81.白川優香争奪戦
「うっし!」
渡瀬君、その筋肉は伊達じゃないねぇ。強い。
「おっし!」
佐伯君も、流石は百人斬りの漢……。強い。
決勝に残ったのは、クラスが誇るマッチョの2人。
って、なんで佐伯君が参戦してるんだよ。
「亮くん。優香と渡瀬君をくっつけるために協力してね」
ゆかりが佐伯君に何か言っていた。
「? おう。俺も協力するぜ」
とか言っていたくせに……。
「佐伯、負けねえからな!」
渡瀬君が叫ぶと、何故かスイッチが入ってしまったらしい。
「渡瀬……。勝つのは俺だ!」
戦う漢の目になっている。
「亮くん……?」
ゆかりが「違うって」という顔をしているけれど、もう遅い。
何故か上半身を脱ぎだす二人。佐伯君は高身長で無駄のない美しい身体。渡瀬君は、これぞマッチョ、ラグビー選手らしい分厚い筋肉。
ゴクリ……。
……ん? 漢たちの筋肉を見て興奮なんかしてないんだからね!
白川さんは人一倍目をキラキラさせていたけれど、まあ、彼女ならいいか。
「レディ・ゴー!」
「ふぬっ!」
「ぐおっ!」
男と男の意地のぶつかり合い。二人の力は拮抗していた。
勝敗を決したのは、「渡瀬君、頑張って!」という白川さんの声だったのか……。
それとも、「もう、亮君のバカ。知らない!」と呆れたゆかりの声だったのか。
「じゃあ、白川さんと渡瀬君のペアでいきます」
白川さんはなんだか嬉しそう。……良かったね。
「ウチのバカ彼氏が本気になっちゃうから、どうなるかと思ったけど、うまくいったね」
ゆかりが言っていた。佐伯君が暴走した末に、最後は力を抜く作戦だったのか? よくわからないが……。
「戦いとは、常に二手三手先を読んで行うものだもんね」
そういうことだろ、ゆかり参謀!
「…………」
何故黙る、ゆかり。
帰り道。自転車を押す瑛祐くんと二人で歩く。
ふんふん。ふふふ〜ん……けど、自転車って邪魔だねぇ。
「瑛里……どうした? 機嫌いい?」
「まあね。あ、でも、プラモで瑛祐くんのお手伝いができるの、嬉しいかも」
本当は、クラスのみんなの前で「俺の彼女」と言ってくれたことが一番嬉しかったりする。
「ゴッズとマッガイ、ヅゴッグのキットはアトリエに届いているはずだ。早速今日から始めよう」
「了解した、師匠! ……あ、そうだ」
自転車を挟んだ位置から、彼の隣へ動く。
「こっち側だと、邪魔な自転車ないね」
瑛祐くんの両手はハンドルで塞がっているけれど、肘に手を絡めることはできる。
「うん。……アリだな!」
「アリアリで!」
ちょっと照れるけれど、二人で笑って歩いた。
アトリエに着くと、置き配で数個の箱が届いていた。
「これが指示書だよ」
へー、大体の仕上がりの目安が書かれている。
ハロウィンからクリスマスにかけての展示用。ジオラマの制作もあるらしく、九月中に五体。
納期が短いので、基本は成形色を活かしていいとのこと。
「瑛祐くん、成形色って何?」
「プラスチックの元々の色のことだよ。今回は全塗装しなくていいから、なんとかなるかな」
「へぇ~。じゃあ私が作ったヅゴッグのレベルでいいの?」
「うん。ちょっとだけ手直しはするけどね。……いいよね?」
私が作ったプラモに、瑛祐くんが手直し。……いい、どんどんやって欲しい。
あ、でも処女作の「シア専用ザフ」はそのままがいいかな。なんとなくだけどそう思う。
……処女。そうだよ、君が「そっち」に手を付けるのは、まだ早いのよ!
まあ、キスしたい気持ちもあるし、真剣に求められたら断る自信はないけれど……。
そ、そんなことはいい。
「とりあえず効率重視で、全パーツをランナーから切り離して、ゲート跡を消して、洗浄まで一気にやろう」
「はい、師匠。でも、ごっちゃにならない?」
「ランナーごとに管理しておけば問題ないよ。俺を誰だと思ってるんだ」
親指を立てる瑛祐くん。カッコいい……。あ、じゃなくて、ここはボケるところだね。
「えっと、瞬殺の魔術師、エ……」
「コラっ。A君言うなって言ってるだろ!」
コツン、と優しいツッコミ。
これじゃあ「ぶたれた」とは言えないけれど、この優しい男は、きっとこの先ずっと私をぶつことなんてないだろう。
だから、あえて言ってやりましたよ。
「ぶったな! 親父にもぶたれたことないのに!」
親父にぶたれたことある方も無い方も⋯
ブックマーク登録や下側の「☆☆☆☆☆」をできるだけ★いっぱいにして頂けるとめっちゃ嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。




