85.膝枕ってどうなん
熟睡していたのかはちょっとわからない。けれど、表から声がして……。
起きられなくてしばらくウトウトしていると、唇に柔らかい感触が伝わってきて、目が覚めた。
「おはよ」
目覚めのキスと笑顔の破壊力は抜群だった。
幸せすぎて、もう一度気を失いそうになっている俺に、瑛里は決して抗うことができない提案をしてきた。
「枕なしで大丈夫なの?」
「あ、うん。座布団重ねてたけど、ずれちゃってたな」
「じゃあさ、コレ使う?」
瑛里は、女の子座りとでもいうのか、正座を崩して座っていた。
「コレ」と指さした先には、瑛里の膝がある。
「いいの?」
聞き終えるのと同時に、俺は瑛里の膝に頭を預けてしまっていた。
幸せだなぁ……。
*
「コレ使う?」ってのは冗談のつもりだったけれど、食い気味に頭を乗せてきた。まぁ、良いけど。
「大丈夫? 硬くない?」
自慢の脚ではあるけれど、こういうのはお肉があって柔らかい方がいいと思われる。もっとも、私の脚は「綺麗」とは言われるけれど決して細すぎないので、クッション性は大丈夫……かも。
「うん。大丈夫っていうか、頭重くない?」
重いよ。普段、こんなところにモノを置かないもん。でも、これは「幸せの重み」だ。心が喜んでいるのがわかる。
「全然重くないよ。……でも、そろそろプラモ作る?」
そう聞くと、瑛祐くんは目を瞑ってこう答えた。
「もうちょっとだけ、こうしていたいな」
「はいはい。もうちょっとね」
まぁ、もうちょっとだけなら、私もこうしてたいな。
どれくらい経ったかな。流石に足が痺れてきた。
「ごめん、瑛祐くん。ちょっと痛くなってきた」
バッと起き上がる瑛祐くん。
「大丈夫か? ごめんね、調子に乗っちゃった……」
優しいんだよね。労わってくれると、つい嬉しくなってしまう。
「ちょっと痺れてきただけだから、大丈夫だよ」
「少し休んでて。俺、準備してくるから」
「……もう大丈夫。私も作業したいから」
二人はアトリエに入り、作業を開始する。
私は水陸両用のヅゴッグ、赤いシア専用機を組んでいた。
「それはまだ汚しを入れなくていいよ。ちょっとやりたいことがあって」
瑛祐くんが私の手元を見て言った。もうすぐ完成だ!
「はい、師匠!」
瑛祐くんの方は、連邦の量産型ヅムを作っていた。
「できたよ」
赤いヅゴッグが完成。
「俺もできた」
量産型ヅムも完成。
「これで何するの?」
「このシーンを作ろう」
瑛祐くんが出してきた指示書を見て、私は目を見開いた。こ、これは……!
シア様の赤いヅゴッグが、連邦の地下基地で量産型ヅムのボディを爪で貫くあのシーンだ。
初代ガムダン随一の名場面。
ショップが作っているジオラマというのは、アマゾンの連邦軍本拠地らしい。なら、このシーンは必須だ。
「ど、どど、どうやるの!?」
思わず立ち上がって、前のめりで質問してしまった。
「ははっ、瑛里はやっぱり初代のやつが好きなんだね。まあ、見ててよ。まずヅムのボディをくり抜いて……」
ニッパーや彫刻刀のようなナイフなど、様々な道具を駆使して、哀れなヅムの腹部がくり抜かれていく。
「これくらいでいいかな。ヅゴッグ貸してみて」
「うん」
瑛祐くんに渡すと、彼は爪を閉じた状態でズボッと腕を貫通させた。
「よし、上手くいった。……こんな感じかな。有識者の瑛里はどう思う?」
ポーズを付けて聞いてくる。有識者って……私はただのアニメオタクですが⋯。
「ここらへんの角度を、もうちょっとこう……」
有識者として、譲れないものがある。
「こうかな?」
「あー、そうそう! すごい……」
アニメの名シーンが、卓上に再現された。
「すごいのは、これからだよ。瑛里はヅゴッグの仕上げを頼む。俺はこの『やられた穴』をリアルにするから」
装甲を貫いて傷んだ爪の表現は、瑛祐くんがやってくれた。
私は足元に土汚れを付けて、つや消しコーティング。ここまではもうお手の物だ。
「そろそろ帰るね」
「うん。あ、送っていくよ」
「でも、作業の途中じゃない?」
邪魔はしたくないのだが。
「瑛里のこと、送っていきたいんだよ。……それに、パテが無くなったから買いに行くついでだし」
「送っていきたい」とはっきり言ってくれるのも嬉しいし、用事を見つけて私に気を遣わせないようにしてくれるのも…
本当に嬉しいな。
プラモ作ってると、一度はやってみたいシーンの再現ですよね。
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