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91.舞台裏と彼女の嫁


「材料、もうなくなるよ!」

「了解。あと何食?」

「あと十食! オッケー、行列整理してくる!」


オムライスカフェは順調すぎて、食材が尽き、十四時頃には完売してしまった。

三百食完食……。普通に考えて凄いな。顔面偏差値の勝利か、それともエイジ特製レシピも少しは貢献できたかな。


「やったね!」

「おう、お疲れ!」


みんなやりきった顔で、充実感に溢れている。

瑛祐くんは前日に浅野君と飾り付けを頑張ってくれたので、当日の当番はなし。というか、今日は朝から遥香先輩に拉致されている。


「福原さん。もしかして、ずっと厨房にいてくれた?」

文化祭実行委員の子が声をかけてくれた。

「あ、うん。でも、売り切れてよかったね。あとは片付けだね」

「片付けは他のメンバーでやるから、あとは文化祭を楽しんでおいでよ」


うーん。楽しむと言ってもなぁ。瑛祐くんがいないし。


「あ、瑛里! 何してんの。演劇部、あと三十分で始まるよ」

「お、ゆかり。おかえり。でも私、演劇部は行かなくていいかな……」


今、遥香先輩を見ると、自分の感情がどうなるか……モヤモヤくらいなら良いんだけど。ちょっと怖い。


「あとは私がやるから、行ってきな。藤井も頑張ってたよ!」

「うん。でも、片付けが……」

「福原さん、それはもういいから!」

「あ、ゆかりも佐伯君と回りたいんじゃ……」

「それはもうヤッたし、文化祭終わったらまたイクから大丈夫!」


もうヤッた……またイク……。

流石は「百人斬りの漢(全国八位)」だ。


なんて下らないことを考えていたら、強引に追い出された。

     



仕方がないので、舞台になっている体育館へ。


劇団の女優としても活動している遥香先輩の人気は凄まじく、体育館は既に超満員だった。


「いっぱいだなぁ……。これじゃ見られないかな」

「あ、瑛里ー! 探したよ」

ギャルの岸川紗友里さんが、手を振りながらやってきた。

「藤井がさ、瑛里のために席を取ってるって。私の分も確保してくれたから、入ろう!」

うぅ、岸川さん。ギャルだけあって圧が強い……断れない。

二人で前の方の特等席に座る。


「岸川さん……今日は、一人?」

「ん? あ、紗友里でいいよ。一人だけど、なんで?」

「あの、紗友里さん、他校に怖い彼氏がいるって聞いてたから……」

「ん、彼氏? そんなのいないよ!」


あれ? 噂はガセだったのか。まあ、本人から聞いたわけじゃないしね。


「まあ、『恋人』ならいるんだけどね」

「……恋人?」

「向こうからしたら、その他大勢の一人かもしれんけど。好きになっちゃったら、しょうがないよな」


好きになったら、しょうがない……。


確かに、もし瑛祐くんが女たらしだったとしても、好きになってしまっていたら……。いや、そもそも女たらしは好きにならないか。


「余計なお世話かもしれないけど、そんなの切ないし……」

「そうだね。でも、しょうがないじゃん」


私が口出しできる問題じゃないけれど、彼氏に胸を触られるだけでグロッキーになる恋愛初心者の私には、何も言えるわけもなかった。

 



舞台が始まった。


内容は『ロミオとジュリエット』の現代版。

ロミオ役を遥香先輩が、そしてジュリエット役を――浅野祐悟君が演じている。


なんで!? と思ったけれど、背が高くてキリッとした遥香先輩と、アイドル顔で可愛い浅野君。完璧な配役じゃないの。凄い。


瑛祐くんが作ったと思われる小道具や舞台装置が、その世界観を完璧に盛り上げている。


お芝居は一時間弱だったが、面白くてあっという間だった。


カーテンコール。遥香先輩や浅野君といった演者たちが、挨拶をして去っていく。

満場の拍手、スタンディングオベーション!


「グスッ……」

あれ? 紗友里さん、泣いてる?

「はるがざーん……!」

遥香先輩を呼んでいる? 彼氏でもない「恋人」……。


もしかして、彼女も遥香先輩の「嫁」の一人だったの!?


ハンカチを渡すと、「ありがと〜、瑛里。行こう!」と手を引かれ、そのまま舞台裏へ。

「お疲れ様ー! みんな良かったよ!」

遥香先輩が中心で挨拶をしていた。やっぱり、カッコいいな。


「瑛祐! こっちこっち。ありがとなー、凄く良かったよ。流石は私の嫁だ!」

「どうも。俺、片付け行きます」

「そんなの後でいいよ。ほら、ギュー!」


遥香先輩が、瑛祐くんにハグをしようとする。

うわ、それは私しかダメなやつ! 離れてー!

私は必死に走って、二人の間に割って入った。


「ハグはダメです!」

「えー、いいじゃん。⋯あ、紗友里もいるじゃん」

「そうですよ、遥香さん! ギューなら私に……!」

「うん、そ~する。紗友里〜! どうだった?」

「凄かったです! 惚れ直しましたよ!」

遥香先輩は、そのまま紗友里さんに抱きついて、ぶちゅーっとキスをした。


ちょっ……。

もし私が止めなかったら、今の「ぶちゅー」は瑛祐くんに飛んでいたの?


それは、万死に値する……絶対に許せんよ!


「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」

意味よくわからないけど、遥香先輩はそんな人。


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