第六話 都合の良すぎる言語問題
また俺は、案内されるがままにおばちゃんについていく。
大きな葉っぱで胸と下を隠す人、
血まみれで穴の空いた麻を着ている人、
中には、何も着ずに股間だけ手で隠している人もいる。
「モンスターによォ!全部取られちまって!なんでもいいから服くれよ!」
その中でも俺は浮いているみたいで、やっぱり視線を感じるのだった。
「しまった、ここ来る前に、着替えてくればよかったねえ」
おばちゃんはそう言って、
「まあ、名前の方が大事だからね。もしかしたら、裁縫スキルがあるかもしれないし。そしたら、おばちゃんにも服作ってくれよ!」
続けて、そう言った。
待合席で大人しく待っていると、順番が回ってきた。俺はガラス越しに、役場の人間と向かいあう。
……これは、ガラスなのか?
こんな土や砂で出来ている建物ばかりの世界に、ガラスがあるのか?
役場の人は、またおばちゃん。ただしこちらは、細身の、40代くらいのおばちゃんだった。
「転生者さんね!今日はどうされましたか〜?」
どうされたもこうされたもない。
困っていると、おばちゃんが助け舟を出してくれた。
「いやね!この子、さっき来たばっかりみたいで!名前決めたいんだよね、あとスキル判定よろしく!」
「じゃ、こちらにご希望のお名前書いてもらって……そのあと、スキル判定しますので」
ここにいても邪魔だろうと、もらった土の板を持って待合席に戻る。
名前か、前世のままでいいんだけど……そういえば、この世界ではどんな名前が主流なのだろう。
……というか、日本語で通じているけど……書く文字も日本語でいいのか?
「おばちゃん、おれ、日本っていうところから来て……この世界の言葉、日本語と同じに聞こえるんだけど……」
するとおばちゃんはびっくりした顔をして、
「あれ、アンタの国はそういう感じなのかい?たまに同じことを聞く転生者がいるよ、もしかして同じ世界から来たのかねえ!」
と言った。
答えにはなっていないけれど……多分この世界は、みんな話す言葉が通じるような……そういう設定なのだろう。
あまりにもご都合主義すぎて、やっぱりここは夢なんじゃないかと思えてきた。