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始原のイザヤ  作者: 牧慎太郎
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第一章 入学

 この世界は悪魔族、天使族、エルフ族、人間族の4種類に分かれている。

 空を切り裂くようにそびえ立つ三つの巨大な塔。 天使の「天導のスカイ・アーク」、エルフの「刻銘のタイム・ピラー」、人間の「不屈のアイアン・グローリー


 数千年前。 世界を混沌に陥れた悪魔族は、天使・エルフ・人間の三種族による連合軍との大戦の末、巨大な封印の彼方へと退けられた。 勝利した三種族は、二度と悪魔が這い出さぬよう、各地に巨大な「監視塔」を建て、平和を築き上げてきた。


 ――だが、時は満ちた。


 経年により綻び始めた封印を突き破り、ひとつの「影」が地上に降り立つ。 悪魔の創造主によって、最初に解き放たれた者。


 最古の悪魔にして、十二戒・第二位。 その正体は、この世に最初に産み落とされた原初の絶望。

「……さて、イザヤ。君が最初だ」


 封印の狭間、虚無の空間で「創造主」は楽しげに告げた。

「今の世界を見ておいで。偵察だよ。僕たちが戻った時、すぐに滅ぼすべきか、それとも少しは遊ぶ価値があるのか……君の目で監視してくるんだ」

 その命令を受け、地上に降り立った影は、一人の少年の姿へと変わった。


 三つの塔が、朝日に照らされて白銀、深緑、鉄色に輝いている。 連合都市の巨大な城門の前には、世界中から集まった「エリートの卵」たちが長蛇の列を作っていた。


その列の最後尾で、大きなリュックを背負った少年が、眩しそうに空を見上げていた。

「わぁ.....、下から見ると本当におっきいな」


 イザヤは感心したように声を漏らした。さっきまでは封印に包まれた暗黒の世界にいたのだ。涼しい風、人々の活気、そして鼻をくすぐるような香ばしい香り、彼には全てがエンターテイメントだった。


「ちょっと君、そこに立っていると邪魔になるぞ」


門番をしていた兵士が不審そうにイザヤを見る。イザヤは慌てて、お父様(創造主)から受け取った推薦状を差し出した。


「.....地方の貧乏貴族か。魔力測定値は.....「100」?おいおい笑わせるなよ。おい、中へ入れ。精々天使様やエルフ様たちに恥をさらさないようにな」

「はい、ありがとうございます」


 イザヤは門をくぐった。(お父様も微妙な設定にしたなぁ....、この数字でやっていけるのかな....まあ本気でやったら測定器自体壊れちゃうから仕方ないか)


 学園の講堂ではすでに入学式が始まっていた。そこには種族の壁を超えた「格差」が露骨に存在していた。前列に座るのは、翼を輝かせる天使族の若者たち。 中列には、優雅に魔導書を開くエルフ族。 そして後列に、野心に燃える人間族。


 壇上では人間族の幹部『十傑』の一人が演説をしていた。

「諸君、この学園は平和の象徴であり、悪魔という脅威に対する『盾』であり『剣』なのだ。いつか封印が解け、奴らがこの世に解き放たれた時、君たちがこの世界を守るのだ」


「(僕らすごい嫌われてるんだな、まあこの人たちが僕らとどのくらい戦えるのが気になってきた.....)」


 そんなイザヤの隣でいかにもおどおどしてるのが丸見えの黄色がかった髪色の少年が座っていた。


「やばい……この学校の熱気、僕ついていけるかな……。あ、あそこに見えるのって有名なエルフの家系の人だよね? あっちの天使様なんて魔力の輝きが眩しすぎて直視できないよ……」


黄色がかった、少し癖のある髪をクシャクシャにしながら、その少年はおどおどと周囲を伺っている。


イザヤは隣から聞こえてくるその震える声に、ニコッと元気よく笑いかけた。


「あはは、確かにすごい熱気だよね。僕なんて、座ってるだけでお腹が空いてきちゃったよ」


「……えっ? あ、うわっ、ご、ごめんなさい! 独り言が大きすぎたよね……」


 その少年は驚いて、何度も頭を下げた。


「僕はイザヤ。君も新入生だよね? よろしく!」


「あ、う、うん……。僕はカイル。……あの、イザヤ君、怖くないの? ここにいる人たち、みんな『百戦』とか『千軍』を目指してる怪物ばっかりだよ。僕なんて、魔力測定値が平均以下で、推薦枠の末席でなんとか引っかかっただけだから、もう帰りたくて……」


カイルは、泣き出しそうな顔で自分の膝を抱えた。イザヤはそんなカイルの肩をポンと叩きます。


「大丈夫だよ、カイル君。僕なんて魔力測定値『100』だし。たぶんこの学園で一番下の方だよ」


「えっ……『100』!? ……そ、それ、本当? 冗談じゃなくて?」


 カイルは目を丸くしてイザヤを見た。人間族のエリートが集まるこの学園では、100という数値は「一般人レベル」であり、落第ギリギリの数値。


「うん、本当。だから僕たち、仲間だね」


「仲間……。…...うう、そうか、僕より大変な人がいたんだね……。ごめんね、なんだか少し勇気が出てきたよ。君がそんなに元気なら、僕も頑張ってみる」


カイルは少しだけ表情を和らげ、控えめに握手を求めてきた。その様子を、反対側の隣に座っていた将来有望株の奴らが鼻で笑いながら見ていた。


「けっ、弱者同士の傷の舐め合いか。いいか、この学園は『塔』への入り口に過ぎない。お前らみたいなゴミは、一ヶ月も経たずに脱落して消える運命なんだよ」


とその中の一人が言った。


「あはは、みんな厳しいなぁ。でも、頑張ろう。……ね、カイル君」


「ひ、ひぃ……! もうダメかもしれない.....」


ガタガタ震えるカイル、イザヤはこの学校への興味が膨らむばかりであった。






























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