第13話 俺が死ぬときが、もし今から一秒後だったら。
あまりにもあっさりとそう言うものだから、少し驚いてしまった。
え、他には……?
なんか、説明とか……ないの?
俺の気持ちを見透かすように、男性は言った。
「……例えば、ケンタ様が、今から24時間後に死ぬとしましょう。
当然、死ぬきっかけがあるはず。
モンスターと対峙する、
誰かの恨みを買って殺意を向けられる、
足を踏み外して崖から落ちる……。
その、きっかけとなることが起きたら、
脳内にタイマーが出るはずです。
そのタイマーがゼロになったら、
ケンタ様は、お亡くなりになる」
まあ、単純な話だな。
理解はできる。
だが、何個か疑問も浮かんだ。
「あの、その24時間ってのは……
今だけの、例え話の時間ですよね?」
俺は、男性をまっすぐ見つめて尋ねた。
深緑色の瞳に映る、俺。
マユナおばちゃんは、お行儀良く膝の上に手を乗せて、背中を丸めている。
仕方ないか、死ぬとかどうとか、そんな話が出てきたんだもんな。
今までは、料理を美味しく作れるとか助っ人がそばにいるとか、そんな話をしていたのに。
しかも、なんだかとびっきり珍しいスキルらしいし。
男性も、俺を見つめ返して、言葉を紡ぐ。
「……ええ。例え話です。
そのスキル、デス・タイマーが作動するとき……そのときの、カウントダウンさせる時間は、毎度違うらしいので……。
申し訳ありません、僕も、本で得た知識なので……
本には、
一ヶ月前からカウントが始まったり、
5分前から始まったり。
または……一秒間のカウントしかされずに、スキル保持者がそれに気づく暇もなく亡くなってしまった、というケースもあった、と……」
なんだよ、それ。
とんだスキルだな。
ただ、目の前の男性が嘘をついているようには、思えなかった。
さっきまで、あんなに淡々と話していた彼が、
言葉を選びながら発言するのを見ていると……
このスキルがまだよく知られていないこと、
そして、とても扱いにくいスキルだということ。
その二つくらいは、俺にも分かった。