93.クリスマスって?
クリスマスか……。
万年独り身だった前世の私からすると、憂鬱で、この世で最もいらないイベントだった。
けれど、今の私には、家族がいて⋯彼氏もいる。
そう。彼氏持ちなのよ⋯。ふふっ。
そして十二月に入り、カップルが確定した友達たちは、目に見えて浮き足立っている。
あっと⋯。みんな友達だよね?
「亮君と初めてのクリスマスだなぁ。どうしよう」
ゆかりは佐伯君と。
「サッカー部、勝ち抜いたら試合なんだよね」
美佳は久野君と。
「ふふふっ。渡瀬さんもラグビーの試合がありそうです」
優香は渡瀬君と。
「遥香先輩、クリスマス公演で忙しそう!」
紗友里は、文化祭の後夜祭で遥香先輩をゲット(?)できたらしい。咲き誇れ、百合の花……。
私も瑛祐くんに会っていなかったら、元の精神はエイジなので、完全に「あちら側」の人間だっただろう。
ん? 私、アキラさんが好きだったよな……。あれ?、じゃあ元々恋愛対象は男性だったのか?
でも、グラビアアイドルとかを性の対象として見ていたのは間違いないんだけどな……。
まあ、好きになった人が恋愛対象であって、アキラさんや瑛祐くんは、私の運命の人だったのだ。
アキラさんは、私の「ハハ」になってくれたかもしれない人。
……違うな。料理して食わせて、部屋を片付けて……
私は、アキラさんの「ハハ」になりたかったのかもしれない人だ。
瑛祐くんのお母さんは楓さんだけれど、楓さんは「お母さん」って感じじゃないし……。
だから今は、私が、瑛祐くんの「ハハ」になるの? かな……。
「ん? 瑛里は俺の彼女だろ?」
あ、やば。声に出ていた?
「うん。そうだね」
「でも、瑛里みたいな母さんだったら、確実にマザコンになるなぁ」
……どういう意味だろ。あんた今でも充分、楓さんに対してマザコンな気がするが。まあ、あんなに綺麗で格好良い母親はいないから、仕方ないとは思うけれど。
「クリスマスなんだけど……」
初めてのクリスマス。
けれど、うちは毎年家でパーティーをする。今年はどうしたらいいんだろう。「今年から彼氏とデートします」とは言いづらい。洸也も楽しみにしてくれているし。
「あのさ。毎年うちでパーティーするから、当日(二十五日)は一緒にいられないかなぁ……」
「あ、全然いいよ。俺もこのイベント、訳わかんねぇって思ってたし」
「うん。でも皆なんか浮かれてて、瑛祐くんはどう思ってるのかなって」
「毎年、特に何もやらなくてさ。じいちゃんがプレゼントくれてたくらいかな。それも去年から……」
あ、と。アキラさん。もういないから⋯
「えっと、楓さんは?」
「いつもクリスマスはイベントで仕事が入ってる。幼稚園くらいまでは寂しかったけど、まあ、楓さんだしな」
この親子の関係も不思議に思う。
瑛祐くんを産んだのは楓さんには違いないんだけど⋯。
「あ、でも、家のパーティーは二十五日だから、二十四日は会えるかも!」
クリスマスってどっちの日が正解なんだろう。世間は二十四日イブの方が盛り上がっている気もするけれど。
「? なら、クリスマス、俺と一緒にいられるってことじゃないのか。『全然良いよ』とか言ったけど、嬉しいかもしれない」
嬉しいってのは、嬉しいねぇ。
「うん、二十四日は一緒にいれそうだね。じゃあさ、ケーキとか作ろうかな」
「学校はもう休みだから、昼くらいにウチに来て、一緒に食材買いに行ったりするか」
「うん。そうしよう!」
なんだか、ワクワクしてきた。
*
さて、話の本筋(?)であるプラモ作りだが。
今、絶賛「塗装」の練習中である。
エアブラシの使い方を一から教えてもらっていて、これがめちゃくちゃ楽しい。
筆で塗る場合もあれば、マーカーを使う場合もある……。
プラモ作り、奥が深い。どっぷりと沼にハマってしまっている。
「お、できたね。そんな感じで色が乗せられたら大丈夫だよ。じゃあ、このキットで本番やってみようか」
瑛祐くんが差し出してきたのは、この前のジオラマ作りのご褒美でもらったキット。
『MS-14S ゲルブブ』。シア様専用の愛機だ。
高性能だったけれど、「これではガムダンに勝てない」と言わしめた、中途半端な立ち位置の機体。
でも、私は好きだった。なんたってデザインが格好良い。
「あ、そうだ。文化祭が忙しくて行けなかったけど、あのショップでジオラマ展示が始まったって連絡があったよ。行ってみる?」
「えっ、見たい!」断るわけがない。「じゃあ、デートだね!」
「おぉ、そうなるな」
なんだか、久しぶりのデートな気がする。
クリスマスはお家デートになりそうだし。
んっと、何を着ていこうかな!
クリスマスってなんだっけ?
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