表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/92

62.浴衣って何が良いのか


家事の手伝いは、お母さんとの貴重なコミュニケーションの時間だ。


最近、私に人生初の彼氏ができたからって暴走気味だけど……。あの「0.01」には、私……流石の俺でも腰を抜かした。


「瑛里。夏祭りはどうするの? 学校の近くであるんでしょ?」

「えっ? 行かないよ。」

「……なんで。この流れで行かないとか、やっぱ変なだねぇ。」

「意味分からん。夏祭りに行かなかったら変なコって……」

「お付き合いして、毎日のように会いに行って、プール行って、避妊具まで準備して……。もう行くしかないやん!」

「変な関西弁になってもダメ……。大体、アレを準備したのはお母さんじゃん。」

「お、ツッコミ。のってきたねぇ。」


「楽しそうだね」

急にお風呂からあがってきたお父さんが参戦してきた。……おぉ、避妊具のくだり、聞かれてないよねぇ。

「お父さんも瑛里の浴衣姿、見たいわよねぇ?」

母の無茶振りにも、父は「見たい! ……が、瑛祐くんと行くんだろ?」と乗ってくる。この夫婦、やっぱりマブなのか。


浴衣の撮影はとっくに終わってるし、着ることもない。

「浴衣なんか着ないし、瑛祐くんとも行かないから……。」

「あ、でも、プリズムで『Kaede』ブランドの浴衣イベントをやるみたいだぞ。お前も呼ばれると思うぞ。」


……流石はお父さん、情報が早い。

その直後、本当にバイト先から「夏祭りの日に働いてほしい」と連絡があった。

『Kaede』ブランドの浴衣即売会と、着付けイベント。どうやら私の夏は、まだ終わらせてもらえないらしい。

      *


「そうそう。ピンセットでずらして……」

今日は、アトリエで瑛祐くんにデカールの貼り方を教えてもらっている。

「そう。それから綿棒を使って……」

教えてもらう時は距離が近くて、ドキドキしてつい手が震えてしまう。女子高生の繊細な乙女心、こういう時は不便だ。


「あ、破けちゃった……。」

うーん、難しい。

「最初は誰でもそうだよ。予備はいっぱいあるし、どんどん貼っていこう。」


……優しい。こういうところ、本当に好きだな。


「瑛祐くんは、どれくらいで失敗しなくなったの?」

「今でも失敗する時はするよ。でも、最初にデカールを貼ったのは五歳くらいだったかなぁ。」

うわ、アキラさんの英才教育……。そりゃあ上手いわけだ。


「あ、今度はズレて貼っちゃった。」

「乾くまでなら修正が効くから。貸してみ。」

真剣な眼差しで直してくれる横顔。……格好良いな、こいつ。


「そういえばさ、瑛里って夏祭り行くのか?」

「えっ? なんで……」

「人混みが嫌だとか言って、行かなさそうだけど。」

「さっすが。自分の彼女のこと、よく分かってるね!」

言ってて恥ずかしくなった。そうなんだよ、私、こいつの彼女なんだ。


「いや、楓さんが『瑛里ちゃん、浴衣で行くわよ』って言ってたから……。」

「楓さんが? ……あ。」


Kaedeブランドの浴衣。今年初めて作ったから浸透していないと聞いたな。それで即売会か。

でも、もう八月半ば。今さら浴衣なんて売れるのか……?


そう思っていたら、サクラさんが息巻いていたのを思い出した。

「実際に歩いている姿を見せれば売れる! SNSで拡散して、八月下旬の全国の花火大会に間に合わせるのよ!」と。プリズムも全面協力するらしい。


「でさ、瑛里が行くなら、俺も行こうかなって。」

「……午後五時くらいまでバイトらしいから、その後なら……」

「いや、俺も手伝えって言われてるから。今回、うちの母さんもだいぶ張り切っているみたいなんだ。」

親子で駆り出されるわけか。

「瑛祐くんさぁ。浴衣って、男子的にどうなの?」

「ん、どういう意味?」

「いや、水着は分かりやすくテンション上がるだろうけど、浴衣ってどうなんだろうなーって。」

「……俺はさ。ぶっちゃけ、瑛里以外に興味ないから。瑛里以外の水着にも興味ないし。だから、瑛里が着るなら、俺は瑛里の浴衣姿が見たい。」

嬉しいけれど、ウソはいけないよ。私だって、可愛い子の水着は見たいもんね。

「でもさ…ゆかりの水着姿、ジッと見てなかった?」

「……い、いやぁ。み、見てないんだけどな~。」

「そっか。胸元、あんなにガッツリ開いてたのになー。残念。」

「えっ。そんなだったっけ……? もう少し見えなかったような……」

「ちゃんと、見てたねぇ~!コラ。」

ペチペチと瑛祐くんの背中を叩く。


……なにこれ。恋人同士のじゃれ合い…。すごく楽しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ