77.瑛祐の夢
なんでケーキ、焦げちゃったのかなぁ……。
でも瑛祐くん、少しは元気になったかな。焦げちゃったことで、なんだか大爆笑して笑い合えたし、きっと良かったんだよね。
元気……あ。
元気といえば、誕生日プレゼントに「ア・タ・シ」的な何かをしてあげたいって思っていたこと、すっかり忘れていたよ。
……とはいえ。
心のどこかでホッとしている自分もいる。
なんだろうな。ずっと男となんて……って思っていたのに、相手が瑛祐くんだと「いいかな」って少しだけ思う……。キスもしちゃっているし。
例のものを失ってからもうすぐ十六年。
瑛祐くんの「瑛祐くん」は、どんなだろうと、少しだけ興味がわいてきている。
あ、着いた。この話は終わりにしよう。
とにかく、まだ……「やらせはせんぞ、やらせはせん!」のだよ。
次の日。朝の一限目を使って、二年からのクラス分けについての説明があった。
数学が苦手になってしまっている私。雑誌モデルの合間にさせてもらっている編集の仕事が楽しくて、将来はモノを書く仕事をやりたいと考えている。
……となると、文系だよね。
隣で難しい顔をしている瑛祐くんは、数学が得意。理系だよね。
二年からクラスが別々になってしまうかもしれない。
嫌だなぁ。せっかく付き合って、二人で一緒にいるのが楽しくて。席替えだって拒否なのにね。
お昼は「秘密の場所(ただの中庭)」で、私が作ったお弁当を二人で食べる。
今日は卵焼きとのり弁当だ。
「やっぱ、瑛里の卵焼きがサイコーだな」
「ありがと。あ、ごはん粒ついてる」
口元についているごはん粒を、手で取ってパクっと食べた。
「あ、ごめん。って、食べたの?」
「えっ、あ……」
無意識に食べたけれど、急に恥ずかしくなってきた。
「いや、ありがとう。なんか、嬉しい」
瑛祐くんが笑うので、肘でエイっと突く。
「なんだよ、それ……」
照れ隠しだよ、もう。
楽しいけれど、聞かなきゃダメなことがある。
「あ、今日、クラス分けの説明あったね」
「うん。どうしようかな」
「瑛祐くんは、理系だよね?」
「まあ、そうだな。俺、プラモ作りは趣味としていいんだけど、本物のロボットを作りたいんだよな」
「ロボット……リアルなやつ?」
「うん。それでさ、国立の科学技術大学に進学しようと思う」
国が技術の最先端を結集させている大学で超難関と聞いている。ここから1時間もかからずに通えるが⋯。
「すご……。それって、瑛祐くんの夢ってこと?」
「そうだな。夢というより、目標って感じだ」
……その年でそこまで考えているのか。俺なんて、四十で死ぬまで何をしたかったのか。だからこそ、夢があったアキラさんに惹かれたわけだけれど。
「私、応援するね」
つい、手を握ってしまった。
「うん。瑛里はどうするの?」
「私は……。モデルの仕事も雑誌の仕事も続けるつもり。今はバイトだけど。数学苦手だし、文系になりそうだよ」
「そうだよな……」
「うん。クラス離れるの、嫌だなぁ」
「俺も嫌だけど……。でも、瑛里に『離れるの嫌』って言ってもらえて、ちょっと嬉しいな」
「ん? なんで?」
「いや、なんか俺ばっかり『好き』って言ってるみたいで……」
「え? 何言ってるの……」
「いや、なんというか……。もういいけど」
何言っているんだろう。今だってこっちから手を握りにいったのに。
「……。拗ねてる?」
「拗ねてない」
プイッ、とあっちを向く瑛祐くん。
「拗ねてるじゃん」
「拗ねてないから」
こっちを見直す瑛祐くん。さっき夢を目標だと語った彼は、やっぱりカッコいい。もう、仕方ないなぁ。
エリ、いきまーす!
チュッ。
「な……」
「ちゃんと好きだから、心配しなさんな」
自分からキスしておいてなんだが、顔から火が吹きそうだ。
攻撃力抜群じゃねえの、コレ何の装備だよ。
攻撃力抜群だけど、自分も相当のダメージ受けてしまいます。
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