69.お父さんの哀愁
うぅ、このままだと、お父さんと気まずくなってしまう……。
お父さんは優しくて責任感があり、ちゃんとした大人だ。アキラさんや、かつての俺とは違う。前世含めて、尊敬する人ナンバーワンだからこそ、このままじゃダメだよ。
ただ、娘を持つ父親の気持ちか……。もっと前世で経験しておくべきだった。まぁ、童貞だったはずなので、そもそもの前段階が....。
アキラさんは楓さんの結婚話を嬉しそうにしていたけれど、その境地までは、ウチのパパはまだ達していないようだ。
お風呂から上がると、お父さんは一人でテーブルに座り、ちびちびとお酒を飲んでいた。
背中に漂う哀愁は、私のせいじゃないよね……。
もう夜も遅いので、ツナ缶で軽いおつまみを作って差し出す。
「どうぞ……」
娘の手作り料理だ。感動して食べるが良い。
とはいえ、私が料理を手伝うのは日常なので、感動も薄いか。
「ありがたくいただくよ」
と言って、お父さんは一口食べた。
「美味い。美味いなぁ……」
……泣いてる? まさかね。んな訳ないか⋯。
「良かった」
「なんか、あんなにちっちゃくて、男の子みたいだった瑛里がなぁ……」
小さい時の話なんて、なんというかウザい。……いや、今はしんみりするところだよね。
「泥んこで遊び回っている時は、嫁の貰い手なさそうだなって安心してたんだけどなー」
やっぱり、ウザいなコレ!こうやって娘は、父親を⋯。いやいや、尊敬する人だって⋯。
「はいはい。いい加減にしてね。私、寝るから」
「瑛里。幸せにな……」
どこの世界線に行ってしまったんだ。嫁の貰い手のあたりから話が飛びすぎだって。
「まだまだ嫁なんて先だよ……」
っていうか、俺が嫁なんて⋯
「だってさー! スカートとか絶対にはかなかった瑛里がさー、浴衣で着飾って、駅でオトコと……!」
リビングでテレビを見ていたお母さんと洸也が反応した。バタっと音がした後、テレビの音がやんでいる。
「ストーップ! それ以上は言っちゃダメ」
「お父さん、詳しく!」
お母さんがいつの間にか後ろに……。洸也もそばにいる。
「やっぱりねーちゃん、A君と付き合ってんじゃん」
……いや、付き合うことにはなったけども!
「もう知らない。おやすみ!」
敵前逃亡してしまった。敵前逃亡は処刑らしいけれど、今の私にはこれしかない。
案の定、欠席裁判が始まってしまい、その後しばらくリビングの話し声が止むことはなかった。
*
次の日。アトリエに来た。
デカールを貼り終え、トップコートを吹いて『青い巨星のグク』は完成した。
シア専ザフ、そしてグク。二体を並べると……良い。うん、最高に良い。
これぞエモいってやつだね。
「次はヅゴッグだね」
「はい、瑛祐せんせい!」
「せんせい……師匠じゃなかったのかよ。まあ、いいけど。じゃあ、開けるね」
……。箱も小さかったけれど、パーツ数も少ない。これならすぐにできるかも。
「今度は『ウェザリング』をやってみる?」
「えざりんぐ?」
「ウェザリング。汚しってやつだよ」
「汚し……なにそれ、やってみたい!」
よくわからないけど、汚れプラモ?面白そう。
「オッケー。まずは素組みしてみようか」
ヅゴッグの組み立て開始。
今回は青い量産型ヅゴッグだ。赤いのも作ってみたいけれどね。
ヅムのボディに爪を貫通させるアレ、やりたい。
『さらに、できるようになったな、ガムダン!』
「え、なんか言った?」
「いえ、こっちの話。そうだ、お昼ご飯作るね」
頷いた瑛祐くんの笑顔。これが見たいんだよ。
「昨日、ソース味が多かったから、今日はお醤油で焼きうどんを作ってみました。召し上がれ」
「うへぇ〜、めっちゃ美味そう! いただきまーす」
ズルズルとすごい勢いで食べだす。
「あ、味はどう?」
「文句なしに美味い……あ、もう食べちゃった」
私はまだ四分の一も食べてない。相当お腹が空いていたらしい。
「あ、私こんなにいらないから、半分取る?」
「いいの? 遠慮しないよ!」
「はい、どうぞ」
私のお皿から焼きうどんを分ける。
「ありがとう!」
「あ、今さらなんだけど、お箸そのまま使っちゃった。食べかけだし……」
「ん? 何か?」
「いや、その、間接キス的な……?」
「いや、気にしないっていうか、むしろご褒美というか」
ご、ご褒美だと。ちょっと顔が赤くなる。
「バカなこと言ってないで、食べよう」
そう言って瑛祐くんの方を見ると、彼の顔が近づいてきて……。
チュッ。
「なに……すんの」
キスしやすいように唇を尖らせておいて、「なにするの」はないか。
「いや、瑛里がなんかカワイイこと言うから……」
……こ、これが若さか!
間接キスでドキドキしちゃう方も、もっとこうガッとイケよと思った方もブックマーク登録や下側の「☆☆☆☆☆」をできるだけ★いっぱいにして頂けると嬉しいです。




