第12話 俺が死ぬとき
どこかで、何か獣のようなものの吠える声がした。
ワオォン……
いや、モノノォン……
そんな声。
きっとライオンのような恐ろしい動物だろう。
それと、
キュウううっという、悲鳴にも似た声。
きっと、食べられたのか倒されたのか……。
この世界にも、弱肉強食の理は生きているんだなとぼんやり思った。
俺たちは、この世界でどの位置にいるのだろうか。
俺は……弱肉強食の世界のカーストでは、何番目に存在しているのだろう。
そんなことをつい、考えてしまった。
目の前で黒いワンピースを揺らすこの男性が、こんなことを言うからだ。
「ケンタ様、四番目のスキル。
少々珍しいものとなっております。
僕も、初めてお会いしましたので……本の中の知識しか知りません」
勿体つけないで早く言ってほしいよな。
そんなこと言われたら、なおさら気になるってものだ。
というか……今、サラッと言ったけど、この世界にも本はあるんだな。
そう思う俺の脳内に、ふわりと浮かび上がる文字。
《死刻の予兆〈デス・タイマー〉》
随分と不吉な言葉じゃないか。
不吉さを補うかのような、分かりやすさ。
つまり、死ぬときが分かる……そんなところだろ。
男性は、ぽつり、ぽつりと言葉を続けた。
「おばさまも、きっとご存知ないのではないですか?
これは、そう。己の命が消えてしまうのがいつか……分かるスキルです」