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あなたの色が見えなくなるまで〜名家を統べる令嬢と専属護衛のジレる恋模様〜  作者: 黎明 あかり
第1部

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第0話 プロローグ

 ――ちっ。


 思わず舌打ちをする。

 2、3歩離れたところにいる澪は普段の装いと違い、シルバーのナイトドレスを優雅に着こなしている。

 スパンコールが会場の光でキラキラと上品に輝いている。


 うなじから背中に掛けて大きく開いたドレスのせいで、澪がいくつもの視線を浴びていた。


 数時間前にこのドレスを着た澪を見て、あまりの綺麗さに固まってしまった自分と同じような男がこの会場に何人もいることが無性に腹立たしい。


 ――つか、いつまで話してんだよあの野郎と。


 かれこれ澪は15分以上も格下の野郎相手に談笑をしている。

 澪のように色は見えなくても、相手の下心ぐらい真人にもわかる。


「澪さん、ここに……」と、相手が手を伸ばして澪の髪の毛を触ろうとしてきた。


「時間だ」


 触らせねぇ……、そう思うよりも早く二人の間に割り込む真人。

 相手の手はそのまま宙で止まる。


「あら、真人さん。もうそんな時間なの?」


 声をかけられた澪は後ろから来た真人に対して斜め上へ顔を向ければ、大きな瞳で真人を捕らえた。


「……いくぞ」


 澪の手を取り、相手の男から離す。


「え。ちょっと、ご挨拶できてないわ」


「いらねぇだろ、あんな奴に気ぃ使う必要ねぇ」


 ムスッと真人は人の少ない壁際へと澪を連れて行く。


「お前は一人ひとり丁寧にしすぎだ、あんなのテキトーにあしらえ」


 ほら、とミネラルウォーターを渡す。


「あと、また目を使ったろ」


「……軽くよ」


 真人から視線をそらすようにいう澪に対して、真人は澪の額をデコピンする。


「バカ、それで倒れちまうんだろうがよ」


「痛いわ」


 ムスッと澪が真人を見れば、瞳に自身が映る。


「……何をそんなに苛ついているのよ?」


 澪が真人をじっと見ているのは、なぜそんなにもイライラしているのかと原因を探っているのかもしれない。

 それに、澪にはイラつきが既に視えているのも分かっている。


「……視んじゃねぇよ」


 真人は自分のイラつきを視られたくなくて、澪の目を片手で覆った。


「ちょっと、真人さん?」


「うるせぇ、少し休んでろ」


 自分の感情の色を見られたくなくて真人はまた舌打ちをする。


 数ヶ月前の真人ならこんなにも心は乱されなかった。

 夜会のシャンデリアの光を浴びれば深紅のドレスのシルクが美しく輝く。


「……倒れられたらこっちが困るんだよ」


 出会った頃から何も変わらない。

 自分のことは常に後回しで、すぐ異能を使って、翌日には倒れ込んでしまう。


「……ちっ」


 真人は会場を見渡せば、澪が次に話すべき対象が近くに来ていた。


「いけるか?」


「大丈夫よ? 真人さんが近くにいてくれるのでしょう?」


 顔から手を外せば、澪はまた次を見据えて真人ににっこりと完璧な笑顔を見せる。


「あぁ、近くにいる」


 当たり前だ、護衛としているのだから離れるわけがない。


 止めてもこのお嬢サマは歩みを止めることはないだろう。

 真人はネクタイを軽く触って整え、歩き出した澪の後ろに控える。


 護衛として、主を守るために。


 自分がこんなにも心を乱されるようになるなんて、あの頃は思いもしていなかった。


 この少女が、俺の人生を全部変えることになるなんて。

 数ヶ月前、あの依頼がなければ俺はここにいなかっただろう。



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― 新着の感想 ―
最後の文章の引きがいい感じです。ツンデレ?な真人とマイペースな澪の掛け合いもいいなあ
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