第十一話 今度、あのジュースを持ってこよう。スキルの扱いに、慣れた頃に。
男性の言うことをまとめると、こんな感じらしい。
(とてもじゃないけど覚えられなくて、男性のスキルで脳内に転送してもらった。異世界、なかなか便利なもんだ)
俺の持ってるスキルは、全てで4つ。
一つ目は、〈ガーディアン・リンク〉
エタコン、という略称のほうが、この世界では知られているらしいが。
二つ目は、再生者。
別名を、〈リジェネレーター〉
なんでも、傷を負ってもすぐに治るらしい。
「アンタ、前の世界で受けたその傷も、リジェのおかげだったんじゃない? こっちに来た時には治ってたんだよねえ。転生者の中には、目ん玉が飛び出たままこっちに来る人だっているんだから!
あ、そうそう、だからアタシ最初に、クエスト終わりかなと思ったんだよね。パーティーの誰かに治してもらったのかなって」
どうやらマユナおばちゃんの頭の中にもこれは流れているみたいだ。
さっきからぺちゃくちゃと、口が止まらないマユナおばちゃん。
この場にいる人みんなに流れる仕組みなのか?
そうだったら、あまり便利でもないかもしれないな。
そして、
3つ目が、記憶の味。
別名を〈グルメ・リプレイ〉
「ケンタ様、こちらに来てから、何か召し上がられました?」
そう聞く男性に、俺は答える。
「つい、さっき。そこの……食堂? で。
足がたくさんある虫と、
緑色のジュース、
あとは小動物の丸焼きを」
男性の目が、少し輝いた気がした。
気のせいだろうか、瞳が緑色に見える。
……緑色のあのジュース、好きなのかな。
「ツンガルの丸焼きと、蒸しファーバーと、アナルですね!
もしよければ、それ、今度作ってみてください。寸分違わずに同じものができるはずですよ」
「えっ?」
男性を直視する俺に、答えが返ってきた。
「グルメ・リプレイ……通常、グ・リプ。
その名の通り、一度食べたものは、まったく同じものを作り出すことができます。
材料を集めてキッチンに立ってもよし、
脳内で想像して、作り出すのもよし。
ただ、難点がありまして」
難点? まさか、一回きり、なんて言わないだろうな。
男性は、瞳を緑色にしたまま、続けた。
……今度、持ってきてあげよう。
あなる……ああ、俺のじゃない。
緑色の、フルーツジュースを。
「脳内で強く思い浮かべると、目の前にぽんっと、作り出されるんですが……
少し、慣れるまでは、
人に振る舞うのはやめたほうがいいです。
うっかり毒を仕込んでしまったり、
味は美味しいのに見た目はグロテスクだったり。
そのようなケースが、見受けられまして」
……なるほどな。
スキルといっても、はじめからなんでもできるわけではないのか。
エタコンと、
リジェと、
グルメ・リプレイ……ぐ、りぷ、と言ったか。
①守護者〈ガーディアン・リンク〉
(エターナル・コンパニオン、通称エタコン)
②再生者〈リジェネレーター=リジェ〉
③記憶の味〈グルメ・リプレイ=グ・リプ
まあ、そんなに派手ではないが、
持っていて困るものでもないだろう。
俺は、4つ目のスキルが脳内に流れてくるのを、
緑色の瞳を見つめながら、待った。