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6.ボッチ脱却…ならず。


いつもより早く学校に来てしまったが、することもないので教室に入る。


「あ、おはよう。今日は早いんだね。」

不意に、鈴を転がしたような可愛らしい声がした。仲の良い女子同士の挨拶だろうか。私に向けられたものじゃないよね、とスルーしようとしたら――。


「ふくはらさーん。おはよう!」

えっ? 私に挨拶してくれてるの?

返さないと。入学式の時、こういうのを無視しちゃったせいで今のボッチ生活があるんだから。

「えっ、わたしっ? あ、……おはよう」

案の定、盛大にキョドってしまった。


「ふくはらさん、いつもクールだけど、今日はちょっと面白いね」

……いつもクールって、そんな風に見られていたのか。単に余裕がないだけなんだけど。

挨拶をくれたのは、西野美佳さん。ショートカットの活発系美少女だ。


中身は40年近いおじさんなので、クラスの可愛い子のチェックは欠かさない。彼女は私の中でも「私の可愛いコリスト」の上位に入っている。

席に座ると、続いて正統派ヒロインタイプの白川優香さん、ギャル系の岸川紗友里さんが入ってきて、西野さん、平田ゆかりさんと共に華やかなグループを形成した。


一番後ろの席私が、身動き取れなくなってボッチになっちゃった。って事にしよう。だって、カースト最上位の彼女らが、ちょっと前にいるんだよ。

席順のせいでこうなったんだよね。私がコミュ障って訳じゃないはず…。


平田ゆかりさんは、良くも悪くも普通な感じで、他の3人を引き立たせてしまっているようにも見えてしまう。カワイイ娘ではあるんだけど、他の3人が目立ってしまっている。


私が、このグループに入ってもそう見えちゃうんだろうなと思う。


だから、ま、ボッチでも良いか。と思ったり。


でも、こんな普通な感じのコが、実は異性から人気があったりする事を、私は知っている。


だから、まぁ、良いか…。


そう自分に言い聞かせているうちに、予鈴の直前、隣の藤井くんがやってきた。


「おっ、……す」

私の方を見て、短く片手を挙げる。

「あ、……うん。お、おぅ」


自分でも何なんだその返事は、と思う。言う事他に何かあるだろ?あ、うん、お、おう。とは…。

昨日はありがとう、とか。弟が喜んでくれたとか何とかね。昨日は、普通に話せてたのに…。



結局、昼休みまでまともな会話はできなかった。

「あ、……」

昼休み、学食へ急ごうとする藤井くんに、ようやく出た言葉。「あ、」の一言。がんばれ瑛里。

「藤井くん。お昼、って……」

「あ、俺、いつも学食なんだ。混むから急ぐわ。じゃあな!」

と言って走って行ってしまった。



くっ。ボッチ脱却だと思ってたのに…。

結局中庭で、1人でお弁当食べて、時間まで読書した。


ここ良いところだと思うけどね。

誰も居ないんだよね。…だから良いのか。



特に進展もなく、放課後となる。

帰る用意しながら携帯のメッセージをチェックする。

雑誌プリズムからメッセージ来てた。

えっ?

「本日は、16時にスタジオに来てください。」

とある。あ、もう15時30分。ここからなら2駅だったっけ。ギリギリ間に合うか。


「あ、福原さん」

藤井くんが声をかけてきたが、今は一刻を争う。

「ごめんなさい、バイトなんだ! 急がないと。……明日でいい?」

「あ、うん。明日か、いつプラモ作るかっていう相談なんだけど……」

「プラモ、あ、そうだった! 明日の放課後でも良いかなぁ?」

「……。あぁ、いつでも大丈夫だから。じゃあね」

「うん。じゃあね!」


そのまま教室を飛び出し、なんとかスタジオへ滑り込む。


挨拶をして説明を受けた後、用意された衣装に着替え、カメラマンの指示通りにポーズを決める。

(……不思議だよな。クラスメイトとは一言も喋れないのに、仕事となると何とかなるんだから。)

「瑛里ちゃん、良かったよ。次もその感じで頼むね」

担当の社員の方に褒められ、手渡しで封筒を渡された。


「今回は手渡しで。次からは振り込むからね。お父さんにもよろしく。」

お父さんのコネとはいえ、自分で稼いだ初めてのお金。封筒の中には五千円札が一枚入っていた。

時給換算すると破格の良さだ。

「ありがとうございます!」

撮影の熱気が残るスタジオを後にした。明日、彼のアトリエへ行く約束をした事を思い出して、ちょっと心があたたかくなっている事を感じた。


新しい服でも買おうかな。いや違う、制服のまま行くよね。何かお菓子を買っていくべきだろうか。


どちらにせよ、私の「明日」は、昨日までより少しだけ明るく見えた。


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