59.水着はノーマルスーツなのです。
「ゆかりさんっていう人がいるんだけど、一緒に水着買いに行くね。」
お母さんに言うと
「そう。なんか昨日スク水使うとか変なこと言ってたから、どうしようかと思ったよ。」
…流石に中学のスクール水着は入らなかった。
胸らへんが成長しているみたいで、キツすぎた。
「ちょっとサイズがキツかったからね。」
「…。サイズ。ねぇ。ちなみに、ゆかりさんってどんなコ?」
「バチバチの陽キャだけど、話しかけてくれるんだ。」
「…。じゃあ大丈夫かな。ゆかりちゃんの言う事聞くのよ。」
「…?」
「というわけで……今日はよろしくね!」
待ち合わせたゆかりにお願いすると、彼女は「よくわかんないけど、OK!」と頼もしく笑った。
「ゆかりさんは、クラスのおしゃれ番長だもんね」
「番長……? まぁいいけど。あ、瑛里、『さん』はいらないよ。私たち友達でしょ?」
友達……。ボッチだった私に、こんなキラキラした友達ができるなんて。それだけで、胸の奥が少し熱くなった。
「で、瑛里。どんな水着を買うつもり?」
「えっと、できるだけ肌が出ない、機能的なやつがいいかな」
「はぁ? 何その基準。ダメ。とびっきり可愛いの買お!」
「いや、隠すべき場所が隠せて、泳ぎやすければ十分だよ……」
私の言葉に、ゆかりが深いため息をついた。
「あのね、水着は機能じゃないの! **『装備』**なの! 瑛祐くんに『可愛い』って思わせるための、戦闘服なんだからね!」
……装備。そう言われると、プラモデルの追加装甲みたいなものか。
でも宇宙での戦闘服は、色気のないノーマルスーツなんだけどな。
連れてこられたのは、パステルカラーが目に眩しい水着売り場だった。
「ほら、これとか似合うよ。フリルがついたビキニ。」
「……ゆかり。これ、布の面積が……。これじゃあ防御力が低すぎて、全然戦えないよ。」
「何言ってるか分かんないよ! ほら、試着室行って!」
無理やり押し込まれた試着室。
鏡に映るのは、前世では絶対にお目にかかれなかった「女子高生」のありのままの姿。そして、これを着て、瑛祐くんの前に出るのか……?
昨夜、お母さんに渡された『0.01』の小箱が脳裏をかすめる。外堀を埋められているのは場所だけじゃない。私の「心」の準備もなのだろうか。
「瑛里ー? 終わったー? 私も着てみたよ」
「……まだ。これ、紐はどうやって結ぶん?」
悪戦苦闘したけど、なんとかできたかもって言うと、ザーっとカーテンが開けられた。そこには、ビキニ姿のゆかり。
……私より、大きい。そして、眩しいほど可愛い。鼻血出そう。
「うわー、瑛里、めっちゃ可愛いじゃん!」
「……っ、恥ずかしいから、見ないで……」
思わず座り込んで、胸と股間を隠すように丸まってしまう。おじさんの魂を持っていても、この露出度は刺激が強すぎた。
「……瑛里には刺激が強すぎたかな。違うのにする?」
「うん……お願い。」
結局、露出を抑えたタンクトップとショートパンツのセットに落ち着いた。それでも、白を基調としたデザインは十分に「女の子」を感じさせる。さらに、鉄壁の守りとしてラッシュガードも購入した。
一方のゆかりは、セパレートタイプで、最初よりは控えめにしたと言いつつも、推定Dカップの「武器」を存分に活かした一着を選んでいた。
買い物の後、フードコートでパフェを囲む。
「今どきのJKやれてるなぁ」と自己満足に浸っていた私だったが、ゆかりの次の一言で、食べていたパフェを盛大に吹き出した。
「ちょっと、瑛里! 汚いってば」
「ご、ごめん……。いや、ゆかり、今なんて?」
「だから、プールの後、亮くんとホテル行くんだってば。アイツ、一年生でインターハイベスト8まで頑張ったから、そのご褒美!」
ベスト8。一年生でそれは確かに凄い。……じゃなくて!
前世の俺が、40年かかっても到達できなかった人生の「メインイベント」を、この若さで!?
「え、ちょっ……早くない? 本当にいいの?」
焦る私に対し、ゆかりは「何を今更」という顔でパフェを掬った。
「ま、お互い初めてってわけじゃないし。ここらへんでいいかなって。」
「ぶふぅーーっ!!」
本日二度目の吹き出し。
初めてじゃないだと……!? しかも、お互いに…。
今の高校生は、とっくに大人の階段を駆け上がっているのか?
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