71.運命とは
「プラモ作ったり、カードゲームくらいしか取り柄ないけど、ホントにいいの?」
ちょっと楓さん。すぐ隣に本人がいるんだから……。
「うるせえ。俺だって頑張ってんだよ」
だから、私を間に挟んでケンカしないで。
「でも、カワイイ彼女ができて良かったじゃないの!」
「その、まあ、それはそう」
「ちょっと瑛祐くん。そんなことないから」
カワイイというのは勝手な自己評価で……楓さんのような本物の美女に言われるとツライ。
てな感じで、和気あいあい?と歩いていた。
お墓に行く前に、駅前の花屋に寄って、お供え用の花を四束買っていた。
あれ? お墓って一対だろうから多い? と思ったけれど、あまり深くは考えなかった。
それよりもだ⋯。
「あなたも瑛里ちゃんに、花束の一つでも贈れるようにならないとね」
「それはちょっと照れるな……」
いや、めっちゃ照れるからやめようね。
「瑛祐くん。私は花より団子だから、いらないよ。大丈夫」
瑛祐くんがホッとした表情をみせる。
「だよな」
うん。と頷こうとしたんだが⋯
「瑛祐。だからあなたはダメなの。そんなの遠慮してるだけなんだから、真に受けちゃダメ」
「……そうなのか?」
「いや、ホントにいらないから……」
本当の女の子だったら、嬉しかったりするのかな。
楓さんが笑っている。
「若いって良いわよね」
からかわないで欲しいです⋯。
お墓に線香をあげて、手を合わせる。
アキラさんのことは、あの時たしかに見送ったはず。だからこんな所にいるはずがない。でも……。
『葬式をあげて墓まで作った奴に見送られるなんてな!』
アキラさんはあの日、笑ってそう言って旅立っていった。
私、自分のお墓を作ってくれた人のお墓参りをしている? ホント世の中わかんない。
祈っていると、言葉が聞こえる気がした。
「君が瑛祐と恋人になってくれて、本当に良かった」
そう想いたいだけかもしれないけれど、本当に聞こえた気がしたんだ。
「君が女の子になって生きてると知って、瑛祐と同じ高校で同じクラスにして、あ、俺と出会った時と同じような演出も良かったろ?」
……最近コラムとか書かせてもらえるようになって、妄想がすぎるよね、私…。
「まあ、君が女の子になったんだ。それに比べれば大した奇跡じゃないよ」
……夢にはもう出てこないって言ってたっけ。
私の中で、アキラさんは生き続けているのかな。でも、そんなイタズラを仕掛けるような人だったよなぁ。
色々、振り回させた日々、懐かしい。
「さて、瑛里ちゃんには関係ないんだけど……。ちょっと待っててね」
「あ、そっか。もうじいちゃんいないもんね」
「たまに来て掃除とかしてるのよね。これからは瑛祐も手伝ってね」
「うん。じいちゃん大切にしていたもんね」
隣の区画に、小さなお墓があった。
「こっちは?」
瑛祐くんに聞いてみる。まさかとは思うが……。
「じいちゃんの大切な人のお墓。俺が生まれる前に亡くなったそうだけど。あ、写真見たっけ?」
……。それって、俺じゃないか。
「ねぇ。楓さんって、この人のこと……」
「ん? あ、……。俺もよくわからないけどね」
楓さんは、花を差し、線香をあげて、手を合わせた後、振り返って苦笑いしながら言った。
「まあ、パパが恋した人なんだけど……。ママが出ていっちゃったのは、この人のせいって事かもしれないけど」
そう聞くと、きゅうっと胸が痛くなる。楓さんは続けた。
「悪いのはパパ。この人は悪くないし、パパがあの工房を立ち上げたのも、瑛祐の父親代わりができたのも、この人のおかげだと思っていて……。ちょっと難しいよね」
「……、複雑⋯なんですね?」
「まあね。二人とも許したわけじゃないけど、感謝はしてるのよ。死んじゃったら、そこはもう……感謝が残るというか……」
楓さんに笑顔が戻った。
「まあ、瑛祐にはあんなダメな大人達にはなって欲しくないんだけど、どんどん似てきちゃって困ってる」
「じいちゃんは、ダメな大人なんかじゃないよ」
楓さんは小さな声で呟いた。
「まともな大人なら、ちっぽけなプライドの為にくだらない嘘ついたりしない……」
楓さんの目に、涙。
プライドの為の嘘……?
楓さん、全部知っていたのかな。
恨んでいる人の墓参りはしないだろうし……。
胸のつかえが少し軽くなる気がした。
うん。来て良かった……。
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