表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/106

97.イブⅡ


ケーキは上手く焼けた。

クリームを塗って、イチゴをバランスよく乗せて、完成!


うん、我ながら完璧な出来映えだ。瑛祐くんも流石と言うか、生クリームのデコも完璧。


「どうする? 歌とか歌っちゃう?」

冗談っぽく聞いてみた。

「いや、いいでしょ。早く食べたい」


そうだよね。瑛祐くんは、ムードより食い気だよね。

付き合う前、駅まで私を迎えに来てくれたんじゃなくて、私のお弁当を迎えに来てたもんね。


……本人は全力で否定しているけれど。


「上手くできたね」

「おぉ、売り物のケーキみたいだ!」

「まあ、道具とか準備をちゃんとしたら、やっぱり良かったね」

「瑛里が料理上手いからだよ」


食べてみると、スポンジ生地は柔らかくて、クリームは甘すぎず、イチゴの酸味を優しく包んでいて、凄く美味しい。


「……美味しくできた」

「うん。今まで食べたケーキで一番美味しいよ」

「ちょっと大袈裟だなぁ。でも、美味しいね」

「これ、後で楓さんにあげてもいい?」

「いいけど、喜んでくれるかなぁ……」


彼氏のお母さんだよ? 「不味い」なんて言われたら、この恋、一気に詰んじゃうよ。


「絶対大丈夫。俺の彼女が作ったケーキだって、自慢できるよ」

「それはやめてね。『余ったからどうぞ』くらいでいいと思うよ」

「そうかなぁ、こんなに美味いのに……」


わかってないなぁ、コイツ。嫁姑には色々あるんだよ……。

……って、嫁じゃないからね、まだ⋯。って、まだだよ⋯


「ゴムベラとかふるいとか、普段使わないもの買っちゃったね」

「そうだけど、こんなに美味しいケーキが作れるならいいよ。しまっておこう」

「次の出番は、瑛祐くんの来年の誕生日かな……」

バレンタインでチョコケーキを作ってもいいかもしれない。


「あれ、誕生日って……瑛里の誕生日はいつ?」

「あ、私のはいいよ。別に」

「ちょっと待てよ。……彼女の誕生日を知らないなんて…。やっぱり俺、自分ばっかりだったな」


あ、落ち込んじゃった。

それは、君が誕生日にちょっと悲しい思い出があって、言い出せなかっただけなんだよ。

でも、あの時、私たちは、ケーキを焦がして、ちゃんと笑い合えたじゃない。


「えっとね。一月十五日、かな……。あ、でも、家族が祝ってくれるから、特別に何かしなくてもいいよ」

「OK。一月十五日ね。覚えた」

……「特別に何もしなくていい」って言ったの、聞こえてた?


でも、好きな人に祝ってもらう誕生日か。

そんなの、ハジメテかも。

     


食べ終わって、話も一段落した。

「ふう。美味しかった。片付けるよ」

片付けまでがパーティーだ。


「あ、俺もやるよ」

「手伝う」じゃなくて「俺もやる」と言えるのが、彼のいいところだと思う。


残ったケーキをラップで包んで冷蔵庫へ。皿やフォークをシンクへ。

二人で並んで、洗い物をする。瑛祐くんが洗剤で洗って、私が流す。


もう、共同作業はハジメテじゃないからね。

学校の事、アニメやプラモの話をしながら……。

なんだか楽しいな。


本当に、瑛祐くんはテレビ版から見ているらしい。しかも結構なペースで進んでいる。


「あのジオラマのシーンとか、見たよ。あれ、すごいな」

「たいしたことないなぁ〜」

「あった。確かに言ってた!⋯で。そんな事はどうでも良い、皿を仕掛けろ!」

「おぉ~。完璧だね!」


「このケーキ用の道具、どこに入れる?」

「そうだな。あ、上の戸棚を開けたらスペースがあるよ」


……知ってる。私がエイジの時、あまり使わない道具を入れていた場所だ。


開けようとするけれど――ん? 届かない。

そっか。前は百七十センチ以上あったけれど、今は十五センチ以上低くなっているんだ。


仕方なく、精一杯背伸びをしてみたら。


「あ、後で俺がやるからって、危ない――!」


洗い物のせいか、床が濡れて少し滑りやすくなっていた。


背伸びをして手を伸ばした瞬間、足が滑って身体が回転――しなかった。

瑛祐くんが、ガシッと受け止めてくれたから。

瑛祐くんは男の子の中では平均的で、決して大きな方ではない。

けれど、私からしたら充分大きくて、受け止めてもらえると、それだけで安心しちゃうな。


つい、そのまま体重を預けると、

「あ、だめだ……!」

「えっ、ごめ――」

二人でバランスを崩して倒れてしまった。


横向きに向かい合ったまま、床に倒れ込む。

全然痛くなかったのは、瑛祐くんが私を支えてくれたおかげだ。


「あ、ごめん。大丈夫?」

「う、うん。瑛里は? 怪我してない?」

「全然痛くない。瑛祐くん、支えてくれたもんね」

「いや、とっさで……。大丈夫なら良かった」

……沈黙。


「もうちょっと、このままでもいい?」

くっついて、抱きかかえられているのが、すごく心地いい。

「うん……俺も。もうちょっと、こうしてたいな」



「このまま、キスしちゃう?」

顔を上げれば届く距離。

絶対に拒否されないだろう提案をした。


返事はなかった。


代わりに、私が向けた唇に、瑛祐くんの唇が優しく触れてきた。


あぁ……。甘いよ。

さっきのケーキなんかより、ずっと。


瑛里ちゃんが、ケーキを甘さ控えめにした理由。

その後の甘い時間満喫するためさ!


ブックマーク登録や下側の「☆☆☆☆☆」をできるだけ★いっぱいにして頂けるとめっちゃ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ