第三話 うまい食いもん、あればよかったのに。
案内されたところは、ちょっと大きめの建物だった。
でも、砂だか岩だかで作られているところは、他の建物と変わらない。
この世界には、建築の技術はないのか?
それとも、まだ発展している途中なのか。
案内されるままに席について待っていた。この椅子も、木でできているようだけど……虫食いの穴がチラチラ空いている。
「待たせたね〜!!」
両手に食べ物をたくさん持って、おばちゃんは戻ってきた。
「こっちが、ツンガルの丸焼き!
これは、ファーバーを蒸したやつ!
で、これは、アナルの汁だよ!」
リスのような、というかドブネズミのような姿をした、串刺しの動物。
真っ赤なゲジゲジ。
濃い緑色をした、(木に穴を開けただけの)コップに注がれた、少し泡だった液体。
「……おばちゃん、ごめん、俺今あんまりお腹空いてないかも」
そう言ったけれど、おばちゃんは無理やり緑色の液体を押し付けてきた。
「来たばっかりだとね、びっくりしてお腹なんて空かないか! でも今のうちに食えるだけ食っときな!」
そう言って、ネズミにかぶりつくおばちゃん。
「おばちゃんはこれが好きなんだよね〜!! うまいから、一口だけでも行ってみな! アンタの暮らしてたところには、こういうやつあったかい??」
あまりにうまそうに食うものだから、目を閉じて、長いしっぽだけ口にしてみる。
魚の丸焼きと思えば、なんとか……。
「アンタね! そんなところ食べても味なんかしないでしょ! 真ん中をいくの! 今が一番旬だよ、まるまる肥えててうまいよ〜!」
……いくしか、ねえか。
覚悟を決めて、かぶりついた。
……大昔、俺がまだ小さかったとき。
じいちゃんが、友達から分けてもらったというイノシシを食べたことがある。
生臭くてもそもそして、俺はすぐに吐き出した。
あのイノシシの、生臭さが少しマシになったような味。
でも、体毛が口の中でモサモサとしていて……口当たりは、イノシシの方が、マシだった気もする。