ならば痛みを快楽に変換する作用があるので拷問するには確かにちょうどいいだろう。

痛みを強く感じることによる精神的な死を防ぐことが出来るからな。より長くいたぶりたいのであれば選択肢の一つとしては大いに取り得る手段だ。

俺の場合は既に耐性はあるが、さて衛利はどうだろうか。見た感じは効いている感じはしないが。

………まあ、長居はしない。耐性があろうがなかろうが関係のない話ではある。


「利用できるものを見つけてさっさと出るぞ」

「は~い」


水責めにでも使うためか溜められていた水に飛び込んで中途半端になってしまった化粧を落とすと、突き立てられた爪による傷を適当な布を切り裂いて巻き付けて隠す。

傷は目立つ。そこに転がっている女のように化粧で隠してもいいが、時間が掛かる上にメリットがないので今は選択肢から除外だ。


「それにしても………宝の山だな、ここは」


護衛ということで色々と恵まれた環境にいたらしい。質のいい阿片なども置かれているのがいい証拠だ。数個その薬包みを頂きながら、拷問器具の前に立った。

重し責めに使う岩や木材、火責めの発火に使うための大量の火薬類。

奥にあるのは鋼鉄の処女(アイアンメイデン)か。あれは実用的な拷問器具ではないというのが通説だった気がするが、床の変色した血の跡から使われていた形跡がある。

………あれは使えるな。

その辺りで息絶えている護衛の女を鋼鉄の処女の中に放り込む。

若干錆び付いているのかキィッという音が響いたが、無視して開けて扉を閉めた。

ガリ、或いはブチ、という音が鳴って再び血が流れだす。それを確認するともう一度その金属の乙女の扉を解放した。

無惨な姿で串刺しになっている女を眺めると扉を解放したまま放置した。これで部屋に入ってきた人間の目線はこれに向き、こちらへ向かうことだろう。


「衛利、そこの木箱と火薬を取ってくれ。それからその周囲にある拷問器具から縄を」

「―――成程。えげつないこと考えますねぇ、ハシン?」


材料となる道具を上げただけで俺のやろうとしていることに気づくとは、流石は忍者というべきか。

いや。寧ろ気が付いて当たり前なのだ。なにせ、俺が今作ろうとしているものは元々は忍者が編み出した暗殺術に他ならないのだから。

俺はその先駆者たちの知識にアレンジを加えただけでしかない。

石を潰し、或いは金属片へと加工して衛利の持ってきた火薬に混ぜ込む。それを複数個の木箱の中に収め、箱の裏には縄を取り付けた。

幾つかの箱では縄は小さく切り取り、この部屋の入り口近くに設置する。残ったものは長めの縄にし、鋼鉄の処女の回りや部屋の全体に設置しておいた。

そして、その縄に火を点けて………部屋を出ようとする。


「ハシンハシン、あれ。どうするんですか。放置でいいので?」

「………ああ」


出る直前に衛利が指さしたのは、部屋の隅で痙攣している痩せた少女だった。

助けるか助けないかでいえば、もちろん―――助けない。

足手纏い云々の前に、あれはもう駄目だ。ここから連れ出してもすぐに息絶えるだろう。既に意識すらない筈だ。痛みも感じてはいないだろう。

あのまま放っておくのが一番良い選択肢である。

どのみち、助かったとしてももう二度と普通の人としては暮らせないのだ。少なくとも女性としては終わってしまっている。


「行くぞ」

「はーい。南無南無っと」


手を合わせた衛利を横目に、木箱を扉の外に置いた。

その後、人間の気配に注意をしつつ坑道を進んだ。まあ、護衛の私室の近くだ、流石に人間の気配はないがな。兵士の詰め所を護衛する兵士はいない。

もちろん見張りはあるだろうが、あの女の性格的に自らが嗜虐趣味にいそしんでいる間は周りに人間を近寄らせない筈だ。

………何か、普段とは違う現象でも起こらない限り、な。


「そろそろですね」

「そうだな」


体内時計は現代時間に言う五分程を数えた。火をつけたあの縄は遂に箱の中に敷き詰められた火薬に辿りつき、そして………大きな音を立てて爆発することだろう。

坑道内を反響する爆音を聞き流し、歩みを進める。

簡単に作り出すことのできる地雷であり時限爆弾である兵器―――その名は埋火(うずめび)という。

あの火を付けた縄はまさに導火線であり、時間経過で箱の中の火薬に火を伝え、爆弾と化すのだ。

暫くした後に再度迫る空気の圧の気配。さらに数度、背後で爆発が起きた。


「あは~、誰か箱を踏みましたね」

「ガラクタや木材の中に木箱を紛れ込ませていた。気が付かずに踏みつけても誰も責められないだろう」

「死にましたかね?」

「さて。足が捥げただけだとは思うが。あまり殺傷能力は高くないからな」


その代わり地雷系兵器の特徴として、的確に戦力は削ぐのだが。

戦争では死者よりも負傷兵の方が厄介だ。中途半端に戦線復帰できない程度の怪我を負うくらいならばさっさと戦地で物言わぬ肉の塊になっていた方が他の味方の糧食や薬剤を圧迫しない。

それ故に、敵軍に効率よく嫌がらせをするために地雷というものは存在している。手足を奪い、しかし生きながらえさせる、戦争好きが考えた悪魔のような兵器。

しかし、この埋火はそんな地雷の中でもかなり前時代的な兵器だ。先も言った通り、俺の世界では元々は衛利のような忍者が考え出した暗殺術で、箱と火薬、縄だけで作ることのできるとても単純な構造の爆発物である。

ご存知、火薬は圧迫することによってただの燃焼から爆発へと変化する。そのため火薬を木箱に詰め込んだわけだが、その蓋の上に縄を括り付け点火することで、徐々に燃える縄自体が導火線になって時限爆弾になるのだ。そして、さらにもう一点。その蓋は外部からの圧力で沈み込むようになっている………そうするとどうなるかといえば、火のついた縄が直接火薬を焦がすことになり、導火線ではなく発火剤(マッチ)へと早変わりするというわけである。

この二点ゆえに、埋火は時限爆弾と地雷という二つの側面を持つということだ。難点としては水に弱く、湿地帯では使いにくいということだがここは幸いにして地下である、爆発し放題だ。


「しかし、踏んだということはやはりというべきか、あの女以外にも兵士となるものはいるわけだな」

「金があれば傭兵は雇えますし、あの………なんでしたっけ?国が欲しい人たちも仲間には加わるでしょうし。国の将程度の存在はあまりいなさそうですが」


国家の柱、あのルーヴェルにてハーサが交戦した盾将軍のような一国の将。

有象無象の群も将が率いることによって軍勢となる。逆にいえばどれだけ数をそろえても、将がいなければ雑魚でしかない。

今現在、この場においてその将になり得る存在はあの護衛の女しかいなかったわけだが呆気なく死んだからな。

残るのは烏合の衆だ。

背後でさらに爆発が重なる。尤も、その烏合の衆も大分削られたようだが。

しかしこの爆発音で相手も敵性存在がいるということに気が付いたはずだ。それについて衛利が首をかしげて聞いてきた。


「王、逃げませんかね?」

「護衛には一定の信頼を置いていた。真っ先に死んでいるとは思わないだろう、ならば護衛が対処すると判断する筈だ」

「なるほど。まあ、逃げてもここが壊滅すれば一定の妨害工作にはなりますからねー。………いえ、ですけどそれにしたって報告とか連絡とか足りてないですよね、この組織」

「………そうだな」


まさかこの時代の異世界人が報告と連絡の不足を嘆くとは。いや、成熟し組織として成り立っている存在はどこも報連相がしっかりしているのは確実だとは思うが。

組織としては小さくあれど、衛利の暮らしている魔女の隊商はその点はしっかりとしていた。そんな衛利からすれば、この組織の密度はあまりにも脆く見えるのだろう。

まあ、街を乗っ取り国家を名乗ろうとしているだけの麻薬作成サークルでしかないのだ、そういったものが出来ていないのも納得はできるが。

そんなことを考えつつ進んでいると、俺たちは大きな広間に行きあたった。


「む、広間か―――いや、これは」

「うわぁ、酷いですねぇ」


二つの視線の先、そこには大量の芥子坊主が栽培されていた………。










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