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プロローグ
世界は祈りに満ちている。
そのことを、かつての私は知らなかった。
私は世界にひとりきりで、誰にも知られていなくて、私のために祈ってくれる人など、誰一人としていないと思っていた。
けれども、今の私は知っている。
世界は祈りに満ちている。あの人は今日も祈っている。誰かのために。誰ものために。
声が聞こえる。
あの人が──祈っている。私は思う。大丈夫、聞こえています。私はもう、あなたが祈っていることを知っています。この国に住まう誰も彼ものために。その中に私がいることを、私はもう知っていて──だから私は、なんにも悲しくはないのです。
なのに──ねえ、或人あるひと様。
どうしてあなたは、そんなふうに、悲しいお顔をされているのですか?
新連載はじめました。
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