表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/92

67.恋の片道切符


「片付け、終わったね」


二十二時前、ブースの片付けが終わり、後は車への積み込みだけになった。


「あ、瑛祐。十時過ぎちゃうから後は任せて。曜ちゃんもいるから大丈夫よ」

曜一朗サクラさんやKaede、プリズムの社員たちがテキパキと動いている。


「瑛里ちゃん、本当にありがとう。ゆかりちゃんにもお礼しなきゃね」

「ゆかり、Kaedeさんの服、めちゃくちゃ気に入ったみたいですよ」

「あ、じゃあ今度、新作をプレゼントするって伝えておいて」

「ありがとうございます。ゆかり、喜びそう」


……。今頃あのイケメンの「百人斬り」、その百一人目になって喜ばされているかもしれないけれど。

佐伯くん、本当に一筋でやるんだよね? ゆかりはもう大切な友達なんだから、泣かせちゃダメ、怒るからね。もう一度釘を刺しておかなきゃ。


「瑛祐、瑛里ちゃんを送っていきなさい」

「おっけー。じゃあ、行こうか」

「お疲れさまでした」

帰り道。駅までは歩いてすぐだけれど、瑛祐くんが付いてきてくれた。


「楽しかったね」

今日はモデルだったけれど、メイクはほとんどしていない。「浴衣を着てこんな感じになれます」というのがテーマだから、綺麗すぎてもダメなのだ。ただ浴衣に合わせて髪はアップにしているから、うなじが少し露出している。


「そうだ。今日のこれ、どうかな?」

くるりと回って見せてみる。

「うん、似合ってる……。か、かわいいです」

「ん。なんで敬語なん?」

ははは、と笑い合う。


改札の前。

「じゃ、……」

と言いかけて、彼が切符を買っているのに気づいた。

「俺も乗る……」

「えっ、ってもう買っちゃったんだ」

「うん、買っちゃった」


それは、たぶん「恋の片道切符」だね。

切符というのは、行きたい場所がある時に買うものだ。君が今買ったのは、私と一緒にいたいから。目的地のない片道切符なんだよ。


……やっぱり、君をここまでにしてしまった責任は取らないとな。うん、想いを受け止めるよ。

大げさだけれど、そんなことを考えてしまった。


電車は夏祭りの影響か、割と混んでいた。そうなると、隣にいてくれる安心感が違う。

「付いてきてくれて、ありがと」

ほっぺにチュくらいはしたい気分だけれど。

「なんかさ……ナンパされたって聞いたよ」

「うん。ゆかりがね、可愛すぎたんだよ」

「いや、俺からしたら瑛里なんだけど……。でも、俺じゃ、佐伯みたいにできないから」

「ん? 大丈夫だよ。でも佐伯くん、カッコよかったね」

……。いや、違う。そんな事言いたいんじゃない。

「俺……。あいつみたいにカッコよくないし、強くない。こんなんじゃ瑛里を守れないなって」

……ん?

「だから大丈夫だってば……」

「瑛里も不安だよな。俺みたいなインドア派じゃ……」

「瑛祐くん」

「プラモ作るくらいしか……」

「だから、瑛祐くん!」

「あ、えっ。ごめん」

「瑛祐くんはさ、自分がどんなに怖くても、私を置いて逃げないよね。お化け屋敷でも、プールのスライダーでも。今日も一緒に電車に乗ってくれているし」

「うん。でもカッコ悪いとこ、いっぱい見せた……」

「それで、私には十分なんだよ!」

繋いでいる手に力を込める。しっかりと受け止めてくれる。


改札を一緒に出た。出たところに、人目につかない凹んだスペースがある。

ボッチは学校の中庭もそうだけれど、こういう場所を見つけるのが得意なのだ。


「こっち」

「うん」

「ねぇ。ここなら誰も見てないよ」

「えっ?」

「送ってくれて、ありがと」

「うん……」

瑛祐くんの胸に手を当てて近づく。彼の手が私の肩と腰を支える形になる。

優しく抱かれて、心地よい。ずっとこうしていたいな……でも。


「ラブコメなんかだと、花火の下で……なんだけどね」

「う……ん。瑛里……」

「実は、ナンパされた時、本当は瑛祐くんに助けてほしかったんだよ」

「ごめん。今度は絶対、助けに行く」

「って、無理じゃん。ブース内で忙しかっただろうし、気づけないって。ニュータイプじゃないんだし……」

「ははっ。いつもの瑛里だね」

ひっつきながら笑い合う。

笑顔が見たくて顔を上げると、見下ろしている瑛祐くんと目が合った。

ずっと私を見ていてくれたのかな。

初めての時は、私からだった。

だから、今度は――。


目を瞑って、少し顔を上に向ける。唇を⋯。

ここからは、瑛祐くんからお願いね。



……何秒経っただろう。ずっと⋯。このままで良いな。


コツンとした、最初のキスとは違う。なんだか、お互いの気持ちを確かめ合うような。

とても温かくて、気持ちの良いキスができた。


ここであまり言葉はいらないですよね。


という訳で、ブックマークと評価のおねだりだけお願いします。

めっちゃ励みになりますので⋯。


すでに、入れていてくれている方、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ