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88.カリスマ


ゆかりレーダーによる情報。


遥香先輩と瑛祐くんとは佐伯君が中学一緒だったらしくて、彼氏の佐伯君から凄い人がいると常々聞いていたそうです。


相沢遥香先輩。演劇部二年生。

中学三年の時の文化祭での演劇が劇団関係者の目に留まり、とある有名な劇団にスカウトされた。新人女優として、将来を嘱望されているらしい。


劇団での出番が増えているため、一学期はほとんど学校に来られなかったそうだ。来年からは劇団に専念するとのことで、今年の文化祭が演劇部での最後の舞台になるため、並々ならぬ気合が入っているという。


去年は、遥香先輩の本気の芝居についてこれる部員がいなくて、出来が悪かったらしい。

「今年は、祐悟もいるし、張り切ってるらしいのよね」

「ゆうご……?」

「もう、瑛里は相変わらずだなぁ。浅野祐悟君。遠足とかカラオケとか、一緒に行ったでしょ」

「あ、あのアイドル顔の……」

思い出した。クラスのイケメン四天王の一人、浅野君だ。歌、上手かったな。


中学の時、相手役を浅野君が演じきり、瑛祐くんが舞台装置を作り、素晴らしい舞台を完成させたのだそうだ。だからこそ、彼女には瑛祐くんが必要だという事。


去年は、瑛祐くんもアキラさんが亡くなった直後でそれどころじゃなかっただろうし……。瑛祐くんには今年こそ手伝ってもらう、という想いがあるのだろう。


他にも、中学時代の演劇部メンバーが何人か入学しているとのことだった。



放課後。

「瑛里。嫌な予感がする。さっさと帰ろう」

「嫌な予感……」

何か不穏なオーラを感じる。私たち、本当にニュータイプになっちゃった?


「あ、遅かったか……」

近づいてくる存在感がすごい。これがスターになる人の器か。


「おぅ、邪魔するぜ〜」

遥香先輩が教室に現れた。……そりゃあ、誰も返事なんてできないよね。


コソコソと立ち去ろうとする浅野君を見つけた遥香先輩は、瞬間移動のようなスピードで移動して彼の首根っこを掴んだ。

「ユーゴ、ゲットだぜ。ほら瑛祐も行くぞ。今から打ち合わせだ」


そんな、Dモンゲットだぜ! みたいに言わなくても……。


「瑛里、ごめんな。しばらく一緒に帰れないかも……」

それは、やだな。

「待ってようか。うん。中間テストの勉強もあるし……待ってるね」


「おう、瑛祐の彼女。心配するなって。中間テストの間は部活できんから、すぐ返す……じゃねえな。またすぐ貸してやる」

「……もう、瑛祐くんはモノじゃないです。それに借り物でもないですから……」


ちょっと怖かったけれど、言うべきところは言わないと。これは、戦争なのよ。


「はっはっはっー。まあ、細かいことは気にするなって。じゃあな!」

私の肩をポンポンと叩いて、彼女は去っていった。


浅野君と瑛祐くんが付いて行くけれど、なんだか嫌そうじゃない。喜んでいるように見えるのは気のせいだろうか?


遥香先輩はその後もいくつかの教室を強襲して、取り巻きを増やしていった。

逃げようとした者、きっぱりと断ったつもりの者……。けれど、最後には声をかけられた人は皆従い、誰も嫌々付いて行っている人はいなかった。


カリスマ、なのか?

やっぱり、強い……私では⋯、このヒトに勝てない……。


いや、諦めるな、私。新型を手に入れてあの人に勝つんだ。


「福原さん。大丈夫だよ、相沢先輩はああいう人だから。藤井を嫁にってのは本気かもしれんけど……まあ、祐悟にも言ってるしな」

佐伯君がフォローしてくれた。


……何それ。目指すは逆ハーレムなのか?


 

瑛祐くんを待っている間、図書室で勉強しようとしたけれど、全く手につかない。相変わらず数学は難しい。


やっぱ理系は無理だな。来年はクラスが離れちゃうな……そう思うと、急に泣きそうになる。


それにしても、美人だよな、あの先輩。

数センチの距離で見た、あの瞳。強くて引き込まれそうだった。


もし男の時の私だったら、あの距離で美人に詰められたら、惚れてまうやろー! って感じだ。


くっきりとした目鼻立ち、高い身長。舞台でもきっと華があるだろう。


それに比べて私なんか、特徴のない顔だし、背だってそんなに高くない。体つきもまだまだだし⋯。


『瑛里ちゃんはねー。あと五センチ背が高かったら、その脚がぐっと活きて大スターなんだけど……。もちろん今の瑛里ちゃんも魅力的だけどね』

撮影の時、サクラさんが言ってくれた言葉を思い出す。


でも、そんな今の私を好きだと言ってくれる人がいる。


……その人のことを幼稚園の時から知っているヒト

はっきりとした目鼻立ち。百七十センチ近い身長。大人びた体つき。

皆を引っ張っていくコミュ力、カリスマ性。

私が持っていないものを、全部持っている。


モヤモヤどころじゃない感情が、私を包んでしまう。


「あー、もうっ!」

思わず図書室で叫んでしまった。

「……すみません」

でも、次の瞬間。

「待たせた、瑛里」

瑛祐くんが来て、私の名前を呼んで笑ってくれた。


私も、精いっぱいの笑顔を返す。


さっきまでの暗い感情が、さっと押し流された気がした。

あと5cmいや3cmあれば⋯。ナニがとは言わんが⋯。


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