79.学校行事よりも、プラモ
九月に入ると、学校行事が目白押しだ。
体育祭に中間テスト、文化祭があって、さらには期末テスト。
まずは高校生にとっての一大イベント、体育祭がある。……普通の高校生なら、一大イベントだけどね。
私達は……違う。
お昼ご飯は二人で食べているけれど、学校行事の話題は一切出ない。
「最近さ。お弁当の中身もマンネリしてきたよね?」
「そんなことないって。大丈夫だよ」
「なんか、食べてみたいものとかある?」
「んー。まあ、俺は瑛里の料理なら何でもいいよ」
私の料理なら何でも、というのは嬉しい。嬉しいけれど、それは零点の回答だね!
「えー。なんか、奥さんに『ご飯どうする?』って聞いて一番嫌われる回答が、何でもいいって言う旦那さんなんだって」
「ぐっ。じゃあ、えっと……」
「このままじゃ、嫌われちゃうねぇ」
「え、嫌だよ……。って、瑛里、まだ奥さんじゃないじゃん。俺も旦那さんじゃないから、セーフ……」
「『まだ』って言った?」
「……言ったかな? ……でも、まあ、このまま付き合っていったら、そういうことも……なぁ?」
そういうことも⋯なんだよ?
「じゃあ、『まだ』ってことで。いずれ……か……」
流石に、自分で言っていて恥ずかしくなってきた。
「で、何食べたいの?」
「うーん。瑛里が食べたいやつ」
「それも、カップルの彼女が怒っていいセリフだよねー」
「くっ……。じゃあ、カレーを」
「お弁当にカレー……。あ、でもカレーって作ったことなかったっけ?」
「うん。カレー、好きなんだよ」
「うわー。言ってくれたら作ったのに」
エイジとアキラで試行錯誤を繰り返した特製カレーのレシピがある。……けれど、そろそろ「瑛里ちゃん特製」のレシピを作っていくべきかもしれない。今の私は、エイジじゃなくて瑛里なんだし。
エイジじゃなくて、瑛里の料理で、瑛祐くんに好きになってもらわないとね。
「そういえば、次は何を作ろうかな?」
「ヅゴッグ、できたもんな。カッコよくできてたよ」
「ふふふっ。瑛祐くんのおかげだよ」
汚し塗装と言っても、いろんなテクニックがあって、彼はそれを惜しみなく教えてくれた。
土汚れ、水垢、錆びついた鉄板に塗装の剥がれ。それぞれに技法があって、めちゃくちゃ面白かった。ウェザリング、奥が深い……。
「瑛祐くんは、次は何を作るつもり?」
「あのショップがジオラマ展示をするらしくて、手伝ってくれって言われてさ」
「へぇ~、すごいね」
ショップからの製作依頼だなんて、もうプロじゃないか。
「何体かプラモを組んで、ウェザリングするんだ。良かったら、瑛里のヅゴッグも使うよ」
「えっ、私の……? ダメでしょ、クオリティが全然足りないよ」
「大丈夫だよ。誰が教えたと思ってるんだ」
「……瞬殺の魔術師のA君?」
瑛祐くんは、弟の洸也世代のカードゲーム・デュエリストたちの憧れの的だ。その名も『瞬殺の魔術師・A君』
「……A君言うなし。怒るよ!」
えっ、怒られたくないけれど……。瑛祐くんに怒られたことなんてないから、ちょっと新鮮かも。
「えー。カッコいいのに〜」
「……。カッコいい? 瑛里にカッコいいって思われるなら……」
「あ、うそうそ。あの時は、チラシを見て『なんか凄いの来る!』って思ってたから」
「クソっ。やっぱクソダサいよな。……って、言ったな!」
おでこにピン、と……。いや、チョンって感じの優しいツッコミ。
「ぃて……。でも、瑛祐くんだからアリだよ。洸也もめっちゃ尊敬してるし」
「もう、この話は終わり。次『A君』って言ったらホントに怒るからね」
「えー、どうしよっかな〜。瑛祐くんが怒っても、私が逆ギレして『もうお弁当作らない!』って言ったらどうする?」
そ、そんなこの世の終わりみたいな顔しないで⋯。
「ぐっ……。ごめんと言うしかない……のか……」
私が笑うと、瑛祐くんも笑ってくれた。
大丈夫だよ。私があなたに食べてほしいんだから。
ケンカしたとしても作ってくると思うよ!
安心してね。
「そうだよ。次のプラモ作りなんだけど」
「うん。何作ろっかな〜」
「それで、ジオラマ用のプラモ作りを、瑛里に少し手伝ってもらえないかな?」
「えっ、それプロの仕事でしょ? 無理だって、足引っ張っちゃうよ……」
「大丈夫。できる作業をやってもらうから。……何か、瑛里と一緒に作るってのをやってみたい、なんて……」
何それ……。なんだか楽しそうで、ドキドキする。
「一緒に……か……。いいかも」
……ハジメテの共同作業ってヤツですか?
結婚⋯。するのだろうか⋯ハジメテの共同作業⋯。
とりあえずプラモ作ろう。
ブックマーク登録や下側の「☆☆☆☆☆」をできるだけ★いっぱいにして頂けるとめっちゃ嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。




